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ササメ 10
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くのだ。
事態は何も解決していない。
むしろ、これからなのだ。鬼は、確実に力をつけてやってくる。 だがこの五日、まるで姿を現さないのは妙だった。こちらの警備に怯んだのであろうか。祠を壊されなければ、これ以上鬼が力を増すことはないということになる。それは良いが、現れてくれなければ逆に捕えて退治することもできないのだ。
獻瑪にはこの五日が不気味な静けさに思えて仕方ない。
鬼は、きっとなにか企んでいる――。
それに、五日前に見てしまったあの光景が頭から離れない。癒簾に笑顔を向けられると、黙っている自分に心苦しくなる。
それでも、自分の頭で整理できていないことを、軽々しく口にすべきではなかった。
見たものがそのまま真実というわけではない。まして璃石は、ひとだからだ。ひとたるがゆえに、想いとは矛盾した行動を起こす。
獻瑪の璃石を信じる気持ちは今も変わっていない。だが、あの深く複雑に入り組んだような束縛から璃石を救うことはできるのか。日がたつほどに、自信もなくなっていく。
時が過ぎるのは早い。そうしてもう、五日たってしまったのだ。
そして、その日。獻瑪の嫌な予感は見事に的中した。
空が陰った。
見上げると、厚い雲が空を覆っている。それは見る間にどんどんどんどん厚くなっていく。しまいには、町中を夜のような暗黒が襲った。
商店はいつもどおり開いていた。人通りも普通に多い時刻。人々の慌てふためく声が聞こえてきた。あちこちで灯りがともされはじめたらしく、互いの顔を確認し合い安堵するためいきが、街道を外れたこの湖畔にまで聞こえてきそうであった。
右の小指が痛む。
爪先が、ジンジンと痛む。
鼓動が高鳴っていた。空気が一気に冷える。雨が降り出していた。雷が鳴り始めた。
すぐ近くで、落雷があった。ザアーッと雨の音が耳に煩い。
鬼はまだこない。だが、爪は痛んでいる。
鬼は、すぐそこまできているのかもしれない。
「つっ」爪が、右へいきなりよじれた。痛みに顔をしかめつつ、獻瑪は咄嗟に癒簾と自分へ結界を張っていた。咄嗟のことで、身体すべてを覆えない。だが、右側へ集中させることで使鬼の攻撃を防げた。
気づいたときには、使鬼に囲まれていた。ゆっくりと、使鬼たちはその輪を縮めてくる。考えている。獻瑪は唇を噛んだ。使鬼に、知能がついたのだ。
雷鳴がとどろいた。同時に、土煙が空へ突き上げた。それが、いくつも続く。ほとんど爆発のような音。いや、それは実際に爆発だったのだ。
鋭い音と鈍い音を同時にたて、傍らの祠が割れた。
爆風から結界で身を守りつつ、舞い上がる土煙に紛れて獻瑪は癒簾を連れて跳びあがった。
「翔」
といっても、空を飛べるわけではない。多少普通の人間よりも軽やかに飛べるというだけのもの。だが、二人は木の枝に着地し、鬼どもを見下ろした。
素早く、獻瑪たちに気づいた使鬼が跳びあがってきた。
獻瑪は立て続けに向かってくる使鬼を「退散」させた。が、拉致があかない。土煙の中から次から次へと使鬼が生まれ出てくるのだ。
「癒簾、とりあえず逃げよう」
獻瑪は、「翔」と唱え、癒簾と共に使鬼の輪の外へ飛び降りた。
「固」一時だけの金縛りを使鬼の塊に一斉にかけ、獻瑪は癒簾の手を引いて走った。
「かげ、どうしたの。どうして出てこないの。侍寸も、どうしたのかな。兵がぜんぜん助けにきてくれないよ」
