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《ニルヴァーナ》との戦い Ⅳ
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ミユキさんたちがポルトガルへ行ってから、目覚ましい進展があった。
感染者の行動の分類を思い付き、そのパターンごとに感染者を集めた。
そのことにより、《ニルヴァーナ》の肉体への浸食の進行が分かり、さらに人体の特徴による経過の違いも分かった。
その人間の様々な固有の因子が次々と判明した。
例えばメラニン色素の薄い人間には感染の進行が早いことなどだ。
それによって、演繹的に《ニルヴァーナ》の特徴も少しずつ分かって行った。
細胞内へ侵入するエンドサイトーシスの構造も掴めそうだった。
また死亡した感染者の部位別に遺体を集めることも提案してきた。
感染者《ソリッド・バイオレンサー》は激しく暴れ回った後に動かなくなり、静かに死を迎える。
その臓器や肉体の部位ごとに状態と合わせて集めることで、また《ニルヴァーナ》の浸食の推移が分かって来た。
それらのことが、後の僕たちの研究に大いに役立って行った。
やはり、ミユキさんたちを派遣して良かったのだ。
僕が研究の進展がミユキさんたちのお陰で進んでいることを伝えると、ミユキさんたちは喜んだ。
「お陰でどんどん分かって来ましたよ!」
「そうですか! もっと頑張りますね!」
「いいえ、ちゃんと休んで下さい。防護服の稼働時間、結構伸びていますよ!」
「すいません、つい夢中になって」
「ダメです! 約束したじゃないですか!」
「そうでした。すいません」
そんな遣り取りがよくあった。
ミユキさんたちは、どんな細かいことも報告するように言われており、蓮花さんがいない時には僕が対応した。
だから僕も細かい進展もなるべくミユキさんたちに伝えるようにしていた。
ミユキさんたちはそれを毎回喜んでくれた。
そして画期的なことが起きた。
13日目に、ミユキさんから興味深い報告があった。
「先ほど、白人の少女を救出しましたのですが、隔離施設に送る途中でいなくなってしまって」
「なんです、ミユキ? どういうことですか?」
「あの、そのままなんです。移送の防護車両に乗せたのですが、施設に着くと姿が無くて。それが映像にも残っていないのです。一緒にいたデュールゲリエも見ていないと言っているんで困っているんです! でも、私は確かにその少女を防護車両に乗せたんです!」
蓮花さんが戸惑っていた。
ブランの方々は、どのようなことでも報告するように言われている。
僕はその時に思った。
あのミユキさんが見間違ることは絶対に無い。
しかし映像には残っていないし、少女の姿も消えている。
それは一体……
念のために僕たちもその時の映像を確認してみた。
しかし、ミユキさんが少女を防護車両に乗せる理象すらなかった。
状況は、完全にミユキさんの思い違いということになる。
蓮花さんも困っていた。
その時に、以前の同じような現象を思い出した。
「蓮花さん! もしかして《エイル》じゃないですか!」
「え!」
僕はミユキさんと直接話した。
「ミユキさん、その少女の特徴を教えてください!」
「はい、白いワンピース、いいえ、何か白い布で覆ったような服で、髪は金髪でゆるいウェーブがかかっていました。背中の下、腰までの長さです。そして瞳の色は……」
間違いない!
「蓮花さん! 久留守君を呼べますか!」
「すぐに手配します!」
「ミユキさん、他にはありますか! 何か言っていませんでしたか!」
「「ボイ」なんとかと。すみません、私は外国語が分からず」
「ボイ……」
同行のデュールゲリエが聞いていないので、ミユキさんの記憶だけだ。
すぐに《エイル》の言葉を理解しないと!
