Etern:Re

蒼宙綴

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第二章 ー ほころび 〜 世界の違和感

第8話:喪われたログ

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 森を抜け、麓の村に戻ったリィアたちは、まずログを確認した。

 だが――そこには何も残っていなかった。


「やっぱり……記録、残ってない」


 リィアが眉をひそめる。

 あの“歪んだ森”で起こったすべて――少年との邂逅も、ノイズの嵐も――システムログには一切反映されていなかった。

 まるで、あの場所が“存在していない”かのように。


「どうなってんだよ。オフライン領域ってわけでもないし……」


 カイルは腕を組み、難しい顔をしている。


「リィア、さっきの子……何者だったの?」


 フィーネの問いに、リィアは首を横に振った。


「わからない。けど、あの言葉……“再起動”とか“世界の破損”とか、普通のNPCが言うようなことじゃないよね」


 ふと、リィアはふところからアイテムウィンドウを開いた。

 ……そこに、“不明なデータ片”という謎のアイテムが1つだけ、追加されていた。


「これ、いつのまに……」


 “説明:不完全な記憶。開封条件、不明。”


 ウィンドウにそう表示された瞬間、画面が一瞬だけフラッシュし、世界が軽く揺れた。

 誰も何も言わなかったが、全員がそれを感じていた。


「これって……やっぱり、バグじゃ済まされないよな」


 カイルの声には、すでに“確信”の色が混じっていた。


 そのとき、またあの“ざらつくノイズ”がリィアの耳に入り込む。

 何かが、この世界の背後から干渉している――そんな感覚。


「私は……確かに、あの子に“見られていた”気がする」


 リィアの言葉に、フィーネが小さくうなずく。


「私も……。あの透明な瞳、ずっと奥を覗いているみたいだった。まるで、私たちの“中身”を読んでるような」


 中身――その言葉に、リィアの胸が一瞬ざわめいた。


「……もしかして、“ログイン”してるのは、私たちじゃない?」


 ぽつりと漏れたその言葉に、誰もすぐには返事をしなかった。

 けれど、全員がその意味を察していた。


 夜が訪れ、星が空に滲むように瞬く。

 リィアはひとり、村の高台で空を見上げた。


「ログイン画面なんて……あったっけ」


 そう呟いた瞬間、脳裏にちらついたのは――ただ、目を開けたら“この世界”にいた、あの日の記憶。
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