癒簾は、まだ知らぬのだ。かげも兵も、助けにはこないことを。
「来たってただ足手まといになるだけだ。心配すんな」
今は、おれしかいない。
「おれがお前を守るから。だから、心配すんな」
「獻瑪、」
しかし、逃げる二人の前に立ちはだかった者がいる。
「かげ――」
二人の背後からは、術の解けた使鬼が追ってきている。
かげは、扇子を抜いた。そして、それを向けた相手は使鬼ではなく、癒簾であった。
「かげ?」
かげは、無表情でいて、何も答えなかった。
だが、覆面に隠れるその素顔でどんな表情をしているのか、獻瑪には分かる気がした。
「てめえ、本気で癒簾を裏切る気なのかよ」
獻瑪は癒簾をかばうように前へ出て言った。
とりあえず、使鬼が近づけぬように背後へは結界の「壁」を作ってある。
「何も、訊くな」
かげは、くぐもった声でそう言った。
その隣に、鬼姫が現れた。霧から浮かび出るように、雨にふられても濡れてはいない。
白い頬をひきつらせて、鬼姫は笑った。
「ようやっと、ゎらゎのところへ戻ってきたでありんす」
鬼姫は、かげの襟を引き寄せ、接吻をした。
獻瑪の横で、癒簾が息を呑む気配を感じた。
接吻は覆面の上からだ。だが、獻瑪は以前にもっとえぐいものを見ている。
「どうして……」
癒簾はそう小さく言っただけだった。かげは、決して癒簾と目を合わそうとしなかった。
「やっておしまい、ゎらゎのかげよ」
かげは扇子を顔の前に構え、だが、それを振り下ろせないでいた。
鬼姫は牙を剥いて、血走った目をぎょろりとかげへ向けた。
「かげ!」
ちりん――。
鈴の音が響いた。かげの目が見開く。獻瑪は、咄嗟に癒簾を突き飛ばしていた。
「ぐあっ」腹に何かが突き当たった。かげの飛ばした風の塊だ。呼吸ができなくなり、獻瑪はそのまま後ろへ吹っ飛ばされた。
解けた結界を素早く己へ張り直す。だが、その必要はない。使鬼どもは癒簾めがけて突進していく。
「くそっ」
獻瑪は力を振り絞って立ち上がり、癒簾の下へと駆けた。
「鈍」使鬼の足を遅め、それらを追い抜き癒簾を抱き寄せた。
かげは、扇子を仰いでいた。その仰ぎによって、使鬼がどんどん増えていく。
結界に阻まれ、二人に近づいてこれぬ使鬼たちが、石垣のように積み上がって行く。
癒簾は目を見開いてそれを見つめていた。
呆けているようだった。
芯はしっかりしたこの娘を、こうまで折ってしまう。それほど自分の存在が癒簾にとって大きいことを、かげは、璃石は知っているのだろうか。知っていて、癒簾を裏切ろうとするなら――そのときは獻瑪も容赦はしないつもりだった。
親友であるからこそ、璃石を許さない。
鬼導師には、禁術がある。最期の最期には、その禁を破ってもいいと思っていた。
「悪いな。おぬしらには死んでもらう」
「はい、そうですか。なんて答えられると思うのかよ、ばか璃石、このド変態が!」
「そういうお前は、ド音痴だ」
言った。
璃石がそう言った。
急に胃の腑から込み上げてくるものがあって、吐いた。獻瑪は使鬼に圧し負けて吐血した。
使鬼が、頭上から降ってくる。だが、その牙が届く前に、使鬼どもは二人から弾かれるようにして飛んでいく。
それと逆らうようにかげが飛び込んできた。
「おのれ鬼導師が!」
かげが緩慢に獻瑪へ扇子を振り上げた。緩慢だったのだ。
獻瑪には、術を唱える間があった。
「カエル」
かげが怯んだその一瞬に、獻瑪は杖でかげにつきこみ、叩き伏せた。
が、獻瑪は足をひっかけられ、かげのすぐ側に転ぶ。うつぶせになった獻瑪をかげは上から押さえつけ、
――囁いた。
使鬼どもが。再び突進してきていた。空が赤く見えるほど、隙間なく使鬼が群れている。
