隣の家の天才クラリネット演奏者が、甘すぎる愛を注いできます

海咲雪

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想乃さん、こっち向いて

バーでの演奏まであと4日となった。

今日は凛也さんにバーで演奏するステージがどのくらいの大きさなのか説明していた。

「一度見に行きましたが、グランドピアノが端に置いてある……えーと、ピアノで三分の一ほどを占めているくらいの大きさでした」

「なるほど。グランドピアノまで置いてあるとは、しっかりしたステージですね」

「基本的にはピアニストさんを呼んで、たまに演奏してもらっているんです。一度、聞きに行ったことがありますがバーの雰囲気にあって素敵でした。今回はバーのマスターさんが父と知り合いで、特別にクラリネットを引かせて貰えるんです」

「……」

「凛也さん?」

「そのバーっていつも混んでいるのですか?」

「結構人は入っていますが、空席が全くないってほどではないと思います」

凛也さんはしばらく何かを考え込んでいた。

「バーでの演奏まで後4日……つまり、演奏日は今月の17日ですよね?」

「はい」

私は凛也さんの質問の意味が分からないまま答えていく。


「僕も聴きに行っても良いですか?」


「っ!?」


「ダメですか?」

「ダメではないですが……緊張します……!」

「大丈夫ですよ。前に言ったでしょう?一人でも自分の演奏を好きだと言ってくれる人がいるだけで心強いと。客席にいれば、尚更(なおさら)です」

凛也さんが以前見せてくれた甥っ子との写真に視線を向けている。

「それに僕は想乃さんの演奏をちゃんと聴きたい。一回でも多く」

凛也さんの言葉に心臓がドクドクとなっているのが分かった。

凛也さんが写真に向けていた視線をこちらに向ける。

私は恥ずかしくなって、パッと目を逸らしてしまう。

「想乃さん」

凛也さんに名前を呼ばれても、顔を見ることが出来ない。

「想乃さんが本当に嫌なら行きませんが……」

「っ!……大丈夫です……」

私の言葉に凛也さんがクスッと笑った声が聞こえた気がした。

「想乃さん、こちらを向かないんですか?」

「ちょっと待って下さい!」

私は心臓が速なるのを整えようと、ゆっくり深呼吸をする。


「想乃さん、こっち向いて」


私はそっと凛也さんの方に顔を向けた。


「想乃さん、バーでの演奏が無事に終わったらご褒美にデートしませんか?」


「っ!?ご褒美にデートですか……!?」


「ええ。二週間レッスンの先生を頑張った僕にご褒美を下さい」

私へのご褒美ではなくて、凛也さんへのご褒美だと言われると、私が断りづらいことを凛也さんは知っている。

それにデートが凛也さんへのご褒美になると言われると、キュンとしてしまう。

それに私も心のどこかで凛也さんとデートしたいと思っている。

きっと胸がキュンとしてしまうのも、デートしたいと思うのも、どちらも凛也さんに惹かれ始めているからで。


「想乃さん」


凛也さんに名前をもう一度呼ばれて、目を合わせるとさらに胸がキュゥっと締め付けられた気がした。

「バーでの演奏が終わった次の週の土曜日は空いていますか?」

凛也さんの問いに私は小さく頷いた。

その後は恥ずかしくてまた凛也さんの顔をちゃんと見れなかったけれど、凛也さんはどこか嬉しそうだった。

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