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三章
82.攻め主人公、悪役次男に恋をする?
会合を終えてから、父達は以前にも増して多忙になった。
どうやら俺が眠っている間に会議が弾んだらしく、黒幕とやらの正体にも近付いたらしい。今はそれを絶賛調査中、というわけだ。
おれもいれてーと一応申し出てみたのだが、結果は案の定撃沈。お前は大人しくしていなさいの一点張りだった。完全に足手まといとしか思われていないようで涙目である。
仕方ないので大人しくゴロゴロしようかなーと思った矢先、日常にとある変化が訪れた。
なんと、ずっと互いに干渉せず、軽く敵対的な関係でもあった二大ファミリーが表で堂々と同盟を組んだのだ。
同盟というと大袈裟だけれど、まぁいわゆる仲直りというやつである。よその会合にも互いに積極的に参加し、友好関係を外部に示し始めたのだ。
まるで、誰かに二大ファミリーの結束をアピールするかのように。
そういうわけなので、必然的にロキがコソコソ侵入する必要もなくなった。
つまり、俺達……主にアンドレアとロキは、堂々と顔合わせをすることが可能になったのだ。いずれ情熱的な恋愛関係に発展する予定の二人なので、二人の恋路を応援する立場の俺からするとものすごく嬉しい変化だった。
これでロキはもう、一々策を企てることなくアンドレアに会いに来ることができるんだなぁ……と感慨深く思っていたのだが。
どうしてこんなことになっているのか、俺が一番理解できない。
「──やぁルカちゃん。今日も最高に可愛いね」
「──俺も一緒に遊んでいいかな」
「──綺麗なお花だね。ルカちゃんが育てているの?」
どうして、どうして……──
「どうしておれにかまってくるんだ……!」
今日も今日とて、ロキの追っかけから逃れてゼェゼェと息を荒くする。
逃げ込んだ茂みに蹲り、ここ最近の出来事を思い返した。
会合の日から約一か月。
ベルナルディとヴァレンティノが表立っての交流を始めてから、ロキはこれ幸いとばかりにベルナルディ邸へ訪れるようになった。
始めはアンドレアに会いに来ているのだろうと、俺は息を潜めてモブ役に徹していたのだが……なぜかロキは毎日のように俺を探し出し、絡むようになったのだ。
ニコニコ笑顔で訪れて、欠かさず贈り物を俺に渡して関わってくるロキは正直、真意が掴めなくて本当に怖い。何か企んでいるのだろうということは、流石の俺でも分かるけれど。
けれど、本当に一体どうして?
恋愛が関係なかったとしても、何か策略を持って近付くならアンドレアの方が狙われやすいはずだ。なにせベルナルディの後継者だし、情報もたくさん持っているだろうし。
対して俺はただのちんちくりんモブ悪役次男。情報なんて何も持っていないし、ベルナルディの任務を父から与えられたこともない。
身内から見ても外野から見ても、完全にお荷物で利用価値皆無の人間だと思うのだが……一体全体どうしてロキは俺に関わってくるのだろう。
「ルーカちゃん」
「ぴぇえっ!」
一体ロキは何を企んでいるんだ……とぐるぐる考え込んでいると、ふいに茂みをガサゴソッと掻き分けてロキが現れた。
突然目の前に現れたニコニコ笑顔の美形を見て思わず飛び上がる。草むらに尻餅をついた俺の前にしゃがみこみ、ロキはこてんと首を傾げた。
「酷いよルカちゃん。どうしていつも俺から逃げるの?」
気分は鬼ごっこで本物の鬼に追い詰められた村人だ。
ぷるぷると涙目で震えると、それを察したロキがますます不思議そうに瞬いた。どうして俺がドン引いたり怖がったりしているのか、まったく理解できないというその瞳がもう怖い。
「にゃ、にゃんでっ、おれをおっかけてくるんだ……?」
情けなく震えながらも必死に問いを紡ぐと、ロキは一度きょとんと瞬き、そして小さく吹き出して笑った。
なにか面白いこと言ったかな……と困惑しつつじっと待つ。やがて、ロキが愉快気に瞳を細めて囁いた。やけに甘く、蕩けたような声音で。
「なんでって……ルカちゃんのことが好きだからに決まってるでしょ?」
「…………ほぇ?」
ぐっと顔を近付けられて思わず仰け反る。
至近距離に絶世の美形が現れると、途端にはわ……と惚けて力が抜けてしまった。
けれどすぐにハッと我に返り、ぴょんっと跳ねるように後退ってロキを睨む。
シャーッ!と猫の威嚇みたいに近付くなオーラを纏い、突然の俺の奇行にきょとんとするロキに言い放った。
「ま、またそんなこといってぇ!こんどはぜーったい騙されないっていっただろっ!」
のしのしっと地団駄を踏んで激おこする。
顔が真っ赤なのはロキの口説き文句に照れたわけじゃなく、怒っているからだ。そう、決して惚けたわけでもないし、きゅんとしちゃったわけでもない。うむ。
ロキは俺の激おこを見てぱちくり瞬き、やがてニコッと作り物みたいな笑顔を貼り付けた。にこやかだけれど、どこか不気味な完璧さを感じる笑顔を。
「ルカちゃん、もしかしてまだ怒ってるの?勘違いされてるなら……ちょっと悲しいな」
「か、かんちがい……?」
なんのこっちゃ、と疑いの目を向ける。当然のこのこと近寄ったりはしない。
二メートルは離れて威嚇する俺に、ロキはへにゃ……と眉尻を下げて、悲しそうな微笑みを浮かべつつ呟いた。
「俺がルカちゃんを利用しようとした、と思ってるなら、それは誤解だよ。あの時は、ルカちゃんが混乱しちゃって弁解することが出来なかったけれど……」
誤解?まだまだ疑いの視線は緩まない。
むぅ……?と唇をへの字にして聞き耳を立てると、それを見たロキは更に瞳に悲哀を滲ませて言葉を続けた。
「俺は犬の姿の時から、ずっとルカちゃんを大切な友人だと思っていたよ。そして今は……愛らしいルカちゃんに恋をしている。目が……離せないんだ」
「……ふむ」
頬を紅潮させ、緩く口角を上げて囁くその姿。
空から舞い降りた天使様なのかと錯覚するほどの美貌と甘やかな雰囲気は、見る者全てを魅了してしまうことだろう。
そう、本当に……わざとらしいくらいに。
「ロキ、おまえは……」
威嚇を解いてスッと背筋を伸ばす。
俺の警戒が緩んだことを目敏く察したらしい。ロキがふわっと笑顔を作って「なぁに?」と首を傾げるのを視界の端で捉えた。
俺は思っていることが全部顔に出るから分かりやすいらしい。それを思い出したから、俯いたまま決して顔を上げなかった。
それこそ、すぅっと息を吸ってそれを吐き出すまで。
「にこにこが薄っぺらいんじゃっ!このヘタレ!ふぬけ!なにか企んでるならせーせーどーどー来いやこらぁぁ!」
叫ぶと同時に踵を返し、とてとてっ!と走り出す。
その直前、呆然と膝をつくロキが見えてちょっぴり機嫌が直った。ざまぁみろ、と性格の悪いことを想ってしまったのはどうか許してほしい。
ロキが追ってこないことをチラチラ確認しながら、その場をとことこ走り去った。
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