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四章
131.隷従契約・首輪編
「わぁ!どれにするぅ?僕はこの赤いのがいいと思うよぉ!ペットっぽくてかわいい!」
「こらジャック!そんなわくわくしながら決めるやつじゃないぞ!空気よめおばかっ!」
首輪と焼印……つまり新たな隷従契約の上書きについてをガウと話し合った翌日。
俺は早速商人を邸に呼び寄せて、ガウにつける首輪を買う為にうぅむと唸っていた。
ガウも何やら真剣にたくさんの首輪を見渡しているし、俺もしっかり見て決めないと。ダサいのでもなくペットっぽくもない、かわいくてクールなやつじゃないとダメだ。
そう思いガウと二人で真面目に考えていたのだが、そこへKYでお馴染みのジャックが割り込んできた。今日もニコニコ上機嫌で何よりである。ちょっと今はそういう空気じゃないけども。
「それ、わんこがつけるやつじゃないか!ガウはわんこじゃないぞ!トラさんなんだぞ!」
「えぇーでもでもぉ、こういうかわいいやつがガチムチの獣人についてたらギャップ萌えじゃない?超チャーミングでよくなぁい?」
「ちゃーみんぐ……む、むむぅっ……」
そ、そうなのかな。こういう首輪の方がチャーミングでギャップ萌えなのかな。
俺はそういうセンスが無いから、その辺はあんまり強く否定できない。センスがない俺からだとただのペット用首輪にしか見えないけれど、普通の人が見たらチャーミングなのかも……。
「主様。それは嫌です」
「そうか!じゃあやっぱナシ!」
どうしたもんかと唸っていたが、ふいにガウが耳元で淡白にそう呟いたことで答えが決まる。
当のガウがこう言っているのだからダメに決まっているよな。うむうむ、赤い首輪ポイッと。
「うぅむ、となるとどうしたもんか。ガウはなにか希望とかないのか?いろとか、宝石なにがいいかーとか」
たくさんの首輪を手に取って確かめながら問いかける。同じく実物には触れずに視界だけで首輪を眺めていたガウが、俺の問いに反応して「宝石……」と小さく呟いた。
その反応に『おっ?』とぱちくり瞬く。あの質素で堅実なガウが宝石という言葉に反応するなんて予想外だ。色くらいには反応するかなと思っていたけど。
獣人奴隷につける首輪には、必ず隷従契約の素材として使う宝石をひとつ嵌めなければならない。
宝石という素材に条件は特になく、大したお金にもならない純度の薄い宝石だろうと素材になる。だから、あくどい奴隷商人たちは大量生産が可能な粗雑な宝石を使うことが多いらしい。
けれど俺は違う!もちろん、ガウにつける首輪には最高級の宝石を嵌める予定だ。
これについては『おかねかしてください』と父への交渉も済んでいる。二つ返事でオッケーをもらった時はちょっぴり父が心配になったけれど。
いくら子供からのお願いでも、お金の話を躊躇なく承諾してしまうなんて、ちょっとね……。
「宝石、なにかすきなものでもあるのか?えんりょするな、すきな宝石おしえてくれ」
ガウが自分の好きなものを主張するなんて滅多にないことだ。
ガウの意見を聞ける!と思ったら嬉しくてワクワクしてしまう。そんな俺を見下ろしたガウが、しばらくもじもじと迷うような様子を見せてからぽつりと答えた。
「……宝石は、アメジストがいいです。色は至極色……黒に近い色なら、嬉しいです」
むっ、思ったよりピンポイントの回答がきた。
宝石はアメジストが好きで、色は至極色が好き?むぅ……いや、ガウの好きなものを知れたのは俺としてもとっても嬉しいが、それにしても予想外のピンポイント回答だから少し気になるな……。
まぁ何はともあれ、ガウの貴重な要望ゲットだ。早速この希望に沿った首輪を選んでしまおうじゃないか。
部屋の隅っこで待機していた商人にガウの希望をかくかくしかじかーと伝える。すると商人はすぐに後ろに置かれていた大量の箱のうち一つを引っ張り出し、中から厳重な気配を感じるケースを取り出した。
パカッと蓋が開かれ、ガウと一緒に中を覗く。そこにあった首輪を見てぱぁっと瞳を輝かせた。
「おおっ!これは!ガウのいっていた希望にふさわしいデザインじゃないかっ!」
首輪を手に取ってガウに掲げる。ガウはそれを見て目を見開き、すぐに嬉しそうに頷いた。
「これがいいです」
「むっ!そーかそーかっ!それじゃあ決定だ!これをかうぞ!」
ガウが嬉しそうに笑っている。それが俺も嬉しくて、にまーっと笑顔を浮かべてぴょんぴょん跳ねてしまった。
商人にこれを買うよーと報告して代金を支払い、それではと帰っていく商人に見送りの使用人をつけて部屋へ戻る。
そわそわと待っていたガウのもとへ駆け寄り、むんっと首輪を掲げて言った。
「ガウ、首輪げっとできたな。いますぐつけてみるか?それとも、まだ心のじゅんびするか?」
「覚悟ならとうに決まっております!ぜひ、今直ぐに首輪を嵌めてくださると嬉しいです」
ガウの淡白な瞳に期待の色が籠る。そんなに首輪が待ち遠しかったのか……とガウドМ説を思い出してそそくさ近寄り、ガウをちょいちょいっと手招いてしゃがみこませた。
ガウの首をじーっと眺め、首輪の長さを調整する。ちょっとぶかぶかになるくらいがちょうどいいよな?あんまり絞め付けすぎると苦しいだろうし。
むむっと長さを直して、ガウの首にひょいっと首輪をつける。慎重に締める位置を見極めていると、ふいにガウがぽつりと呟いた。
「主様。もう少し強く絞め付けて頂きたいです」
「む?で、でも、これいじょうギュッてしたら苦しいかもだぞ?」
「構いません。もっと強く」
「む、むぅ……ガウがそこまでいうなら、わかったぞ……」
初めは俺に遠慮して言っているのかな?と思ったけれど、ガウの瞳が物足りなさを確かに訴えていたから、戸惑いながらも締め付けを強める。
ぜったいこれ苦しいじゃろ……ってとこまで締めて恐る恐るガウの様子を窺い、ぎょっと目を見開いた。
ガ、ガウってば、なんでそんな恍惚とした表情をしているんだ……?
「あぁ……常に主様に首を絞められているような感覚がします……」
「えっ、それやばいんじゃないか。ゆるめるか?」
「いいえ、いいえ……最高の気分です……主様に呼吸を制限されているような快感が堪りません……」
「そ、そか。そんなにうれしいのか」
なんだかガウの様子がおかしいけれど、気にせず先に進んじゃおうかな。
この様子ならこの後の焼印についても全然大丈夫そうな気が……なんて考えながら、暖炉であっためていた焼き鏝を回収するべくとてとてっとガウのもとを離れた。
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