異世界マフィアの悪役次男に転生したので生き残りに励んでいたら、何故か最強の主人公達に溺愛されてしまった件

上総啓

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一章

22.目覚め

 
 身体に何かが巻き付いている。少し息苦しい、全身を包み込む温かい感触で目が覚めた。
 ぼやけた視界に映ったのは知らない天井……ではなく、めちゃくちゃ見覚えがありすぎる自室のベッドの天蓋だった。


「なんてこったい」


 走馬灯みたいに蘇る記憶を思い返し、ぽつりと零れた呟きには焦りが滲んでいた。
 かなりマズイ状況だ。『恩と媚を売ろう作戦』の一つだった『飴でなかよし作戦』に関しては実行することすら出来なかったし、アンドレアを母から救う作戦も一から十まで全部グダグダだった。

 湖に落ちて気を失って……それから、どれほど経った?
 とにかく今の状況を確かめないと、と思いぷるぷると震える身体を起こそうと動いたが、なぜだか身体がまったく動かない。
 なにごとかね?ときょろきょろ見渡しピタァッと固まる。どうして今まで気付かなかったのか。隣にとんでもなく美しい寝顔を晒したジャックが眠っていた。
 なぜか俺の身体にぎゅうっと手足を絡ませて。


「起きろジャック。状況を説明しろ」

「んー……うぅん」

「むっ!おいおばか、胸をさわさわするんじゃない」


 寝惚けているのか何なのか、ジャックはおもむろに手を伸ばして俺のぺったんこな胸をさわさわと撫で始めた。
 そんなもみもみしても、俺におっぱいはないから揉めないぞ、なんてジトーッとした呆れ顔を浮かべる。もしかしてナイスバディなお姉さんの夢でも見ているのだろうか。

 だとすれば中々際どい夢を見てやがるなコイツ……と危うい手の動きを白けた目で眺める。
 そんなに忙しなく指を動かしても、あるのはお姉さんじゃなく俺の乳首だけだってのに。ジャックはほんと変態さんだなと溜め息を吐いた。


「ん、うーん……ご主人様ぁ?」

「やっと起きたか。ほらジャック、今の状況を説明してくれ。俺はどうなったんだ?」


 ぺちぺち、と肩を叩いて揺らすこと数秒。
 ようやく目覚めたジャックは、ゆっくりと瞼を開きながらふわぁっと欠伸を零した。

 現れた黒い瞳が弧を描き、蕩けた甘い笑みがその顔に浮かぶ。
 寝起きのジャックはいつもこんな感じで妖艶だ。起きている時も妖しいお兄さんって感じだけれど、寝起きの艶やかさは俺でも一瞬ぎょっとするくらい。
 深淵みたいに底の無い瞳の黒色に、ほんの一瞬吞み込まれそうになる。昼間のちゃらんぽらんジャックが嘘のように、まるで別人みたいに感じるのだ。


「おはようご主人様。さっき医者が診てくれたけど、痛いところはない?苦しいところは?」

「だいじょぶだ。むしろ朝よりぴんぴんしてるぞ」


 拘束が解け、よっこらせと起き上がる。むんっとマッチョのポーズをして快調を伝えると、ジャックはふにゃあっと笑って「よかったぁ」と息を吐いた。


「状況説明、だったよねぇ?特に報告とかはないけどぉ……あぁそういえば、さっきまでおにーさまとおとーさまが来てたよぉ」

「ふむふむ報告は特になしっと…って、ぬえぇぇっ!?ふたりがきてたぁ!?」


 どさくさに紛れてぎゅうっと俺を抱き締めるジャックの動きには特に抵抗せず、なんてことないみたいに返された言葉に一度はふむふむと納得の頷きを返す。
 けれどすぐに我に返り、全然なんてことなくない報告を二度聞きしてふぁっ!?と飛び上がった。気分は毛を逆立ててびっくり仰天するニャンコだ。


「あわわ……俺、お見舞いに来てくれた二人に土下座のひとつもしてないぞ……!」

「お見舞いってそんな大袈裟なものだったっけ?」


 なんたる不覚。俺を嫌い憎んでいるはずのあの二人が、わざわざ別館まで足を運んでお見舞いに来てくれたというのに。
 俺ってば媚売り相手の主人公サイドに土下座もせず、ただただぐーすかすぴーと眠っていただなんて。こんなの更に彼らの恨み感情を募らせてしまったに違いない。


「おにーさまもおとーさまも、どっちもご主人様のこと心配してたよぉ?おとーさまなんて、おにーさまを助けてくれた礼をしたいって言ってたしぃ」

「ななな、なぬーっ!?」


 それぜったいあれじゃんか!
 ほらあれ!ヤクザモノとかでよくある『世話になった礼は尽くすぜ、たっぷりとな……フッ』ってやつでしょ?皮肉を含んだ遠回しの脅しってやつでしょぉ!
 ぴえぇぇ……やっぱりザマァエンドを回避するなんて無茶だったんだぁ……。


「うぅ、ぐすっ……えぐっ、うえぇ」

「え、えっ!なになにご主人様、どうしたのぉ?そんなヤバい奴の加虐心を刺激するような泣き顔晒しちゃってぇ!」


 涙も鼻水も止まらない。リンゴみたいに真っ赤な顔でぷぎゃーっとぼろぼろ涙を流し、自分の運命を悟ってえぐえぐと嗚咽を漏らす。
 それを見たジャックがなぜか興奮したような表情を浮かべて、俺の体を膝の上にぎゅうっと強く抱え込んだ。苦しいけど今は落ち着く……。

 泣き喚いている時に抱っこされるこの感覚、この温もり……はっ!まさか!


「ジャック……おまえ、ママだったのか……ぐすんっ」


 こんなのもうママじゃないか。ぐすぐすと泣いている時のぎゅーなんて母親以外の何者でもない。
 ジャック、ジャックママ……と温かい抱擁に浸っていると、なぜかジャックの赤く染まった顔が更に興奮したように歪んだ。


「ご主人様ったらぁ、そういうプレイもお手の物ってことぉ?いいよぉ、ほんとはご主人様にママ役してほしいけど、今だけ特別ね?」


 何やらぷれいだかママ役だか意味わからんことを言い出すジャック。
 俺はぎゅーがママっぽいって言っただけだ。お前の変態プレイなんぞに興味ないわ、と顔を背けて腕の中から脱出する。
 ジャックが「もう放置プレイ!?ご主人様ってばほんとドS―!」とまたもや意味わからんことを言い出したが、それは華麗にスルーしてとことことベッドから抜け出した。


「そういやガウはどこだ?ガウを探そうそうしよう」

「今度は獣プレイ!?むぅー!ご主人様のえっちぃ!」


 ジャックの意味不な叫びを背後に、はむはむタイムが恋しくなった俺はてくてくっと部屋から飛び出しガウ探しの旅に出た。

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