最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~

KABU.

文字の大きさ
39 / 41
第三章:「クラスメイトとの再会」

第39話:再生の旗

しおりを挟む
 夜が明ける。
 廃都メルディナの中心塔――その最上部に、黒地に銀環の旗が翻っていた。
 《リサイクル連合》の象徴、《再生の旗》。

 その瞬間、街に集まった人々が歓声を上げた。
 獣人、エルフ、元兵士、放浪民。
 種族も立場も違う者たちが、ひとつの旗を仰ぎ見ていた。

 「本当に……立ち上がったんだな。」
 蓮は塔の縁から見下ろしながら、呟いた。
 リアが隣で腕を組む。
 「見ろよ、あんたの作った“ガラクタの街”が、今じゃ立派な国だ。」
 「まだ国なんて呼べるもんじゃないさ。
  けど――誰もが壊れたままじゃ終わらない。それが大事なんだ。」

 セリナが後ろから歩み寄り、手を胸に当てた。
 「民の顔が変わりましたね。
  希望を抱く顔を、こんなに多く見るのは初めてです。」
 「希望は再生の一歩目だからな。」
 蓮は静かに微笑んだ。



 同じころ、王国アルゼリアの王城では、報告が次々に届いていた。
 「報告! 東方の国境地帯で“再生連合”を名乗る勢力が蜂起! 各村落が自発的に参加しています!」
 「何だと? 反乱ではないのか?」
 「いえ、武力ではなく“再建”を旗印にしていると……!」

 玉座の上で、王は重い息を吐いた。
 「……篠原蓮。やはり生きていたか。」
 隣に控える宰相ヴァルガが口を尖らせる。
 「陛下、放置は危険です。やつの思想は人々の心を奪う。
  力で潰すべきかと。」
 「だが、無闇に攻めれば民の反感を買う。」
 「それでもです。奴の“再生”の理は、この国の支配構造を崩壊させる。」

 王はしばし黙考し、低く呟いた。
 「……神の教えに背く異端者か。
  ならば、聖教会に動いてもらおう。」



 一方その頃、再生連合の拠点では、新たな都市計画が進められていた。
 蓮は中央の工房で、再生炉の調整をしていた。
 魔力を循環させる管が唸り、青い光が脈打つ。
 リアが覗き込む。
 「なぁ、あんたこれ、なんて呼ぶんだ?」
 「《マナリサイクラー》。廃棄された魔導炉の残骸を再構成したんだ。」
 「……名前そのまんまだな。」
 「わかりやすいだろ?」
 リアは苦笑する。

 セリナが図面を手に入ってくる。
 「南の集落にも送電を。これで、廃都の外にも光が届きます。」
 「これで“再生都市”が本当の意味で広がるな。」
 蓮は頷き、外の空を見上げた。
 「壊れた街を直す。それだけのことが、こんなに難しいなんてな。」



 その夜、蓮たちは街の中央広場で集会を開いた。
 民の数は、もはや数千を超えている。
 中央の壇上で、蓮は声を上げた。

 「俺たちは戦うために集まったんじゃない。
  “直すため”にここにいる。
  奪い合う時代はもう終わりだ。
  この旗の下にいる限り――誰も、捨てられない。」

 静寂。
 そして次の瞬間、地鳴りのような歓声が広場を包んだ。
 「再生を!」「再生を!」と、無数の声が夜空に響く。

 リアが笑いながら言う。
 「まるで、あんたが王様みたいだな。」
 「王なんかじゃない。……ただの修理屋だよ。」
 「でも、あんたにしかできねぇ修理だ。」

 セリナが横で静かに微笑む。
 「彼らは、あなたを信じて光を見上げています。
  壊れた世界を、あなたの力で繋ぎ止めているんです。」
 蓮は一瞬、遠い空を見た。
 (……繋ぎ止める、か。
  でも、繋ぐだけじゃ終わらない。
  本当に“再生”するためには、もう一度壊す覚悟も要る。)



 集会が終わり、夜風の中を歩く蓮の前に、一人の少年が駆け寄ってきた。
 「レン様! 村の水車が止まったんです! 助けてください!」
 蓮は微笑んで頷いた。
 「案内してくれ。」
 リアが後ろで笑う。
 「まったく、王様ってより、修理屋の親父だな。」
 「俺の原点はそこだからな。」

 夜の街を駆け抜ける足音が響く。
 廃墟の街が、生きている――それだけで、蓮の胸は温かくなった。



 翌朝。
 再生連合の旗は、メルディナだけでなく、東の荒野、西の鉱山、北の森へと掲げられ始めていた。
 旅の商人たちがその旗を見て言う。
 「あの旗のあるところでは、盗賊も魔物も手を出さねぇらしい。」
 「“再生者”の加護があるって噂だ。」

 その噂はやがて王国中に広まり、遠く他国にも届いた。
 だが同時に、それは“異端”としての注目も集めていく。

 メルディナの塔の上で、セリナが報告書を手にした。
 「王国軍が動き出しました。
  教会と合同で“異端討伐軍”を組織するそうです。」
 蓮は息を吐いた。
 「来たか……予想より早いな。」
 リアが肩を鳴らす。
 「だったら、受けて立つだけだ。
  今度は、壊すんじゃなく“守る”ための戦いだろ?」
 「そうだ。
  壊して終わりじゃない――再生するために、立ち上がる。」

 蓮は再生の旗を見上げた。
 その銀の輪が、昇る太陽を受けて眩しく輝いた。
 それはまるで、壊れた世界の心臓が再び脈動を始めたかのようだった。



 どこか遠く、闇の玉座でルディアスがその光景を見ていた。
 「再生の旗か……。
  人間も、まだ滅びきってはいないらしい。」
 彼の唇がわずかに笑みを浮かべる。
 「いいだろう。ならば次は――神々の理そのものを壊す番だ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

処理中です...