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二章
51.悪役次男は激おこする
ぱちくり。きょとんと首を傾げて振り返ると、そこには同じくきょとんと目を丸くしたロキの姿が。その背後には怪訝そうに俺を見つめるアンドレアもいる。
むむ?クールなモブは空気を読んで颯爽と去ろうと思っていたのだが……なにゆえ主人公たちはお互いをほっぽって俺にジーッと視線を向けているのか。
ロキに持ち上げられて手足をぷらんぷらんさせた状態でハテナを浮かべる。
やがてロキは困ったように微笑むと、俺をソファまで連れ戻してぽーいっとクッションの上に放り投げた。投げたといっても、とっても優しくだけれど。
「だめでしょご主人様。これから一緒に話をしようって時に逃げるなんて」
これから一緒に?話をしよう?
俺はなーんにも関係ないはずなのにどういうこっちゃ、とポカン顔を浮かべると、二人はぱちくり瞬いて困惑気味に語った。
「俺達の計画について話をするところだったでしょ?君はその切り札になり得るんだ。だから君も居てくれないと話が出来ないよ」
「けーかく?きりふだ?俺……ぼくが?」
「うん。さっき言ってたよね?俺達の計画、応援してくれるって」
計画を応援……?とそこまでハテナを浮かべたことでようやく理解した。
まさかさっき俺が言った『二人(の恋路)を応援する!』というセリフ、完全に俺の思い違いで綺麗にすれ違っていたのか。
そうかそうか、道理でストーリー展開がやけに早いと思った。なるほど、二人の恋愛進展についてはやっぱりまだまだ先だったんだな。
さっきのはあくまで二人の間で交わされた何らかの『計画』についてで、恋愛に関わることではないと。
ふむふむ、なんてこった。ただただ俺がアッハーンな妄想をして早とちりしただけじゃないか。恥ずかしくてぽぽっと赤面。てれてれ……。
「そ、そそっ、そうでしたっ!ぼくってば、寝惚けてクールに退室するところでしたっ」
俺がむっつりすけべだということを悟られないよう、ぜぜぜ全然覚えてましたよ?アッハーンな妄想をしていたわけじゃありませんよ?と冷や汗たらたらの誤魔化し笑いをする。
俺の答えを聞いた二人は『なーんだそっかそっか』とばかりに頷いて、俺をソファにちょこんと置くと再び向かいに並んで腰かけた。
……さり気なく並んで座るあたり、やっぱり二人とも仲良しさんだよね?
「よし、それじゃあ作戦会議と行こうか」
さくせんかいぎ!俺の中の少年心を擽るワードにキラキラッと瞳を輝かせる。
どんな作戦なのかなーそわそわと身体を揺らし始めた直後、ふと『あれれ?』とあることを思い出してピタッと動きを止めた。
思い出したというか、流れでスルーしていたけどそういえば疑問だったことを思い返したというか。
とにかく浮かんだ疑問がモヤモヤを大きく広げる前に、さっさと解決してしまった方がいいかとロキに尋ねた。
「まって。そういえば、結局ロキはどうしてわんこの姿で僕に飼われてたんだ?お父さまに捕まったからにしても、ロキならすぐ逃げられたんじゃ……?」
ふと思い出した疑問というのは、本当にそもそもの内容だった。
なんだか流れでここまで普通にきちゃったけれど、考えてみればこの場にロキがいるのはやっぱりおかしい。一度父に捕まったことも、素直に俺に飼われていたことも。
こうして簡単にベルナルディ邸に忍び込めるロキなら、逃げ出すことも簡単だったのではないだろうか。それなのに、ロキは最悪の状況になるまで逃げださなかった。
それじゃあまるで、初めから俺に飼われるために捕まったみたいだ。
なんて、流石にそこまで腹黒い画策はしていないか……ないよな?と徐々に青褪める俺を見て、ロキはニマーッと満面の笑顔を浮かべた。むっ!嫌な予感……!
