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詐欺の女
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ギャンブル好きでどうしようもない男と別れたのは良かったが、好美は途方に暮れていた。
「あー、働きたくねー」
実家がそこそこ金がある男だったので、離婚の慰謝料で8千万円をせしめた。
ギャンブルで家の金を使い込むのを私が責め立てると暴力を振るうようになったので、いい条件でこっちの主張が通った。
殴られた痕を自分で酷い状態にし、証拠の写真を撮ってから警察に届けた。
その代わり、養育費は無しだ。
数年は遊んで、あとは生活保護を貰おうと思っていた。
娘がいた。
雛美、今8歳。
好美は34歳。
元々養ってもらいたくて結婚したが、それが失敗だった。
真面目そうに見えたのに、陰でこそこそと競馬と競艇に夢中だったことが結婚後に分かった。
家には貯金も無かった。
収入は全部ギャンブルに消える。
生活費が底をつくこともあった。
数十回の喧嘩の上で、弁護士を雇って離婚した。
弁護士に400万円を支払わされた。
残りの7600万円で豪遊したら、半年で金が尽きた。
「あー、働きたくねー」
生活保護は難しそうだった。
健康な自分が働こうとしないのだから、しょうがない。
「水商売もだりぃなー」
楽で収入の高い仕事など無い。
でも、今更真面目に働きたくもない。
風俗はなんか嫌だ。
パチンコに通うようになり、ある日、近所で大きな白いネコを見た。
首に大きな青い宝石の首輪。
「あいつ、金持の家のネコかー?」
何度か見掛けるうちに、好美の中で思いがけないアイデアが浮かんだ。
白いネコを探し、後を付けた。
好美の予想以上の、とんでもない大きな邸宅にネコが入って行った。
「なんだよ、この家!」
1000坪くらいあるように見える。
4メートルの高い塀に囲まれているが、大きな門から中が見える。
その門がまた普通じゃなかった。
「おい、これプラチナなんじゃねぇの!」
宝石や貴金属は詳しい女だった。
最初は宝石店で働き、カモの旦那を捕まえた。
失敗だったが。
「まさか……でも、本当にプラチナに見えるぞ。もし本物なら、一体幾らに……」
数億では利かないだろう。
それに門から見える屋敷のでかいこと。
右にガレージが見えるが、高級車が何台も停まっている。
「なんだよ、この家は……」
とんでもない金持の家だと分かった。
「見てろよ、石神ぃ」
好美は大笑いして家に帰った。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「はーい!」
門のチャイムを押すと、インターホンが応答した。
娘の雛美の包帯が見えるようにカメラの前に動かす。
「どちら様ですかー?」
「武内と申します。ちょっとこちらの家の方とお話がありまして」
「どういう御用件でしょうか?」
「それは一度、直接お話ししたいと」
「そーですかー」
不審に思われたかもしれないが、門が開いた。
想像以上に広い邸宅と庭を見ながら、ゆっくりと玄関に向かった。
玄関も、銘木に違いない重厚な一枚板で、間違いなく大金持ちであることが分かった。
玄関が開かれ、長身のスタイルの良い若い女性が待っていた。
後ろであの白い大きなネコが駆け降りて来たが、私の顔を見てすぐに階段を上がって行った。
「どうぞ中へ」
若い女性に言われて玄関に入った。
1階の応接室に案内される。
やはり内装も金が掛かっている。
「長女の亜紀と言います」
「武内です」
ソファに案内された。
「ハー。紅茶を持って来て」
内線で誰かに話していた。
間もなく紅茶が運ばれ、私と娘の前に置かれた。
妹なのだろう。
よく似た美人だ。
私の顔をジッと見詰めて、そのまま戻った。
「それで、どういう御用件でしょうか?」
「あのお父様はいらっしゃいますか?」
「いいえ、今仕事で不在ですが」
「そうですか。困りました」
亜紀という女性は私を見ている。
「父は遅くなると思います。御用件は私が伺います」
「お父様はどこかの社長さん?」
「いいえ、医者をしていますけど」
「そうなの」
