富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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ダーティ玻璃 Ⅴ : 失恋はウンコ味 7

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 「それでは、ケーキ入刀です! 二人の初めての共同作業……」

 司会の人が馬込と花咲里が立ち上がって二人でナイフを握っているのを紹介する。
 大勢の人がその姿を写真や動画に収めようと集まっていた。
 大きなウェディングケーキにナイフが入り、会場から拍手が湧く。

 「ではここで、お二人に誓いのキスを!」

 会場に歓声が沸き、大きな拍手。
 ハーは目を閉じて身体を細かに震わせている。
 ヤバいぞー!

 「もう何も口に入れるな! 危険だぞ!」

 竹流が丁度口に入れたパンがウンコになった、
 一瞬のことで竹流が呑み込んでしまった。

 「……」

 私たちのテーブルの料理が全部ウンコになった。
 ハーをぶん殴ろうとしていた亜紀ちゃんをみんなで必死で止める。
 私がハーの目を手で覆った。

 馬込と花咲里がケーキを各テーブルに配りに来る。
 私は必死でテーブルのものを真水に変えて行った。

 「料理は楽しんでもらえたか?」
 「う、うん」
 「お前ら大食いだから頑張ったぜ」
 「ありがとー」
 「あれ? テーブルがビショビショだな」
 「あ、ああ、胡蝶が酔っ払ってグラスを斃しちゃって」
 「……ご、ゴメンネ……」
 
 胡蝶が睨んで来る。

 「そうか、胡蝶、どんどん飲んでくれな」
 「あ、ああ、うん」
  
 馬込と花咲里がケーキを置いて行った。

 「磯良、絶対に喰うなよ」
 「ぜってぇ喰わねぇよ!」
 
 当然一瞬でウンコになった。
 後ろの方で、声が聞こえた。

 「美味しそうなチョコレートケーキだね」
 「え、いや、さっきは確か白いクリームの……」

 私が慌てて叫んだ。

 「ちょっとケーキが痛んでいるかもしれません! 食べないでくださーい!」

 会場がザワめいた。
 スタッフの人たちが慌てて走り回る。
 私は主賓のタカさんたちのテーブルに真っ先に駆け寄った。

 「茶色いぞ!」
 「異臭もする!」
 
 柳ちゃんや皇紀ちゃん、磯良や竹流たちがあちこちを回って説明していく。

 「みなさん、どうか口には入れないで下さい!」
 
 大騒ぎになった。
 早乙女さんが茶色くなった口を拭って泣きそうになっていた。
 食っちゃったかー。
 ウンコケーキ……
 私はタカさんを離れた場所に連れてって事情を話した。
 タカさんが鬼のような顔になる。

 会場でタカさんが「色が変わるケーキ」を私とハーで提供しようとしたことにしたと発表した。
 でも上手く行かなかったので、一応食べないで欲しいと。
 食べても害はないことも伝えてくれた。
 そうやってタカさんと私たちが責任を被り、謝罪した。
 説明したのがタカさんだったので、会場はすぐに鎮まってくれた。

 流石にもう限界だったので、私はハーを連れて会場を出た。
 ハーは悲しみと反省でうつむいて泣いていた。





 駐車場のハマーに乗った。
 披露宴会場は大変なことになったけど、私にはハーが大事だ。
 いつも乗っていた後ろのシートに二人で座った。

 「ハー、大丈夫?」
 「うん。ごめんなさい」
 「いいって。ねえ、この車、懐かしいよね」
 「……」
 
 私はハーを慰めるために、ハマーの思い出を話して行った。
 幾らでも話すことはあった。
 ハーも段々と笑顔になって、懐かしそうな顔になった。
 
 「タカさんがハマーで時々ドライブに連れてってくれたよね」
 「うん、最初は二子玉川だったね」
 「そうそう! ねえ、知ってる? なんでニコタマだったのか」
 「え?」
 「私たちが双子だからだよ! だからタカさんは最初のドライブにあそこに行ったんだよ!」
 「そうだったの!」

 ハーがやっと本当に笑った。
 亜紀ちゃんと皇紀ちゃんはよくタカさんとドライブに行っていた。
 私とハーは小さかったこともあったけど、フェラーリもベンツも二人乗りだったので、ドライブには連れて行ってもらえなかった。
 タカさんはそれを気にしていて、一人ずつ乗せてくれたりもしたが、やっぱり私たちは一緒がいいと、ハマーでドライブしてくれたのだ。
 二子玉川の河川敷だった。
 私とハーは嬉しくて、結構ヤンチャなこともした。
 周りの人に叱られたのだが、タカさんが庇ってくれた。
 私たちが悪かったのだけど、タカさんは味方してくれた。
 本当に嬉しかった。
 あれから時々、このハマーで三人でドライブにも行くようになった。
 最初にタヌ吉を見つけたのも、私たち三人だったっけ。
 ハーが家出して、院長先生の家にタカさんと迎えに行ったのも、このハマーだった。

