異世界マフィアの悪役次男に転生したので生き残りに励んでいたら、何故か最強の主人公達に溺愛されてしまった件

上総啓

文字の大きさ
186 / 241
五章

184.ロキの嫉妬


 父がばたんきゅーしてしまったので、泣く泣くアンドレアの方へ避難することにした。
 吐血してるけど大丈夫かな、父ってば生きてるかな……とそわそわする俺を見かねたのか、ジャックとガウが父を抱えて退出していった。うーむ絵面が完全に死体処理。


「ルカ、身体は大丈夫か?夜会の件についての話があるが、体調が悪ければ眠っていて構わない」

「だ、だいじょぶです!おれも関係あるお話だから、おれもしっかり聞きたいですっ!」


 どうやらこれから例の事件についての話し合いが行われるところだったらしい。
 父がいないけれど大丈夫かな?とちょっぴり不安になったけれど、誰も父の心配をしていない様子を見る限り大丈夫そうだ。それはそれでどうかと思うけれども。

 アンドレアの心配にふにゃっと笑顔を返し、全然だいじょぶよーとマッチョポーズでアピールする。
 ほれほれ、見ての通り全然だいじょぶだから、みんなケンカなんてやめるんだぞ。


「……そうか。だが後から疲労が襲ってくるかもしれない。何かあれば直ぐに伝えろ、いいな」

「うむ、うむ。わかりました!」

「よし。では変態クソ野郎の拷問殺処分は後回しにして話を進めるぞ」

「うむ、うむ。うむむっ……?」


 気のせいだろうか。なんか最後にサラッと物騒発言が紡がれた気がするが……いや、気のせいだな、うむ。アンドレアの表情、これから人を殺すとは思えないほど清々しい色をしているし。

 何やらロキが「親友??」と焦燥した様子でアンドレアに声を掛けているが、当のアンドレアはそれを完全スルーして淡々とソファに腰掛けた。あれ、もしかして気のせいじゃない……?
 ちょっぴり嫌な予感がしたけれど、クールな俺はそういう回避術も心得ているので知らないフリをした。後日バラバラの死体でも見つかったら、何も言わずに手を合わせに行くんだぞ。うむ。

 俺を膝にのせてむぎゅっと抱き締めるアンドレアに、ずっとニコニコ笑顔で様子を窺っていたリカルド様がふと声を掛けた。


「おや、意外と冷静だね。少なくともアロルドと同じくらいの怒りは見せてくると思ったのだが」

「心配せずとも父上の怒りなんてものとは非にならないほど憤っていますよ。今ここにルカが居なければとっくに貴方達の首が飛んでいます」

「おや、どうやら私は命拾いしたらしいね……」


 リカルド様のニコニコ笑顔がちょっぴりだけ崩れる。流石のリカルド様も、アンドレアの超絶冷静な殺意マシマシ回答には多少ビビッてしまったらしい。
 とりあえず俺が全ての原因っぽいので、責任を持ってアンドレアの機嫌をとるべくぽんぽんと頭を撫でてあげた。うーむ、嬉しそうな無表情が浮かんでよきよき。嬉しそうな無表情ってなんだ?


「もう、二人ともふざけてないで、早く話を始めるよ。えぇっと、なんだっけ。既成事実が出来たので俺とルカちゃんと結婚式についての打ち合わせをしようって話だったっけ?」

「今の会話聞いていたか?首刎ねるぞ貴様」


 一番ふざけているロキの発言を聞いて、アンドレアが額にピキッと青筋を浮かべた。
 ロキってばどうしていつもナチュラルKYさんなのだろう。アンドレアの地雷を踏み抜く才能がありすぎて、もうある意味意図的にスリルを楽しんでいるのかと恐れるレベルだ。

 とりあえず、今のアンドレアはいつものピリつき加減とは比べ物にならないほど崖っぷちの怒りモードに陥っているので、普段のようにぽわぽわして無意識に逆鱗に触れるわけにはいかない。
 ここは恐らくこの場で唯一マトモであろう俺が話を戻さないと……!と使命感に駆られ、アンドレアの抱っこからそろりと顔を出しつつ声を上げた。


「はいっ!あの、ハオランとかチェレスとか、どうなっちゃったんですかっ!」


 慌てて声を上げたので、挙手とセリフの内容的に何だか幼児の発表みたいな感じになってしまった。
 ぷるぷると震えながら必死の問いを放った俺に、三人の視線が一斉に集まる。ぴぇっ、急に見られると緊張しちゃうよぅそわそわ……。

 ぷるぷるする俺をアンドレアがよしよしと撫でる。ちらっと見上げると、アンドレアはほんの数秒前までの怒りオーラを霧散させ、何やら『癒されたー』みたいな緩い無表情を浮かべていた。


「馬鹿共なら全員捕えて投獄しているから心配するな。勿論残党も一人残らず処理したぞ」

「アッ、そですかー」


 ちょっぴり物騒な想像をしてしまいそうになったので、慌ててむんっと会話を終えた。
 処理はアレな意味だよな?たぶん、敵の下っ端さんたちはみんな仲良く天に召されてしまったよな……?むむっ、それじゃあ待てよ、あんまり悪くないハオランの処遇はどうなったんだ?