なるほど、道理で金持だ。
「そう。じゃあ改めて来ますが用件だけ。こちらで大きな白いネコを飼っていらっしゃいますよね?」
「ええ」
「そのネコに、先日娘が襲われまして。顔に酷い傷を付けられたんです」
「なんですって!」
亜紀の顔が変わった。
それはそうだろう。
「そのことで今日はお話をしに参りました。どう責任を……」
「てめぇ! 妖魔かぁ!」
「へ?」
亜紀が突然立ち上がり、雰囲気が変わった。
なんだ、この恐ろしさは。
「ロボが仕留めなかったんなら、大分低級の妖魔だな! お前、何しに来やがった!」
「あの、何を言ってるの?」
「そのガキもかぁ!」
「あなた! なんなの!」
さっきの妹らしい奴が降りて来た。
「亜紀ちゃん、違うよ。この人は妖魔じゃないよ」
「え?」
「でも、大分黒いよ?」
「悪人かぁー!」
何か分からなかったが、取り敢えず誤解は解けたようだ。
私は一気にまくし立てた。
「あなたね! 一体なんのつもりなの! うちの娘の大事な顔に傷を付けられたのよ!」
「あ?」
「冗談じゃないわ! きっと痕が残る! どうしてくれるのよ!」
「お前、何言ってんの?」
「警察にも届けてるわ! 私は絶対に許さないから!」
「あー」
亜紀とその妹が笑っていた。
「何がおかしいの!」
「なあ、あんた。証拠は?」
「写真があるわ!」
「見せてみろ」
「嫌よ!」
「どうしてだよ?」
「警察に出してるの! もう言い逃れ出来ないわよ!」
「へぇー!」
何かおかしい。
一つも動揺しないのはなぜ?
「分かった、それで要求は?」
「娘は一生治らない傷をつけられたわ!」
「だから幾ら欲しいんだよ?」
「じゅ、10億円!」
「ほう」
「絶対に貰うわ!」
「そうか」
二人がまた笑っていた。
「じゃあ、また夜に来い。8時過ぎならタカさんも戻ってる」
「8時ね!」
「じゃあな」
私は取り敢えず帰った。
なんだ、あの娘の自信ありげな態度は。
まさか、ヤクザでも連れて来るのか?
だったら、私も警察の人に同行してもらおう。
ヤクザで脅すなら、それで終わりだ。
一旦家に帰り、中野警察署へ行った。
昨日被害届は出しているので、事情を話すと同行を許諾してもらえた。
待ってろ石神。
「あー、働きたくねー」
実家がそこそこ金がある男だったので、離婚の慰謝料で8千万円をせしめた。
ギャンブルで家の金を使い込むのを私が責め立てると暴力を振るうようになったので、いい条件でこっちの主張が通った。
殴られた痕を自分で酷い状態にし、証拠の写真を撮ってから警察に届けた。
その代わり、養育費は無しだ。
数年は遊んで、あとは生活保護を貰おうと思っていた。
娘がいた。
雛美、今8歳。
好美は34歳。
元々養ってもらいたくて結婚したが、それが失敗だった。
真面目そうに見えたのに、陰でこそこそと競馬と競艇に夢中だったことが結婚後に分かった。
家には貯金も無かった。
収入は全部ギャンブルに消える。
生活費が底をつくこともあった。
数十回の喧嘩の上で、弁護士を雇って離婚した。
弁護士に400万円を支払わされた。
残りの7600万円で豪遊したら、半年で金が尽きた。
「あー、働きたくねー」
生活保護は難しそうだった。
健康な自分が働こうとしないのだから、しょうがない。
「水商売もだりぃなー」
楽で収入の高い仕事など無い。
でも、今更真面目に働きたくもない。
風俗はなんか嫌だ。
パチンコに通うようになり、ある日、近所で大きな白いネコを見た。
首に大きな青い宝石の首輪。
「あいつ、金持の家のネコかー?」
何度か見掛けるうちに、好美の中で思いがけないアイデアが浮かんだ。
白いネコを探し、後を付けた。
好美の予想以上の、とんでもない大きな邸宅にネコが入って行った。
「なんだよ、この家!」
1000坪くらいあるように見える。
4メートルの高い塀に囲まれているが、大きな門から中が見える。
その門がまた普通じゃなかった。
「おい、これプラチナなんじゃねぇの!」
宝石や貴金属は詳しい女だった。
最初は宝石店で働き、カモの旦那を捕まえた。
失敗だったが。
「まさか……でも、本当にプラチナに見えるぞ。もし本物なら、一体幾らに……」
数億では利かないだろう。
それに門から見える屋敷のでかいこと。