やるしか、ないのか。やるしか、ないのだ。
獻瑪は、右の小指の爪を、加えた。小指が、獻瑪の唾液を吸う。
それから、髪の毛をまきつけ――、
あいつは、この置き土産をしたときからこうなることが、わかっていたのだろうか。
小指を、斬り落とした。
「獻瑪!?」
痛みよりも、視界いっぱいに赤い色が広がっていた。
「癒簾」
獻瑪はすぐ側にあった癒簾の手を掴んだ。
「大丈夫だ、きっと」
そう口走ったことは後に覚えていないだろう。朦朧としていた。
それでも視界は赤い。
でも、血の色じゃないよな。だって、お前は血を流さないのだろう――璃石。
雪原にいた。ひどく、寒い。前も後ろも、右も左も白かった。なのになおも雪はしんしんと降り注ぎ、大地の汚れをすべて消さんと白さを増していく。
遠くに、里が見える。
懐かしい。
郷愁の念が胸をつく。不意に涙がこみあげた。
獻瑪は、唇を噛んでそれに耐えた。
だが、隣で嗚咽をあげたものがいる。
「かげ、どうして――」
信じていた者に裏切られた。それが、どんなに辛いことか。経験のない獻瑪にはわからなかった。あるいは、その痛みを知っているから、人と必要以上に心を許した付き合いはしてこなかったのかもしれない。
だが、大丈夫なんだよ。と、獻瑪には教えてやれる。癒簾は、裏切られてなんかいないんだ。と。
ただ、璃石は再び去った。それも、一つの裏切りかもしれなかった。
おれは、お前ほどお人よしじゃねえからな。
失った、右の小指を見つめる。今になって痛みが襲ってくる。だが、血はでていない。その部分はすでに、獻瑪でなかったのだ。
助かったのか、助けられたのか、今はよくわからなかった。落ち着いて、考えてみたかった。そのためにも、少し、眠りたい――。
獻瑪は、うしろへ倒れた。
雪が、柔らかくうけとめてくれる。冷たくも、優しい雪であった。
事態は何も解決していない。
むしろ、これからなのだ。鬼は、確実に力をつけてやってくる。 だがこの五日、まるで姿を現さないのは妙だった。こちらの警備に怯んだのであろうか。祠を壊されなければ、これ以上鬼が力を増すことはないということになる。それは良いが、現れてくれなければ逆に捕えて退治することもできないのだ。
獻瑪にはこの五日が不気味な静けさに思えて仕方ない。
鬼は、きっとなにか企んでいる――。
それに、五日前に見てしまったあの光景が頭から離れない。癒簾に笑顔を向けられると、黙っている自分に心苦しくなる。
それでも、自分の頭で整理できていないことを、軽々しく口にすべきではなかった。
見たものがそのまま真実というわけではない。まして璃石は、ひとだからだ。ひとたるがゆえに、想いとは矛盾した行動を起こす。
獻瑪の璃石を信じる気持ちは今も変わっていない。だが、あの深く複雑に入り組んだような束縛から璃石を救うことはできるのか。日がたつほどに、自信もなくなっていく。
時が過ぎるのは早い。そうしてもう、五日たってしまったのだ。
そして、その日。獻瑪の嫌な予感は見事に的中した。
空が陰った。
見上げると、厚い雲が空を覆っている。それは見る間にどんどんどんどん厚くなっていく。しまいには、町中を夜のような暗黒が襲った。
商店はいつもどおり開いていた。人通りも普通に多い時刻。人々の慌てふためく声が聞こえてきた。あちこちで灯りがともされはじめたらしく、互いの顔を確認し合い安堵するためいきが、街道を外れたこの湖畔にまで聞こえてきそうであった。
右の小指が痛む。
爪先が、ジンジンと痛む。
鼓動が高鳴っていた。空気が一気に冷える。雨が降り出していた。雷が鳴り始めた。
