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五章
149.ちゅっちゅなロキに冷や汗たらたら
突然だが、俺は今ロキの部屋のベッドの上にいる。
王太子とばいばいしてすぐのことだ。なぜかニッコリ笑顔のまま無言で歩き出したロキは、なんだなんだと抵抗する俺を抱っこして問答無用で部屋まで戻ったのである。
そうしてあれよあれよとこんな状況に……正直、まったく状況が掴めなくて大困惑だ。
「ろ、ロキ?おねむなのか?それならおれ、おじゃましないように、もうかえるぞ」
寝室に来たってことはそういうことだよな?場所もベッドの上だし……たぶんこれ、ロキは今からお昼寝しようとしているってことだよな?
それなら俺はちゃっちゃと帰った方がいいだろう。お昼寝の邪魔するのもアレだし。ロキがぐーすかする間、特にすることもないし……うむ、そうだな、よし帰ろう。
そう思い起き上がろうとしたのだが……むむっ、むぅ、なぜか起き上がれないんだぞ……。
「ロキ……?あの、おててはなしてほしいのだが……おきれないじょ」
「うん。起こさないようにしているからね」
ずっと無言を貫いていたロキが突然声を発したものだから、思わずあわわっとびっくらこいてしまった。な、なんだよぅ、驚かせないでくれよぅ。
ぽすっと仰向けでベッドに押し倒され、ロキにのしっと組み敷かれたこの状況……一体何がしたいのかわけわかめなので眉尻を下げて困惑を訴えることしか出来ない。
こういう時の頼みの側近たちは外に追い出されてしまっているし、俺が一人でロキの謎行動を切り抜けるしかないんだよな。
ガウもジャックも、王太子と砂遊びを始めた辺りから姿を見ていない。
たぶんあの時くらいから、二人はお外にぽーいと追い出されてしまっていたのだろう。
主人なのに全然気づかなくて申し訳ないぞ……。
「あの、そのぅ、なんで起きちゃだめなんだ……?ロキ、おねむじゃないのか?」
困り眉で問い掛けると、ロキは笑顔をちょっぴりだけ薄くして距離を詰めてきた。
元々覆い被さるような姿勢をしていたから、今はもうほぼ上から伸し掛かられ、ぺたんと重なっているような形になっている。背をベッドに、手前をロキにぎゅっと挟まれているような感じだ。
こうなると流石の俺も『ぬくぬく、ぽかぽか』なんて悠長に寛げるわけもなく、顔を真っ赤に染めてあわわっと恥じらいの表情を浮かべた。てれてれ……。
「ろっ、ろき!なんだ、どうしたんだっ!は、はじゅかしいからっ、はなれてくりぇっ!」
むぎゅーっと圧し潰されながらもぱたぱたと抵抗する。しかしこの体格差と姿勢だから、当然いつものようにすぽっと抜け出すことは出来ない。
困り果ててむぅっと唇を尖らせると、それを目敏く視認したロキがふと俊敏に動き出した。
「んむっ!む、むちゅ、むんっ……やめ、やめんかっ!」
尖らせた唇に、光の速さでロキの唇がむちゅっと重なる。
驚いてロキの顔をぺちぺち叩くが、どれだけ強く叩こうと顔を離してくれる気配はない。むしろちゅーの勢いは更に強まって、終いにはぬめっとした舌の侵入まで許してしまう始末だ。
舌をはむはむと食べられて、歯列をなぞるみたいにれろーっと舐められて……俺ってばもう息もたえたえである。
「んっ、んぅ……むぅーっ、ぷはぁっ!にゃっ、にゃにをしゅるっ!はぅ、はぁっ……」
「ん……ん、はっ……かわい、かわいー……すき」
「むちゅっ、んちゅ、うぅー……っやめぃ!やめんかおばかっ!はなれりょっ!」
顔が真っ赤なのは苦しかったからだ。べ、別に照れちゃったわけじゃないぞ。
ロキの顔をぺちぺちすること数秒。ようやく舌が引き抜かれて、唇も名残惜しそうにちゅっちゅと足掻くような口づけをしながら離れた。
濡れた唇をそのままに慌てて飛び起きようとするが、ロキに恋人つなぎで両手を拘束されているので今も尚起き上がることはできなかった。なんでだよぅ。
突然のちゅーの嵐にびっくりしてシクシクしてしまう俺を見下ろし、ロキはやけに甘ったるく蕩けた瞳を細めて囁いた。
「ルカちゃん、ルカちゃん泣かないで。抑えが利かなくてごめんね、嬉しくてつい……」
「うっ、うぅー……なんだよぅ、うれしいってなんのことだよぅ」
今日だけでいっぱいちゅーしてしまった。俺ってばびっちだ、びっちってやつだ、とめそめそ不貞腐れる俺をなでなでしながらロキが語る。
相も変わらず俺をシーツに縫い付けたまま、ロキはふにゃりとめちゃんこ嬉しそうな笑顔を浮かべて答えた。
「だって、ルカちゃんが俺を受け入れてくれたから。結婚してくれるんでしょ?俺のこともヤキモチ妬いちゃうくらい好きなんだよね。それじゃあ、もう遠慮しなくていいってことだよね!」
「…………んぅ?」
なんか、なんかおかしいぞ……と内心そわそわ慌てる俺を置いてけぼりに、話は無情にもスムーズに進んでいく。
「結婚式はいつにする?子供はまだ先の方がいいよね、二人の時間を楽しみたいし!夜の方も……本番はまだ早いかもだから、これは徐々に進めていこうね」
「あ、あのっ……」
「そうだ!お試しで今夜は泊まってみない?一緒に湯浴みして、一緒のベッドで寝よう。あ、もちろん最後まではしないから安心して!今日は触りっこだけにしよう」
「ま、まって、ろき」
「あぁどうしよう!俺ってばちゃんとしたプロポーズがまだだったね。今度最高の席を用意するから楽しみにしていて!指輪も最高級のものを用意しないとっ」
俺をむぎゅーっと抱き締めてベッドに横になり、饒舌に俺との未来についてを語り始めるロキ。
なんかもう、話が通じなさすぎて泣いちゃいそうである。一体俺がいつロキの求婚を受け入れたってんだ?
むーん、たしかに『王太子と結婚するくらいならロキと結婚するじょ』的なニュアンスのことは言ったかもだけど、むーん。
でもでも、あれはあくまで言葉の綾ってやつで……別に本気でロキと結婚するって言ったわけじゃごにょごにょ。
ヤキモチだってたしかに妬いちゃったかもだけど、でもあれは大好きなお友達がとられた!って、そういう子供っぽいアレがきっかけなわけで……って。
「むん……」
……いやこれ、ぜんぜん俺の言動も悪かったパターンだなぁ。思い返してみれば、ぜんぜん誤解を生むようなこといっぱいしてたぞ。
ふむ……となると、どうしたものか……。
「んふふ。お泊り楽しみだねルカちゃん。一緒に寝るの嬉しいねルカちゃんっ」
完全に浮かれ切ってしまっているロキをどう諭したものか……。
ベッドの腕で抱え込まれてちゅっちゅされながら、俺は冷や汗たらたらで思考を巡らせ始めた。
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