右にガレージが見えるが、高級車が何台も停まっている。
「なんだよ、この家は……」
とんでもない金持の家だと分かった。
「見てろよ、石神ぃ」
好美は大笑いして家に帰った。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「はーい!」
門のチャイムを押すと、インターホンが応答した。
娘の雛美の包帯が見えるようにカメラの前に動かす。
「どちら様ですかー?」
「武内と申します。ちょっとこちらの家の方とお話がありまして」
「どういう御用件でしょうか?」
「それは一度、直接お話ししたいと」
「そーですかー」
不審に思われたかもしれないが、門が開いた。
想像以上に広い邸宅と庭を見ながら、ゆっくりと玄関に向かった。
玄関も、銘木に違いない重厚な一枚板で、間違いなく大金持ちであることが分かった。
玄関が開かれ、長身のスタイルの良い若い女性が待っていた。
後ろであの白い大きなネコが駆け降りて来たが、私の顔を見てすぐに階段を上がって行った。
「どうぞ中へ」
若い女性に言われて玄関に入った。
1階の応接室に案内される。
やはり内装も金が掛かっている。
「長女の亜紀と言います」
「武内です」
ソファに案内された。
「ハー。紅茶を持って来て」
内線で誰かに話していた。
間もなく紅茶が運ばれ、私と娘の前に置かれた。
妹なのだろう。
よく似た美人だ。
私の顔をジッと見詰めて、そのまま戻った。
「それで、どういう御用件でしょうか?」
「あのお父様はいらっしゃいますか?」
「いいえ、今仕事で不在ですが」
「そうですか。困りました」
亜紀という女性は私を見ている。
「父は遅くなると思います。御用件は私が伺います」
「お父様はどこかの社長さん?」
「いいえ、医者をしていますけど」
「そうなの」
なるほど、道理で金持だ。
「そう。じゃあ改めて来ますが用件だけ。こちらで大きな白いネコを飼っていらっしゃいますよね?」
「ええ」
「そのネコに、先日娘が襲われまして。顔に酷い傷を付けられたんです」
「なんですって!」
亜紀の顔が変わった。
それはそうだろう。
「そのことで今日はお話をしに参りました。どう責任を……」
「てめぇ! 妖魔かぁ!」
「へ?」
亜紀が突然立ち上がり、雰囲気が変わった。
なんだ、この恐ろしさは。
「ロボが仕留めなかったんなら、大分低級の妖魔だな! お前、何しに来やがった!」
「あの、何を言ってるの?」
「そのガキもかぁ!」
「あなた! なんなの!」
さっきの妹らしい奴が降りて来た。
「亜紀ちゃん、違うよ。この人は妖魔じゃないよ」
「え?」
「でも、大分黒いよ?」
「悪人かぁー!」
何か分からなかったが、取り敢えず誤解は解けたようだ。
私は一気にまくし立てた。
「あなたね! 一体なんのつもりなの! うちの娘の大事な顔に傷を付けられたのよ!」
「あ?」
「冗談じゃないわ! きっと痕が残る! どうしてくれるのよ!」
「お前、何言ってんの?」
「警察にも届けてるわ! 私は絶対に許さないから!」
「あー」
亜紀とその妹が笑っていた。
「何がおかしいの!」
「なあ、あんた。証拠は?」
「写真があるわ!」
「見せてみろ」
「嫌よ!」
「どうしてだよ?」
「警察に出してるの! もう言い逃れ出来ないわよ!」
「へぇー!」
何かおかしい。
一つも動揺しないのはなぜ?
「分かった、それで要求は?」
「娘は一生治らない傷をつけられたわ!」
「だから幾ら欲しいんだよ?」
「じゅ、10億円!」
「ほう」
「絶対に貰うわ!」
「そうか」
二人がまた笑っていた。
「じゃあ、また夜に来い。8時過ぎならタカさんも戻ってる」
「8時ね!」
「じゃあな」
私は取り敢えず帰った。
なんだ、あの娘の自信ありげな態度は。
まさか、ヤクザでも連れて来るのか?
だったら、私も警察の人に同行してもらおう。
ヤクザで脅すなら、それで終わりだ。
一旦家に帰り、中野警察署へ行った。
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待ってろ石神。
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