 数秒恐怖でぷるぷるしていたが、恐怖よりもハオランの心配の方が勝ったので慌ててアンドレアに縋りついた。


「お兄さま、ハオランは悪者じゃありません。チェレスは悪者だけど、ハオランはちがうんだぞ。ハオランはな、悪いやつらに利用されただけで……」

「──ふぅん。随分ハオランの肩を持つんだね」

「……んむ?」


 アンドレアに必死の弁明をしている最中、ふとロキがぽつりと呟いた。
 その声音がどこか沈んでいるような、ほんの僅かな棘を含んでいるような気がして振り返る。そこには、リカルド様によく似た胡散臭い笑顔があった。
 俺にはもうしないって言ったはずの、貼り付けたような笑顔だ。


「そういえば、逃げてきた時もハオランと一緒だったよね。夜会の時も、ハオランから貰ったジュースをまんまと飲んだらしいし。ハオランには妙に懐くの早くない?俺の時は最初ずっと警戒してたのに、ハオランとはちょっと話しただけで心開いたみたいでなんか妬け──」

「ぅ、うぅっ」

「…………ん?」


 長文早口で語っていたロキの声がふいにピタリと止まる。
 ロキは目を見開いて、ぐすぐすと嗚咽を漏らしながらアンドレアに抱き着く俺をガン見した。


「なんでぇ、なんで急におこりゅのぉ!」

「え、えっ、まって、怒ってるわけじゃ……!」

「ハオランわるくにゃいて言ってるのぃ!急におこりゅぅ!こわいぃ!」

「ま、まってまって!違うの、そうじゃなくてっ……!」


 ロキは好き。けれど、ロキの貼り付けたような笑顔は苦手だ。
 まるで線を引かれて遠ざけられたような、そんな寂しさが募るから。明確な壁を作れてしまったみたいで、その笑顔を見ると反射的に身体が強張ってしまう。

 その怖い笑顔で、まるで尋問を受けるみたいな長文のセリフを向けられる。
 俺としては、ロキを相手にしてこれ以上に恐ろしいことはなかった。だって、大好きな人から、大好きな人が嫌いな人に向けるみたいな対応をされると、普通に悲しくて泣いちゃうだろ?


「あーあ、泣かせちゃった。全く大人げないね。ロキもまだまだ青臭い思春期かー」

「ちょ、父上!笑ってないでフォローしてください!」

「こういうのは自分で何とかするものだよ。お前が損ねた機嫌はお前が責任を持って直しなさい。ただでさえルカちゃんは妖精の如く繊細だと言うのに。ロキは本当に馬鹿だねぇ」

「ぐぅ……っ」


 ゆったり寛ぎながら毒舌を飛ばすリカルド様に、ロキは珍しくぐうの音を吐いた。
 なんだなんだ、ロキは怒ってるわけじゃなかったのか?と涙ぐむ俺を、アンドレアがむぎゅっと強く抱き締めてくれる。むん、ぬくぬくあったかいぞ。

 背後から遠慮がちにトントンと肩を突っつかれて振り返ると、申し訳なさそうに眉尻を下げるロキと目が合った。


「ごめんねルカちゃん。怒ったわけじゃないんだ。さっきのはね、ハオランに……無様に嫉妬しちゃって。それで、その……八つ当たりみたいなこと言って、本当にごめんなさい……」


 シュン……と肩を落とす姿が捨て犬みたいで、咄嗟に庇護欲が湧き上がってよしよしと頭を撫でてしまった。


「んむ、うむ。おれもごめんなさい。あのな、ロキの笑顔が、ちょっぴり怖かったんだ。おれ、ロキのはニコニコしてるのが、だいすきだから……」

「ぐぅッ……!」

「怖いニコニコじゃなくてな、優しいニコニコがだいすきなんだ。いつものロキは、だいすきだぞ。だから、シュンってならないで。ロキのこと、いつもだいすきだからな」

「ぐはァッ!!」


 慌てて弁明したは良いものの、はてどうしたものか。
 意図せずロキを倒してしまったみたいだ。なぜか吐血したロキは床に伏せて、苦しそうにグアァッと呻いている。父に次ぐ第二の犠牲者だ、かわいそう。


「ろき、しんじゃった……」

「捨て置け。話を続けるぞ」


 どうやらかわいそうなロキを心配しているのは俺だけらしい。
 淡々と再開される報告やら何やらを聞き、慌ててロキから手を離して聞く体勢に入った。ごめんよロキ、お話が終わったら救出してやるからな……。
感想 118

あなたにおすすめの小説

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

気付いたらストーカーに外堀を埋められて溺愛包囲網が出来上がっていた話

上総啓
BL
何をするにもゆっくりになってしまうスローペースな会社員、マオ。小柄でぽわぽわしているマオは、最近できたストーカーに頭を悩ませていた。 と言っても何か悪いことがあるわけでもなく、ご飯を作ってくれたり掃除してくれたりという、割とありがたい被害ばかり。 動きが遅く家事に余裕がないマオにとっては、この上なく優しいストーカーだった。 通報する理由もないので全て受け入れていたら、あれ?と思う間もなく外堀を埋められていた。そんなぽややんスローペース受けの話

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。