すぐ近くで、落雷があった。ザアーッと雨の音が耳に煩い。
鬼はまだこない。だが、爪は痛んでいる。
鬼は、すぐそこまできているのかもしれない。
「つっ」爪が、右へいきなりよじれた。痛みに顔をしかめつつ、獻瑪は咄嗟に癒簾と自分へ結界を張っていた。咄嗟のことで、身体すべてを覆えない。だが、右側へ集中させることで使鬼の攻撃を防げた。
気づいたときには、使鬼に囲まれていた。ゆっくりと、使鬼たちはその輪を縮めてくる。考えている。獻瑪は唇を噛んだ。使鬼に、知能がついたのだ。
雷鳴がとどろいた。同時に、土煙が空へ突き上げた。それが、いくつも続く。ほとんど爆発のような音。いや、それは実際に爆発だったのだ。
鋭い音と鈍い音を同時にたて、傍らの祠が割れた。
爆風から結界で身を守りつつ、舞い上がる土煙に紛れて獻瑪は癒簾を連れて跳びあがった。
「翔」
といっても、空を飛べるわけではない。多少普通の人間よりも軽やかに飛べるというだけのもの。だが、二人は木の枝に着地し、鬼どもを見下ろした。
素早く、獻瑪たちに気づいた使鬼が跳びあがってきた。
獻瑪は立て続けに向かってくる使鬼を「退散」させた。が、拉致があかない。土煙の中から次から次へと使鬼が生まれ出てくるのだ。
「癒簾、とりあえず逃げよう」
獻瑪は、「翔」と唱え、癒簾と共に使鬼の輪の外へ飛び降りた。
「固」一時だけの金縛りを使鬼の塊に一斉にかけ、獻瑪は癒簾の手を引いて走った。
「かげ、どうしたの。どうして出てこないの。侍寸も、どうしたのかな。兵がぜんぜん助けにきてくれないよ」
癒簾は、まだ知らぬのだ。かげも兵も、助けにはこないことを。
「来たってただ足手まといになるだけだ。心配すんな」
今は、おれしかいない。
「おれがお前を守るから。だから、心配すんな」
「獻瑪、」
しかし、逃げる二人の前に立ちはだかった者がいる。
「かげ――」
二人の背後からは、術の解けた使鬼が追ってきている。
かげは、扇子を抜いた。そして、それを向けた相手は使鬼ではなく、癒簾であった。
「かげ?」
かげは、無表情でいて、何も答えなかった。
だが、覆面に隠れるその素顔でどんな表情をしているのか、獻瑪には分かる気がした。
「てめえ、本気で癒簾を裏切る気なのかよ」
獻瑪は癒簾をかばうように前へ出て言った。
とりあえず、使鬼が近づけぬように背後へは結界の「壁」を作ってある。
「何も、訊くな」
かげは、くぐもった声でそう言った。
その隣に、鬼姫が現れた。霧から浮かび出るように、雨にふられても濡れてはいない。
白い頬をひきつらせて、鬼姫は笑った。
「ようやっと、ゎらゎのところへ戻ってきたでありんす」
鬼姫は、かげの襟を引き寄せ、接吻をした。
獻瑪の横で、癒簾が息を呑む気配を感じた。
接吻は覆面の上からだ。だが、獻瑪は以前にもっとえぐいものを見ている。
「どうして……」
癒簾はそう小さく言っただけだった。かげは、決して癒簾と目を合わそうとしなかった。
「やっておしまい、ゎらゎのかげよ」
かげは扇子を顔の前に構え、だが、それを振り下ろせないでいた。
鬼姫は牙を剥いて、血走った目をぎょろりとかげへ向けた。
「かげ!」
ちりん――。
鈴の音が響いた。かげの目が見開く。獻瑪は、咄嗟に癒簾を突き飛ばしていた。
「ぐあっ」腹に何かが突き当たった。かげの飛ばした風の塊だ。呼吸ができなくなり、獻瑪はそのまま後ろへ吹っ飛ばされた。
解けた結界を素早く己へ張り直す。だが、その必要はない。使鬼どもは癒簾めがけて突進していく。
「くそっ」
獻瑪は力を振り絞って立ち上がり、癒簾の下へと駆けた。
