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六章
217.ひみつのお友だち
ようやく決意した、あの告白の返事。そんなロキとの内緒話をみんなに伝えることになったのは、かなり日が経ってからだった。
その日がようやく訪れたのは、ガースパレ家が当主交代したとして、そのお披露目のために催された夜会の日。
ガースパレ家とは色々あったから、みんなちょっぴり気まずい感じだったけれど……とは言え形式的に無視するわけにはいかないので、二大ファミリーの主要人物も参加することになった。
俺は当然のごとく留守番を言い渡されていたけれど、お得意の秘技『やだやだおれもいくー!』を駆使してなんとか参加の許可を得ることに成功した。
今回は二の舞にならないよう、夜会での暗黙の了解なんか知ったことかと言わんばかりの厳重警護だ。俺の周りだけガチムチ構成員がうじゃうじゃ配置されている。
そしてそして、最大の防壁と言っても過言ではないロキが、今回はガチガチの決意を胸に俺のパートナーを務めてくれているので、どれだけフラグを立てても安全そうな感じに仕上がった。
なんたって『これからは片時も離れない』と断言していることに加え、俺から五メートル以上離れたら激痛がロキの身を襲うという拘束魔法付きの夜会参加だ。覚悟が段違いすぎである。
そんなこんなで準備万端すぎる当日の夜。
俺はそわそわと忙しなくサメさんネクタイピンを撫でながら、これからみんなに例の話を伝えることへの緊張を募らせていた。
「ルカちゃん。ベルナルディとヴァレンティノの面子が客間に集まったみたいだから、ハオランへの挨拶だけ適当に済ませて、そろそろ行こうか」
「んむっ!う、うむっ」
ガースパレ家の新しい当主、ハオランのお披露目も終わり、会場ではあっちこっちで自由な談笑が始まっている。
そんな中、ふいにロキがドキドキのセリフを耳元で囁いた。途端に心臓がどっくんばっくんと鼓動を速め、動きが緊張でカチコチになる。
右手と右足、左手と左足を同時に動かすおかしな歩き方をしながら、なんとかロキについていってハオランのもとへと向かった。
他のマフィアの人達と話していたハオランが、ふとこちらに気付いた様子でハッと目を瞠る。周囲の人たちに笑顔で頭を下げると、人の波を掻き分けてこちらに駆け寄ってきた。
「ロキ様、ルカ様!来てくださりありがとうございます!」
ニカッと爽やかな笑顔を浮かべて手を振るハオラン。その爽やかさにつられて、俺もわーいと手を振ってしまった。
そのままハイタッチ!といきたいところだったけれど、ハオランの行く手を阻むように、ガチムチ構成員の一人が腕を伸ばした。これ以上はメッと言っているみたいだ。
「おっと、これは失礼……」
その制止に苦笑を零しつつ、ハオランがピタッと立ち止まる。
それと同時に、ハイタッチの為に挙げた手がゴールを失ってしょんぼりと止まった。そろりと下ろそうとした時、ロキにその手をぎゅっと繋がれたことで表情がぱあぁっと明るくなる。
ありがとだぞロキ。おててぎゅっぎゅだぞ。
「あんなことがあったので、まさか来てくださるとは思わず……とても嬉しいです」
繋いだ手をむぎゅっと握って遊びながら、始まるロキとハオランの会話に耳を澄ませる。
あんなこと……例の拉致騒ぎのことか。あれ以来ガースパレの当主は非難を浴びて、二大ファミリーの恨みも買い、結局罪人として捕まってしまったんだよな。
俺ががんばってみんなを説得した甲斐があったのか、なんとかハオランの投獄は避けることが出来たけれど……ハオランからすれば家族を失ってしまったことに変わりないし、実はちょっぴり心配していた。
けれど夜会での様子をチラチラ窺っていた限り、側近やらお仲間やらには恵まれているようだし、あまり不安に思うことはなさそうだ。
二大ファミリーからの恨みはまだまだ向けられ続けているらしいけれど、まぁハオランなら上手く躱すことが出来るだろう。うむ。
なんてふむふむと安堵する横で、その真逆の感情を抱いていそうなロキがスッと目を細めた。な、なんだかハオランに対する態度がちょっぴりギスギスしててこわいぞ……。
そのギスギスはどうやら勘違いではなかったようで、ロキはハオランが発したそのセリフに、ふと珍しい嘲笑を浮かべて答えた。
「まぁ一応ね。運良く没落は躱せたようで正直驚いた。以前の当主よりもマトモそうな君がトップに立ってくれて嬉しいよ。おめでとうハオラン」
嫌味マシマシなロキの言葉にちょっぴりドン引く。俺でさえしっかり察せるくらいの嫌味を言うなんて、ロキってばちょっぴり性格が悪いんだぞ。素直にお祝いしなさいだぞ。
メッとロキの腕をぺちぺち叩き、俺もハオランに向き直ってにこっと笑顔を浮かべる。
たぶんハオラン、俺に罪悪感的なアレを抱いているだろうからな。俺は別にハオランのことは恨んでいないし、一応それを何となくでも伝えておかないと。
「ハオランおめでとー。もう当主さまだから、ハオランさまって呼んだ方がいいか?」
ぱちぱちとちっちゃく拍手しながら言うと、ハオランは慌てたようにぶんぶんっと首を振って「滅相もない!」と叫んだ。
「今まで通りハオランとお呼びください。ルカ様」
ルカ様。そう呼ぶ瞬間、ふとハオランの表情が一瞬だけ曇ったように見えた。
いつもは鈍い俺も、たぶん同時に同じ記憶を思い出したからへにゃんと眉尻を下げる。わかるぞハオラン、なんたって、俺も忘れてなんかいないからな。
ほんの数分程度だったけれど、ハオランと友達になれたあの時間。さらっとバルコニーの方向を一瞥し、ふにゃりと頬を緩めた。
気まずそうな、複雑そうな表情を浮かべるハオランにそっと手を差し出す。すると、ハオランは驚いたように目を見開いた。
「わかったぞ。これからもよろしくな、ハオラン。おれ、ハオランのことお友だちだと思ってるからな。“お友だちのとき”は、いっぱいなかよくしよーな」
胸の前でちょいちょいっと指を動かし、バルコニーに視線を向けさせる。
ハオランは俺のセリフの意味をしっかり察してくれたのか、嬉しそうに微笑みながらぎゅっと握手してくれた。
「えぇ、よろしくお願いします。ルカ……さま」
含みのある声音でニコッと笑うハオラン。うむ、普段の調子が戻ってきたようで何より。
ふにゃふにゃと笑顔を向けると、それを見たロキがムッと眉を顰めて俺の手を引いた。あわわっ、急になんだなんだ、びっくりしちゃったぞ。
「……ルカ、そろそろ行こう。皆を待たせちゃってるから」
「むっ!そうだったな、早く行かなきゃだぞっ」
ロキにグイグイと強引に手を引かれ、慌ててハオランにぱたぱたと手を振る。
「じゃーなハオラン。またなー」
ハオランが手を振り返してくれる。いつでも会いに来てくださいねーという誘いに笑顔で頷くと、俺を引っ張るロキの手に、ちょっぴり力が籠ったような気がした。
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