 「あの時、ハーがウンコ塗れになっててさ!」
 「アハハハハ! ルーもウンコ付いたじゃん!」
 「お前の付き合いだー!」
 「ワハハハハハハハハハ!」

 ハーがやっと明るく笑った。

 「私たち、ずっと一緒だよ!」
 「うん、ありがとう、ルー!」




 暫くしてみんなが帰ってきた。

 「おい、大丈夫か?」

 タカさんが優しい顔でハーの頭を撫でた。
 
 「タカさん、ごめんなさい!」
 「いいって。何とかなったしな」
 「ほんとうにごめんなさい!」
 「あぶなかったけどなぁ。早乙女はちょっと喰ってた」

 みんなが笑った。
 早乙女さんだけじゃないけど、黙ってた。

 馬込と花咲里が来た。

 「ハー、気分は大丈夫か?」
 「うんごめんね、折角の披露宴に」
 「こっちこそだよ。お前ら、相当忙しいんだろう? 疲れてるところをわざわざ来てくれてありがとうな」
 
 馬込が優しい言葉を投げかけてくれた。
 ハーが笑って言った。
 
 「うん、ちょっとね。でも馬込と花咲里の結婚式だもん! 絶対に来るよ。それに素敵な結婚式と披露宴だった」
 「そうか、無理させて悪かったな」
 「ううん! 来られて良かったよ! 「親友」の結婚式だもん!」
 「そっか、ありがとう」
 「花咲里もおめでとう!」
 「ありがとう」
 「幸せになってね! あ、私たちが絶対にそうするから!」
 「ありがとう、ハー。ルーもね」
 
 ハーが明るく笑った。 
 馬込が差し出した手を、ハーと二人で握った。

 「これからも親友だよ!」
 「ああ」
 「じゃあ、またどっかの戦場で!」
 「そうだな」

 タカさんがハマーを出した。


 

 タカさんが笑って言った。

 「おい、花咲里がウンコになるかと思ったぜ」
 「しないよ!」
 「ハマーはウンコにしないでくれよな」
 「だからしないって!」

 みんなで笑った。
 もうハーは大丈夫だろう。
 やっと気持ちに整理がついたのが私には分かる。
 亜紀ちゃんが文句を言った。

 「あー、もっと食べたかったなー!」
 「おし、じゃあ久し振りに「銀河宮殿」にでも行くか!」
 「タカさん、最高!」
 「ワハハハハハハハ!」

 タカさんが早乙女さんにも連絡するように私に言った。
 ウンコ食わせちゃったもんなー。
 御堂さんにも連絡すると、絶対に来ると言った。

 あー、みんなには言ってないけど、ウンコ食べちゃってた人、ごめんなさいねー。
 しょうがない、ハーの付き合いじゃん。
 ちっちゃいやつだから言わなきゃバレないだろう。
 焼肉、大丈夫かなー。
 まあ、それも付き合いか。



 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 何とかハーも気持ちを切り替えることが出来たようだ。
 まあ、良かった。
 いつものことだが焼肉は相当喰ったし、みんな満足だろう。
 俺も御堂と話せた。
 そろそろお開きにするか。

 「磯良はまだ結婚するような人はないのか?」

 早乙女が磯良に聞いた。
 こいつはいつも余計なことを喋る。

 「あ、ああ。そうですね、みんなには言っとくか。一応早乙女さんと石神さんには話さなきゃって思ってたし」
 「あんだ?」
 「早乙女さん、それに石神さん、実は俺、胡蝶と少し前から付き合ってるんです」
 「!」
 「幼い頃からの付き合いで兄弟とか友だちのつもりだったんですけどね。どうも、その、まあ、そういうことで」
 「!」

 マッジィ!

 「そうだったのか! おめでとう、磯良、胡蝶さんも!」

 早乙女が暢気に喜んだ。
 仕方なく俺も言った。

 「そうなのか。おめでとう、磯良、胡蝶!」
 「「はい!」」

 「じゃあ、き、今日はここまで! 解散!」

 みんながニコヤカに席を立った。
 俺は恐る恐るゆっくりとルーを見た。

 「おい、ルー?」





 ルーが棒になっとるぅぅぅぅぅぅーーーー!
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