「鈍」使鬼の足を遅め、それらを追い抜き癒簾を抱き寄せた。
かげは、扇子を仰いでいた。その仰ぎによって、使鬼がどんどん増えていく。
結界に阻まれ、二人に近づいてこれぬ使鬼たちが、石垣のように積み上がって行く。
癒簾は目を見開いてそれを見つめていた。
呆けているようだった。
芯はしっかりしたこの娘を、こうまで折ってしまう。それほど自分の存在が癒簾にとって大きいことを、かげは、璃石は知っているのだろうか。知っていて、癒簾を裏切ろうとするなら――そのときは獻瑪も容赦はしないつもりだった。
親友であるからこそ、璃石を許さない。
鬼導師には、禁術がある。最期の最期には、その禁を破ってもいいと思っていた。
「悪いな。おぬしらには死んでもらう」
「はい、そうですか。なんて答えられると思うのかよ、ばか璃石、このド変態が!」
「そういうお前は、ド音痴だ」
言った。
璃石がそう言った。
急に胃の腑から込み上げてくるものがあって、吐いた。獻瑪は使鬼に圧し負けて吐血した。
使鬼が、頭上から降ってくる。だが、その牙が届く前に、使鬼どもは二人から弾かれるようにして飛んでいく。
それと逆らうようにかげが飛び込んできた。
「おのれ鬼導師が!」
かげが緩慢に獻瑪へ扇子を振り上げた。緩慢だったのだ。
獻瑪には、術を唱える間があった。
「カエル」
かげが怯んだその一瞬に、獻瑪は杖でかげにつきこみ、叩き伏せた。
が、獻瑪は足をひっかけられ、かげのすぐ側に転ぶ。うつぶせになった獻瑪をかげは上から押さえつけ、
――囁いた。
使鬼どもが。再び突進してきていた。空が赤く見えるほど、隙間なく使鬼が群れている。
やるしか、ないのか。やるしか、ないのだ。
獻瑪は、右の小指の爪を、加えた。小指が、獻瑪の唾液を吸う。
それから、髪の毛をまきつけ――、
あいつは、この置き土産をしたときからこうなることが、わかっていたのだろうか。
小指を、斬り落とした。
「獻瑪!?」
痛みよりも、視界いっぱいに赤い色が広がっていた。
「癒簾」
獻瑪はすぐ側にあった癒簾の手を掴んだ。
「大丈夫だ、きっと」
そう口走ったことは後に覚えていないだろう。朦朧としていた。
それでも視界は赤い。
でも、血の色じゃないよな。だって、お前は血を流さないのだろう――璃石。
雪原にいた。ひどく、寒い。前も後ろも、右も左も白かった。なのになおも雪はしんしんと降り注ぎ、大地の汚れをすべて消さんと白さを増していく。
遠くに、里が見える。
懐かしい。
郷愁の念が胸をつく。不意に涙がこみあげた。
獻瑪は、唇を噛んでそれに耐えた。
だが、隣で嗚咽をあげたものがいる。
「かげ、どうして――」
信じていた者に裏切られた。それが、どんなに辛いことか。経験のない獻瑪にはわからなかった。あるいは、その痛みを知っているから、人と必要以上に心を許した付き合いはしてこなかったのかもしれない。
だが、大丈夫なんだよ。と、獻瑪には教えてやれる。癒簾は、裏切られてなんかいないんだ。と。
ただ、璃石は再び去った。それも、一つの裏切りかもしれなかった。
おれは、お前ほどお人よしじゃねえからな。
失った、右の小指を見つめる。今になって痛みが襲ってくる。だが、血はでていない。その部分はすでに、獻瑪でなかったのだ。
助かったのか、助けられたのか、今はよくわからなかった。落ち着いて、考えてみたかった。そのためにも、少し、眠りたい――。
獻瑪は、うしろへ倒れた。
雪が、柔らかくうけとめてくれる。冷たくも、優しい雪であった。
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