「残念。このまま話逸らせると思ったんだけどなー」
「ががっ、がーんッッ!」
ガーンエフェクト盛りだくさんで項垂れる俺。
今までの癒しのもふもふな日々が音を立てて崩れる音が聞こえた気がした。
出会った時のきゅーんぽてぽてとした可愛い鳴き声も、俺に甘えるようなあの仕草も。
全部全部ただの計算で、心の中では俺を嘲笑っていたというのか。しめしめ、こいつはチョロくて扱いやすいぜ!ってか。そりゃあ天下の腹黒攻め主人公からしたら、俺みたいなちんちくりん敵ですらなかっただろうけれど……。
でも、でも……知ってしまうと、かなり辛い。俺の大切なわんこのロキが、本当は俺のことなんて全然家族だと思ってなかったんだって。そう思うと、なんだか俺、おれ……。
「うぐっ、むぐ、むっ、うえぇんっ!」
必死に嗚咽も涙も堪えようとしたけれどだめだった。
あぴゃーっ!と滝の如く涙を溢れさせた途端、目の前のロキとその背後にいたアンドレアが『なぬっ!?』とばかりに目をかっぴらく。
そんな顔したって、二人とも揃って俺のことを馬鹿にしていたんだろう。チョロいガキだぜ!って笑ってたんだろう!
もう騙されないからな、むきーっ!と真っ赤なほっぺをぷるぷるさせて泣き喚くと、二人は更に慌てたような演技をして俺の前に膝をついた。
「おいクソ野郎……!よくも俺のルカを泣かせてくれたなッ……!」
「泣かせるつもりはなかったんだって!なんかアホ可愛いから、ちょっと意地悪したくなっちゃっただけでっ……!」
ロキの胸倉を掴み上げて鬼の形相をするアンドレア。その姿を見てきょとんと目を丸くする。
アンドレアはプライドが高くて自信家で、余程のことが無い限り感情をあらわにはしないはず。そんなアンドレアが、演技だからってこんなにも怒りを見せるだろうか?
あまりの形相に呆気に取られて、ポカーンと口も目も開いた間抜けな表情で固まってしまう。当然、涙も同時にピタッと止まった。
「あ、泣き止んだ」
「ルカ!すまない、ルカ……やはりこんなクズをお前に会わせるべきではなかった……」
「クズってちょっと。失礼じゃない?ねぇねぇ」
「黙れクズ。ルカに触れるな近付くな」
アンドレアにぎゅうっと抱き締められ、更に大困惑が増していく。
どうしてアンドレアは俺を、むぎゅーしているんだ?俺を嫌っているはずなのに、これじゃあまるで、本当に俺のことを心配してくれているみたいだ。
いやいや!騙されるな、これもきっと計算に違いない。腹黒攻め主人公のロキと一緒に、俺を騙して嘲ろうとしているんだ!そうだ、そうに違いない!
「ぐぬぅ……もうっ、もういいですっ!二人で計画でもなんでもがんばってくださいっ!おれはぜーったい協力なんてしないからなっ!」
知らないうちに裏で笑われていたのだと知り、流石のクールな俺も限界にきてクワッと叫んだ。
いくら主人公に媚を売って生き抜こうと足掻いていたとはいえ、ここまで馬鹿にされて黙っていられるほど俺はなけなしのプライドを捨てちゃいないのだ。
死の気配がするなんてどうせいつものこと。ちょっと主人公たちに啖呵を切ってザマァエンドの確立を上げることくらい、もう知ったこっちゃない。
「ま、待って!待ってごしゅじ……ルカちゃんっ!俺が悪かったから!ねっ?」
「うるしゃいうるしゃぁーい!ロキなんて知らんっ!わんこのロキもっ、もう知らないんだからなぁっ!」
「ルカ……そうだな、そんなクソ野郎なんて捨て置いて一緒に──」
「お兄さまも知らんっ!せいぜいロキといちゃこらちゅっちゅしてろー!ちょっとカッコよくてクールで素敵だからって馬鹿にしおってぇーっ!」
何やら慌てた様子で引き留めてくる二人を纏めてぱしーんと切り捨てる。
後から焦燥を滲ませた声がかかったけれど、全部聞くことも構うこともせず「うわぁぁん!」と情けなく涙を溢れさせながら部屋を飛び出した。
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