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番外編【高谷視点】

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少しいじめの表現があります。苦手な方はご注意ください。





「⋯ごめんなさい!高谷君のこと…そういうふうに見られないの」

「そ、うだよね。分かった…」

振られた

高校からずっと好きだった女性、七々瀬 日鞠に

彼女を守れるように鍛えて
それなりに良い見てくれになったから
勇気を出したらこの有様だ
思ったよりも自分中での傷は浅かったのは不幸中の幸いだ

可愛らしい見た目に優しい性格
ひまわりのような明るい笑顔がよく似合う彼女が好きだった

「⋯出来たら。これからも、友達として仲良くしてくれたら、嬉しいな…」

未練がましい言い訳に聞こえるだろう

しかし、彼女からあまり離れてはいけない
本当ならもう少し、感傷に浸っていたいところだが…

彼女は変わった異性ばかり引き寄せるのだ
放っておいて、危険な目に合うより側にいる権利があれば安心出来た

「⋯うん…」

言うんじゃなかった…

でも、もう取り消せない

せめて彼女に
彼女を守ってくれるような幸せにできる人が
出来るまでは…僕が守ろう


後にこの決意が勘違いの始まりを呼び起こすということを彼はまだ知らない

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僕の人生に2度目の陰りが差し込んだのは
僕の言葉をあっさりと信じた。彼女、柳 葵が死んだ日だ

もちろん嘘などついていないが、もっと疑われると思っていた



「私達、友達でしょ?」

柳 葵の口癖のようなこの言葉
僕はこの言葉が大嫌いだった

「⋯ありがとう」

このセリフでいつも思い出すのは中学時代
自分をいじめて来た男子生徒が数人居た
初めは無視とか悪口を言われる程度だった
徐々に物がなくなるということが増えたので

幼い自分は教師に助けを求めた
担任の教師は事実確認のためにと。僕と主犯格を呼びだした

もちろん主犯格は認めない
その上馬鹿げたセリフを吐いた

『俺達、友達だろ?⋯なぁ?』

『⋯う、うん』

僕は恐怖に負けて嘘をついた
担任の先生が一瞬ほっとした顔をしたのは今でも忘れられない
もちろんその後いじめはエスカレートした

高校は地元から遠いところを選んだので
この言葉で僕が苦しんでいることなど、彼女は知らない

遠い日の主犯格のような悪意に満ちてなどいないというのに

きっと純粋な善意だろう
自分でも分かっている

でもどうしても彼女のことが好きにはなれなかった

友達って 何なんだろう‥

あの日から止まったままの僕は何も変わってないことを実感した
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