家族の影

影燈

文字の大きさ
1 / 1

家族の影

しおりを挟む
私は、家族写真を見るたびに違和感を覚えていた。

母の笑顔は完璧すぎて、まるで練習したかのよう。

父の手は、いつも妹の肩に置かれているのに、肌が触れ合っているようには見えない。

そして妹―――彼女の目には、いつも奇妙な光が宿っていた。

ある日、私は古いアルバムを見つけた。

十年前の写真には、確かに四人分の影が写っていた。

しかし最近の写真では、影は一つだけ。

それは私の影だけだった。

「おかしいわ」と母が言った。「この家に住んでいるのは、私たち四人だけなのに」

父は新聞から目を上げず、「そうだな」と答えた。

妹は窓の外を見つめたまま、不気味な笑みを浮かべていた。

夜、私は家族の寝息を確かめに行った。

母の部屋には誰もいなかった。

父のベッドは、何年も使われた形跡がなかった。

妹の部屋の扉を開けると、そこには鏡だけがあった。

鏡に映る私の後ろには、三つの影が立っていた。

「私たちは、あなたの課題よ」と母の影が囁いた。

「あなたが選んだ家族だから」と父の影が続けた。

妹の影は歪んで笑った。「卒業まで、あと少しね」

私は振り返った。

そこには誰もいなかった。

でも分かっていた。

この家族は、私が学ぶべき最後の授業なのだと。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

意味がわかると怖い話

井見虎和
ホラー
意味がわかると怖い話 答えは下の方にあります。 あくまで私が考えた答えで、別の考え方があれば感想でどうぞ。

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...