Etern:Re

蒼宙綴

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第四章 ー 失われた境界 〜 選ばれし者たちの記憶

第17話:選ばれた者たち

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 図書館の深部。

 制御区画に繋がる階段を抜けた先には、まるで“神殿”のような厳かな空間が広がっていた。

 中央には、ひときわ大きな端末。

 周囲には六つの“記録台座”が配置されていた。

 そこに浮かび上がるのは、リィア・フィーネ・カイル――そして、見知らぬ三つの名前。


「……これ、私たちの?」


 フィーネが台座のひとつに手を伸ばすと、そこに〈霧島 天音〉という本名と、ログイン履歴、記録データの断片が表示された。


「明らかにプレイヤーの情報だけど……見たことない項目が多すぎるな」


 カイルも別の台座を覗き込む。

 その中に記されたデータには“シンクレベル”“精神リンク率”など、通常のゲームUIでは見たことのない用語が並んでいた。


「……これ、ただのゲームじゃない。やっぱり、“選ばれてる”んだ、私たち」


 リィアの言葉に、室内の照明が微かに明滅する。


 その瞬間、部屋の奥の端末が自動で起動し、音声記録が再生され始めた。


  「記録:第9被験群、進行中。対象者には“選定理由”の通知は行わず、自然接続にてログイン済。現在、精神安定状態:良好。異常コード:該当なし」


「選定……理由?」

「……あたしたち、選ばれてここに“配置された”ってこと?」


 音声は続く。


  「管理者コードにより、記憶改ざんを順次適用。環境統合率:上昇傾向。なお、“非選定者”による干渉が確認され、対処プロトコルを準備中」


「非選定者……?」

 その言葉に、リィアの背筋が凍る。

 カイルがすぐに察して言った。


「この世界には“本来、ここにいるはずじゃない”奴がいる――ってことか」


 その瞬間、部屋全体に低い警告音が響き、壁面の一部がせり上がる。

 表示されたのは、奇妙に歪んだプレイヤー名と、そのステータス画面。


 名前の欄はノイズに塗り潰されていた。


「……見てはいけない“何か”が、いる」


 リィアは無意識にそう呟いていた。


 ――選ばれた存在。

 消された記憶。

 ここにいないはずの誰か。


 すべてが少しずつ、ひとつの真実に繋がっていく。


 それは、かつて“ゲーム”だと信じていた世界が、“現実”の断片を写したものだと気づきはじめる瞬間だった。
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