憧れの生徒会長が僕の奉仕奴隷になったわけ

冬野花火

文字の大きさ
6 / 15

安城院雫と生徒会室

しおりを挟む
 場所は知っているけれど、生徒会室に入るのは初めてだった。
 一般の生徒にはほとんど関係のない場所だから、それも当たり前だ。
 職員室のさらに奥の角部屋。それが生徒会室の場所だ。

 その扉は、ただ閉まっているだけなのに、周りに生徒がいないせいで、まるで堅牢な門番がいるかのように開けづらい。
 僕はLINKを開いて、昨夜来ていた先輩からのそのメッセージを確かめる。

『もし可能なら明日の昼休み、生徒会室に来てくれないかしら。良かったらお昼ご飯をご馳走させて欲しいので』

 そこにはそう書かれている。
 お昼ご飯をご馳走されるようなことをしてないように思うけれど、僕はその言葉に甘えた。 
 その雰囲気的に堅牢な扉をノックすると、

「どうぞ」と返ってくる

 その返事に応えて僕は扉を開ける。
 生徒会室に入るのが初めてということは、その中を見るのが初めてということを意味していることに僕はそこで気づいた。

 印象としては仕事部屋という雰囲気だった。
 職員室にあるのとそう変わらない業務用の長机が七つ並んでいて、入って右の壁一面はロッカーが並べられそこにはどうやら資料が並んでいるらしい。

 どうやら生徒会室は二室に分けられているようで、奥にはガラス張りになった会議室が見える。
 僕を招いた安城院先輩は、お誕生日席とでもいうような飛び出した奥の一席に座り、うずたかく積まれた資料とパソコンを行ったり来たりしている。

 それはあまりに日常的な仕草で、先輩がいつもそうしていることを物語っている。
 僕が呆気に取られてその様子を見ていると、

「川上くん、ごめんね。呼び出してしまって」

 先輩は立ち上がって机の脇に紙袋を丁寧に渡してくる。

「これ、昨日借りた、その下着」

 なるほど、そのお礼か。
 ここで返さなくても、放課後だって会うんだしと思ったけれど、先輩のそういう潔癖なところを僕は好ましく思う。
 僕は先輩に促されてその隣の席に座る。

「それと、これ。良かったら一緒に食べましょう」

 そう先輩は鞄からタッパーと水筒を取り出した。
 先輩は頬をかいて少し恥じらうように、それを開ける。
 サンドイッチだった。
 それもとても一人暮らしの女の子が作ったとは思えない、手間のかかったものだ。
 見た目の挟まれている具材も様々で、彩りが華やかだった。
 僕が驚いている間に、先輩は水筒から紙コップに紅茶を注いでくれた。

「そのかえって気を遣わせてしまって、申し訳ないです」

「ううん。その。気にしないで。私の方がよっぽど迷惑かけたのだし。それに、これからだって……」

「そっちは気にしないで下さい、先輩。せっかくだし食べましょう」

 僕は先輩の話を区切って、手を合わせる。
 先輩もそれに続く。
 僕は照り焼きチキンと卵とレタスの挟まったサンドイッチを手に取る。
 それは一口に口に入れただけで、チキンの香ばしさ卵の絶妙な味付けが相まっておいしい。
そう先輩に伝えると、照れるのを隠すように瑞々しい黒髪を掻きあげた。

「ごめんなさい。川上くん、少し仕事してもいいかしら」

「ええ、もちろん」

 先輩はサンドイッチを片手に、次々に書類を崩していく。
 僕は食べながら、先輩の仕事をするのを眺めていた。

 先輩の机の上の書類の束はうずたかい。
 他の人の机と比べても明らかにそれは多い。
 案件ごとに色分けしてクリアファイルに入れているみたいだけれど、少なくとも一〇種類以上のファイルがそれぞれ複数ある。 
 僕だったらとてもじゃないけれど、こんな仕事量をこなせないだろう。
 僕の視線に気づいたのか、先輩は顔をこちらに向ける。

「部活動や学校行事、保護者会や他の学校との連携とか、いろんな種類があるから、どうしても書類が多くなっちゃうだけよ。最終確認だけの仕事も多いしね」

 先輩はそう言うが、きっとそれだけではないのだろう。
 そうじゃなきゃ、昼休みにまできてここで仕事はしていないはずだ。
 それに、あのふざけた神さまのせいで命が懸かっているというのに、学校にくる理由はきっとこれなのだから。

「その僕にも何か手伝えることはないですか?」

 僕はそう思わず言っていた。
 先輩は最初驚いたような戸惑ったようなそんな顔をしたけれど、嬉しそうに柔らかく微笑みに変わる。
 僕はその笑顔にドキッとする。
 少しとっつきづらさを覚えるような雰囲気のその奥に、そんな表情があるのだ。 
 昨日からそう思っていたけれど、先輩は笑うととてもかわいい女の子だということに気づいた。

「それじゃあ。この書類の仕分けをお願いできるかしら」

 先輩はそれから自分の持っている見仕分けの書類を持ってきて(どうやらそれはまた別の山になっていた)、それを先輩の管理する色ごとのファイルに移すようにとのことだった。
 僕は先輩に教わりながら(先輩は教えるのがとてもうまい人だった)、その仕事を続ける。
 そんな仕事ではないのに、なぜだか無性に楽しく思える時間だった。
 予鈴の鳴るその時間まで僕と先輩はほとんど言葉を交わさずに、互いの仕事を進めた。
 なんとか束になっていた書類の仕分けは終わらせることができた。

「助かったわ、川上くん」

「いえ、こんなことでよかったらいつでも手伝いますよ」

 先輩は瞬きをして、右手を自分の胸にあてた。

「何か変でしたか?」 

「ううん。そんな風に言ってくれる人ってあまりいないから。嬉しくてね」

 その言葉に僕ははっとする。 
 先輩はきっと、周りにとても仕事ができる人だと思われている。
 自分たちなんかより圧倒して、と。
 それがこうした地道な努力の成果だとしても、それは伝わっていない。
 どんなに量が多くても、自分たちよりうまくやってしまうと決め込んで、周りの人は先輩に遠慮しているのかもしれない。 
 だから、僕は遠慮しないことにした。

「先輩、明日も来てもいいですか。そのお手伝いさせて下さい」

「お願い……してもいいのかしら?」

 それは自身に対する疑問のようだった。 
 先輩は先輩で人に仕事を頼むのがうまいってタイプではなさそうだ。
 自分で頑張って仕事をしてしまうタイプだ。
 僕は言葉を重ねて、先輩を後押しする。

「いいんですよ。先輩」

「じゃあ、お願いするわね」

 そう言って先輩は自然と表情を崩した。
 その表情に、僕はドギマギするのを隠せなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...