きっと重要なことを教えてくれているに違いないと僕は思った。
石神さんにもすぐに連絡した。
30分後、石神さんが久留守君連れて来た。
石神さんは常にやることが早い。
「久留守、《エイル》が「ボイ」なにかと言っていたそうだ。何とか知りたいんだ」
「分かりました」
久留守君が目を閉じて瞑想していた。
《エイル》に祈っているのだろう。
幼い久留守君だったが、その姿は神々しいものだった。
30分程祈って、久留守君が目を開けた。
額に大粒の汗が浮かんでいる。
「手書きの本……何かの植物を示しています。不思議な植物です。幾つもあります」
石神さんがしばらく考えていた。
「『ヴォイニッチ手稿』かぁ!」
そう叫んですぐに《ロータス》に石神さんが命じた。
《ロータス》が瞬時に画像を示して来る。
インターネット上に、ダウンロード出来るサイトがあったようだ。
僕も蓮花さんも状況が分からずにいる。
PDFの画像がディスプレイに投影された。
「石神様、これは?」
「『ヴォイニッチ手稿』と呼ばれているものだ。100年以上前に書かれた手書きの写本だ。未知の言語で書かれていて、まだ解読されていない」
「え、どういうことでしょうか?」
「分からん。でも《エイル》が示してくれたんだ。《ニルヴァーナ》のワクチンのヒントかもしれん!」
「そうなのですか!」
「すぐに《ロータス》に解読させろ!」
石神さんはそう言って、画像をプリントアウトさせた。
大きなデスクに全ページを並べて全員で観た。
不思議な文字で書かれ、何かの植物がたくさん描かれている。
石神さんはその場にいた全員に説明してくれた。
「地球上の植物ではないと言われている。植物以外にも図版はあるしな。何が書かれているのかはずっと謎のままだ」
「本当に不思議な植物が多いですね。でも、わたくし、どこかでこれを見た気がします」
「蓮花、本当か!」
「はい。どこでだかは思い出せないのですが」
「いや、待て、俺もこれを見たことがある気がするぞ」
石神さんと蓮花さんが考えていた。
「蓮花さんって、あまり出掛けませんよね?」
「なんですか、稔! わたくしだって結構あちこち……」
石神さんがその時叫んだ。
「「虎星」かぁ!」
「そ、そうでございます! わたくしが出掛けた一番遠くでございます!」
「行くぞ!」
「はい!」
二人が叫んで石神さんがすぐに特殊な端末を使った。
「すぐに来るぞ! えーと、蓮花とジェシカと稔と、通訳にデュールゲリエのルーとハー、ああ、ロボも呼べぇ!」
「はい!」
何がなんだか分からなかったが、ジェシカさんに促されて僕も準備した。
強化外骨格「朧」だ。
蓮花さんの指示で大きなトランクやコンテナボックスが運ばれる。
すぐに研究所の庭に出た。
「あれは!」
UFOだった!
聴いたことはあるけど、見るのは初めてだ。
大きな釣鐘のような女性(?)が降りて来た。
「荷物はこれで全部ですか?」
なんか喋った!
「そうだ。何度か往復してもらうかもしれんぞ」
「まったく構いません。何でもおっしゃってくださいませ」
蓮花さんがなんか挨拶していた。
二人共親しそうだ。
ロボさんも来て、すぐに出発した。
誰か、説明して下さい。
感染者の行動の分類を思い付き、そのパターンごとに感染者を集めた。
そのことにより、《ニルヴァーナ》の肉体への浸食の進行が分かり、さらに人体の特徴による経過の違いも分かった。
その人間の様々な固有の因子が次々と判明した。
例えばメラニン色素の薄い人間には感染の進行が早いことなどだ。
それによって、演繹的に《ニルヴァーナ》の特徴も少しずつ分かって行った。
細胞内へ侵入するエンドサイトーシスの構造も掴めそうだった。
また死亡した感染者の部位別に遺体を集めることも提案してきた。
感染者《ソリッド・バイオレンサー》は激しく暴れ回った後に動かなくなり、静かに死を迎える。
その臓器や肉体の部位ごとに状態と合わせて集めることで、また《ニルヴァーナ》の浸食の推移が分かって来た。
それらのことが、後の僕たちの研究に大いに役立って行った。
やはり、ミユキさんたちを派遣して良かったのだ。
僕が研究の進展がミユキさんたちのお陰で進んでいることを伝えると、ミユキさんたちは喜んだ。
「お陰でどんどん分かって来ましたよ!」
「そうですか! もっと頑張りますね!」
「いいえ、ちゃんと休んで下さい。防護服の稼働時間、結構伸びていますよ!」
「すいません、つい夢中になって」
「ダメです! 約束したじゃないですか!」
「そうでした。すいません」
そんな遣り取りがよくあった。
ミユキさんたちは、どんな細かいことも報告するように言われており、蓮花さんがいない時には僕が対応した。
だから僕も細かい進展もなるべくミユキさんたちに伝えるようにしていた。
ミユキさんたちはそれを毎回喜んでくれた。
そして画期的なことが起きた。
13日目に、ミユキさんから興味深い報告があった。
「先ほど、白人の少女を救出しましたのですが、隔離施設に送る途中でいなくなってしまって」
「なんです、ミユキ? どういうことですか?」
「あの、そのままなんです。移送の防護車両に乗せたのですが、施設に着くと姿が無くて。それが映像にも残っていないのです。一緒にいたデュールゲリエも見ていないと言っているんで困っているんです! でも、私は確かにその少女を防護車両に乗せたんです!」
蓮花さんが戸惑っていた。
ブランの方々は、どのようなことでも報告するように言われている。
僕はその時に思った。
あのミユキさんが見間違ることは絶対に無い。
しかし映像には残っていないし、少女の姿も消えている。
それは一体……
念のために僕たちもその時の映像を確認してみた。
しかし、ミユキさんが少女を防護車両に乗せる理象すらなかった。
状況は、完全にミユキさんの思い違いということになる。
蓮花さんも困っていた。
その時に、以前の同じような現象を思い出した。
「蓮花さん! もしかして《エイル》じゃないですか!」
「え!」
僕はミユキさんと直接話した。
「ミユキさん、その少女の特徴を教えてください!」
「はい、白いワンピース、いいえ、何か白い布で覆ったような服で、髪は金髪でゆるいウェーブがかかっていました。背中の下、腰までの長さです。そして瞳の色は……」
間違いない!
