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五章
176.赤い瞳の違和感
「うぐっ……!にゃ、にゃんだっ……!?」
「ふむ、もう効いてきたか。即効性とは聞いていたが、予想以上の効果だな」
全身が熱い。頭がぐらぐらする。眩暈も止まらない。
突然起こった身体の異常に混乱して、思わず涙が溢れ出た。俺ってば病気にでもなっちゃったのか?なんて大混乱しているから、ただでさえ遠く聞こえるチェレスの声も聞き取れるはずがなく。
「ぅ、うぅ……あついぃ……っ」
荒い呼吸をしていると、チェレスの大きな手がふと身体を撫でた。
ほんの一瞬、さわっと触れた程度だ。けれどどうしてか身体は異常に反応して、触れた箇所から全身に熱さが伝わりビクビクと痙攣してしまう。
本能的に、この手から逃れなきゃ大変なことになると悟った。
なんの好転にもならないだろうけれど、のそのそと芋虫みたいにベッドの上を這う。
さっきの注射のせいか力が入らないから、こうして這う以外動く手段がない。けれど案の定そんな抵抗が効くはずもなく、あっけなく捕まる結果となってしまった。
「そろそろ頃合いか。どれ、感度の状態を確かめるとしよう」
「うえぇんっ!はなしぇへんたいぃーっ!」
ぶえぇっと号泣しながら暴れ散らかすが、すぐに組み敷かれて動きを封じられてしまう。
チェレスは俺の太ももをしっかり両手で掴むと、顔の横に膝がつくくらいまで軽々と持ち上げた。無理やり身体を丸められたせいで背中は痛いし、更に動きにくくなってしまい絶望に苛まれる。
この恰好、まるでチェレスにだいじなところを見せつけているみたいで恥ずかしいどころの騒ぎじゃない。
情けなく泣き喚く俺のことは完全スルーで、チェレスはいよいよ本格的に行為を進め始めた。
「小さい故に分かりづらいが、勃起は確かにしているようだな」
「ちっちゃい言うなばかぁっ!」
誰のなにがちっちゃいって?このっ、このぉっ!
男の子に対してそのセリフは禁句だぞ!と状況も忘れてふんすふんすする俺を無表情で押さえ付けたまま、チェレスはさっさと手を進めていく。
この状況にムードも何もないけれど、何だかえっちというより人体実験されているみたいでちょっぴり複雑だ。チェレスってば、全然興奮しているように見えないし。
いや、逆にこの状況で興奮されたらそれはそれで怖すぎて泣いちゃうが、その……こういうことする人って、もれなく泣き喚く俺を見て興奮するような変態さんじゃないのか?違うのか?
「むぅ……」
なんだろう、現状をシュールに客観視したら、ちょっぴり恐怖が薄れてきた気がする。
お尻をなでなでされながらふと深呼吸をして、チラッとチェレスの顔を見上げた。
表情からはやっぱり興奮の類の感情は読み取れない。少なくとも、好意が暴走した結果の『私の子を孕め』発言というわけではなさそうだ。
俺との赤ちゃんが欲しいのは、他に何か大人の事情があるってことだろうか?
「な、なぁ、チェレスはどーして、おれの赤ちゃん、ほしいんだ?」
カチャカチャとベルトを外そうとしているチェレスを前にふと問い掛ける。
貞操の危機真っ只中で冷静にこんなこと聞いちゃうとか、ぶっちゃけ状況がカオスでしかないが……まぁ、恐怖を紛らわすためには、こういうカオスなことをするのも手段の一つだからな。うむ。
チェレスは問いを聞くと俺を一瞥し、無表情のままポツリと答えた。
「其方は魔性だと言っただろう。高貴な王族たる私の血と其方の血が合わされば、必ずや誰も敵わぬ兵器の如き子が産まれるに違いない」
「おおっ、おまえサイテーだな」
どんな複雑な答えが返ってくるかとビクビクしたが、予想外のどクズ回答が返ってきて俺ってば涙目である。流石ナチュラルポンコツクズなチェレス、どうあがいてもド級のクズだぞ。
けど待てよ?考えてみれば、なんだか違和感もあるんだよなぁ……。
「チェレスは、自分が王さまになりたいんじゃなかったのか?子どもでもいいのか?」
自分一番!自分最高!って感じのチェレスだから、てっきり自分以外が一番になるのは認めない系男子なのかと思っていたが。
俺がそう問うと、チェレスはふいにピタッと手を止めた。
マズイ、なんか怒らせちゃったか……!?とビクビクしながら視線を上げたが、そこにあったのは怒りの形相ではなく、薄く貼り付けたような微笑だった。
「“この身体”も限界が近いからな。本体の人格もまるで使えぬ無能故、そろそろ本格的に使える器を用意せねば」
「……?どゆことだ……?」
どうしよう。自分で聞いておいてアレだけれど、何言っているのか全然理解できなかったぞ。
眉を寄せてうーむと考えるが、やっぱり意味が分からない。とりあえず、この身体だとか器だとかってどういう意味なんだ?そう首を傾げた時、ふと気づいた。
「あ、また──」
紡ぎかけた無意識の言葉を慌てて紡ぐ。チェレスが訝し気に俺を見下ろしてきたが、すぐにぷいっと顔を背けて誤魔化した。
さっきからそうだ。チェレスが意味の分かりづらいセリフや、らしくないセリフを吐いた時に変化が見られる。
今も確かにこの目で見た。チェレスの瞳の色が、禍々しい意思の籠った“赤色”に変化したことを。
赤と言っても、ロキの瞳のような綺麗な赤色じゃない。
どこか禍々しくて邪悪な気配を感じる、けれど空虚な何かも感じる混沌とした赤色。不思議と恐怖心が湧き上がって、逃げ出したくなってしまいそうな、そんな赤色だ。
けれどどうして?どうしてさっきから、不規則に瞳の色が切り替わっているのだろう。普通に考えて、ころころと目の色が変わるなんて有り得ないことのはずなのに。
「さて、無駄話はこの辺で終いとしよう。薬も十分に効いてきたようだからな」
「むん?む、むぅっ!ぴぇっ!?」
ふいにチェレスがぽつりと呟き、突如俺のお尻をむんぎゅっと鷲掴みした。
それにびっくらこいてひっくり返る俺を押さえ付けたまま、チェレスは予め外していたらしいベルトを投げ捨てて前を寛げる。現れた棍棒みたいなでっけーソレを見てピタッと硬直した。
──な、なんだあのグロテスクなおちんちんは……!
「うおぉいっ!ぜったいムリだぞっ!やめろやめろ!ふざけるなだぞぉっ!」
「なに、無理なことはない。無理やり挿れれば必ず入る」
「ムリやりはムリってことだろーがおばかぁッ!」
お尻にピトッと凶暴な先端が触れて、アッもうダメだァと諦めの境地に達しかけてしまう。
ググッ……とそれが押し付けられた瞬間、ふとぼやけた視界の先にあるものが見えた。
レースカーテンが透けた先、誰かが花瓶のようなものをチェレスに大きく振りかぶっていたのだ。
「っ……──!」
一瞬の静寂が流れた直後、ガシャーンッ!とおっきな音が鳴り響き、同時にレースカーテンの一部が裂けた。
瓶が振り落とされた先はチェレスの頭上。
スローモーションで倒れてくる呆然とした顔のチェレスを、俺もポカンとした表情を浮かべながら呆然と受け止めた。
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