「銀河騎士隆盛記 零」オッサン銀河騎士は太古の地球に不時着し、縄文文明期の古代剣法を習得し、その剣、五次元の域に達する。

ジム・プリマス

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銀河騎士隆盛期 零 宙の章 晴天《せいてん》の霹靂《へきれき》

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晴天せいてんの霹靂《へきれき》


 それは正に晴天《せいてん》の霹靂《へきれき》の如《ごと》き出来事だった。 

 次元断層のおおよその規模は事前に、銀河辺境部を航行した銀河連邦軍の艦艇が記録した膨大なデーターを元に、銀河騎士団の本拠地、ジンウ寺院の中央部に鎮座している超巨大大規模量子頭脳「ゼノウス」(*1)が計算し予測した座標をもとにして。

 カンデンとしてはキンタやPE57Qを介してYWC2とも慎重に検討をし尽《つ》くした末に、予測された次元断層の座標より、数光年以上離れた座標から、次元断層の近傍まで慎重にジョートワープ(*2)を繰り返して、一時間程度の最後のショートワープに差し掛かかった最中に、それは突然、起こった。
 
 カンデンがその時、たまたま操縦席に陣取っていたのは、幸運と言えた。
 
 ワープ中にトランス・ペアレント・スチール(*3)製のキャノピーに映るものと言えば、恒星の光の線が放射状に流れてゆく景色がお決まりなので、そういう場合は船の管制を司《つかさど》るトロイドに任せておけば、それを監視する必要などないので、もっと気楽に構えているのが普通だ、

 だがカンデンは、その日に限って感じた、些細だが腑に落ちない、違和感を感じて、操縦席に身体を沈めていたのだった。


 そのカンデンの目の前で、その放射状の光の線が、突然、消え失せ、漆黒の闇に変わった。その刹那、カンデンは頬が冷たくなり、鳥肌が立った、頭で考えるよりも前に身体が反応していた。

 鳥肌がたったカンデンの耳に「ギャン・ズッ・ギュウー・ギー」という耳障りな音が響いてきた、操縦席の真ん中に鎮座《ちんざ》した管制トロイドYWC2が立てた電子音だが、それが警告を表していることをカンデンは理解した。

 その奇怪な電子音を耳にしたPE57Qと、すこし遅れて、慌ててトイレから飛び出て、まだベルトに手をかけたままのキンタの二人が、休憩室を兼ねた食堂から飛び込んできた、

 PE57Qは普段発しない「ピュー・ガ・キー」という音を立てた。

 YWC2と高速電子言語(*4)での情報交換のための応酬が二三秒、続いたところでカンデンが「何が起こっている?」と聞くとRE57Qは「空間振動が起こっている可能性が考えられると言っています。量子振動素子(*5)が異常感応し、銀河還流電磁波層(*6)の乱れがあると。」

「ワープアウトするべきか聞いてくれ。」カンデンがそう言うとYWC2とPE57Qは高速電子言語を交わし始めた五秒後。PE57Qは「それは得策ではないと。この時点で次元断層の中では、全然、別の次元空間に飛び出す可能性が考えられると言っています。」

 キンタは副操縦席に座って、眼前のモニターの画面を銀河還流電磁波層を三次元度で表示する、3Dグラッフィックに切り替えて、見入っている。そこには透明な水の入ったバケツに、絵具を解いた水を放り込んだ時に出来るような、幾重もの、濃淡のついた波の映像が映っていた。

*1ゼノウス
 銀河騎士長老会の本拠地、ジンウ寺院に配置された、高さ300メルトに達するタワー状の超大規模量子頭脳で、銀河に関する情報のすべてが収束される。

 この規模の量子頭脳は、使用目的に違いあるが、ファクトリー(銀河連邦公社)の本拠地のあるシルバー・シティの「ユグラシドル」と、元老院の巨大議会のあるアウル・シティの「オーディン」と、バサラバートの赤道上の銀河連邦軍の総司令部のある巨大基地タイタンの「ウラーノス」がある。

*2ショートワープ
 ここでは一光年未満の距離を移動するワープのことを指す。

*3トランス・ペアレント・スチール
 鉄の元素を特殊な結晶状に焼結したもので、強度が高く、光を通す性質があるため、星間航行船のキャノピーなどに使用される。

*4高速電子言語
 普通の音声を介した情報伝達よりも、大量のデーターの伝達のために、トロイド同士で交わされる高速言語。

*5量子振動素子
 空間の状態を測定するための、空間における量子の振動の振幅を計測する素子。

*6銀河還流電磁波層
 幾筋がある銀河の恒星流の近傍には、生命を保護する性質のある微細な電磁波の層があり、星間航行を行う場合の座標を把握するために、利用されている。
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