「蓮花さん! 久留守君を呼べますか!」
「すぐに手配します!」
「ミユキさん、他にはありますか! 何か言っていませんでしたか!」
「「ボイ」なんとかと。すみません、私は外国語が分からず」
「ボイ……」
同行のデュールゲリエが聞いていないので、ミユキさんの記憶だけだ。
すぐに《エイル》の言葉を理解しないと!
きっと重要なことを教えてくれているに違いないと僕は思った。
石神さんにもすぐに連絡した。
30分後、石神さんが久留守君連れて来た。
石神さんは常にやることが早い。
「久留守、《エイル》が「ボイ」なにかと言っていたそうだ。何とか知りたいんだ」
「分かりました」
久留守君が目を閉じて瞑想していた。
《エイル》に祈っているのだろう。
幼い久留守君だったが、その姿は神々しいものだった。
30分程祈って、久留守君が目を開けた。
額に大粒の汗が浮かんでいる。
「手書きの本……何かの植物を示しています。不思議な植物です。幾つもあります」
石神さんがしばらく考えていた。
「『ヴォイニッチ手稿』かぁ!」
そう叫んですぐに《ロータス》に石神さんが命じた。
《ロータス》が瞬時に画像を示して来る。
インターネット上に、ダウンロード出来るサイトがあったようだ。
僕も蓮花さんも状況が分からずにいる。
PDFの画像がディスプレイに投影された。
「石神様、これは?」
「『ヴォイニッチ手稿』と呼ばれているものだ。100年以上前に書かれた手書きの写本だ。未知の言語で書かれていて、まだ解読されていない」
「え、どういうことでしょうか?」
「分からん。でも《エイル》が示してくれたんだ。《ニルヴァーナ》のワクチンのヒントかもしれん!」
「そうなのですか!」
「すぐに《ロータス》に解読させろ!」
石神さんはそう言って、画像をプリントアウトさせた。
大きなデスクに全ページを並べて全員で観た。
不思議な文字で書かれ、何かの植物がたくさん描かれている。
石神さんはその場にいた全員に説明してくれた。
「地球上の植物ではないと言われている。植物以外にも図版はあるしな。何が書かれているのかはずっと謎のままだ」
「本当に不思議な植物が多いですね。でも、わたくし、どこかでこれを見た気がします」
「蓮花、本当か!」
「はい。どこでだかは思い出せないのですが」
「いや、待て、俺もこれを見たことがある気がするぞ」
石神さんと蓮花さんが考えていた。
「蓮花さんって、あまり出掛けませんよね?」
「なんですか、稔! わたくしだって結構あちこち……」
石神さんがその時叫んだ。
「「虎星」かぁ!」
「そ、そうでございます! わたくしが出掛けた一番遠くでございます!」
「行くぞ!」
「はい!」
二人が叫んで石神さんがすぐに特殊な端末を使った。
「すぐに来るぞ! えーと、蓮花とジェシカと稔と、通訳にデュールゲリエのルーとハー、ああ、ロボも呼べぇ!」
「はい!」
何がなんだか分からなかったが、ジェシカさんに促されて僕も準備した。
強化外骨格「朧」だ。
蓮花さんの指示で大きなトランクやコンテナボックスが運ばれる。
すぐに研究所の庭に出た。
「あれは!」
UFOだった!
聴いたことはあるけど、見るのは初めてだ。
大きな釣鐘のような女性(?)が降りて来た。
「荷物はこれで全部ですか?」
なんか喋った!
「そうだ。何度か往復してもらうかもしれんぞ」
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