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足軽大将な軍師

軍師、二つ目のダンジョンを攻略する

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翌日、野営を終えた俺達はダンジョン攻略を続行する。
白狼の巣と呼ばれるだけで狼系統の魔物がわんさかいた。此奴ら自体は呆気なく倒せるんだが、速すぎるったらありゃしない。
ヒットアンドアウェイ戦法をよく使ってくるのか、魔法じゃないと除去できないという面倒くささがあった。

しかし、その戦法を狩猟に慣れているマリナが余裕で撃破している。

「もっと、来い!」
「怖いねぇ」

近づく魔物を蹴散らしながら階層を進む。次第にはレベルが上がり辛くなっていき、周りの敵をワンパンで倒せるようになった。

「あまり強くなくなったな」
「弱い」

蹴散らしながら進んで3時間。最下層にやってくる。
確かここにボスがいるんだったな。

「さて、相手はどんな奴かお手並み拝見と行こう」
「楽しみ」

ボス部屋の扉を開ける。中は学校の体育館並みに広かった。
周りには緑が広がっており、光の粒である精霊が沢山飛び回っていた。

「……幻想的だな」
「綺麗…だけど何かいる」

マリナが指をさすとその先に白い狼がいた。全長6mくらいだろうか?滅茶苦茶でかい。

『よく来たな。侵入者よ』
「し、喋った!?」

俺は焦った。言葉を発せる狼は俺がこの世界で生きてきた中で全くの経験がない事であった。
不意に鉄球を構える。俺の体が危険と感じているのが出た汗で分かった。

『怯えてるわけではない、か。驚きと同時に構えるとは肝が据わってるとして見ておこう』
「お前さんは……このダンジョンのボスか?」

白狼は『然り』と言って答えた。

『我はガルム。この巣の主なり』
「俺はカイン。魔王軍軍師の足軽大将だ」
「マリナ、同じく軍師。足軽組頭」
『ほほう?二人は軍師であったか。兵も連れておらんのによくここまで来れた者よ』
「褒めていただき、恐悦至極だ」
『では始めよう。軍師二人が我にどれほど傷をつけられるか楽しみだ』

そう言って戦闘が始まった。
二人係のエリアボス攻略。どう出ようか。

考えながら俺は一旦ガルムから距離を取る。しかし、それを許さないようにガルムが俺に接近してきた。
速い。俺が焦るほど速い。
考える猶予を与えないという事なのだが、初手でこれは痛い。

恐らく、此奴は俺が今まで戦ってきた奴らより強い。

魔法を撃とうか考える余裕も与えずガルムは猛突進で俺を壁まで吹っ飛ばす。

「ぐはっ!」

カインのHP:2000→1500

嘘だろ……?今の攻撃で500も喰らうのか?まるでレイドボス並みだなこの狼。
下手すると中級プレイヤーを簡単に屠れるレベルだ。

だが、喰らう直前に魔法を足元に当てた。これで成功すれば……。

『む!?足が動かぬだと?』

上手く引っかかってくれた。喰らう直前に土魔法の1つ【粘着の地面スティッキーアース】を設置した。
少しの間だけ動けなくなるが、時間が経てば解除されて反撃を受けるだろう。
だがそうなる前に倒せばいい!

「今だ!マリナ!やれ!!」
「わかった」

マリナの短剣の斬撃が無数に飛んで行き、白狼の体を切り刻む。

『抜かったか…!』
「最初に俺を攻撃したのが敗因だったな」

まだ耐えているガルムに対し、鉄球で最後の一撃を与える。
ガルムは吹っ飛び、その身体は消滅した。
するとコマンドが表示され、クリアを知らせた。

『エリアボスを撃破しました』

呆気ないというより、長期戦は拙いという感じの敵だったな。

「さて、アイテムだが……レアリティはないな」
「どれも強くない」

少しがっかりしながらダンジョンを出ると魔王軍の斥候が来た。

「申し上げます。サイサリス様から緊急の召集とのことです」

おや?何かあったのか?

「わかった。すぐ向かう。だが遠いから多少遅れるかもしれん」
「はっ!伝えておきます」
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