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ずっと俺を見ている
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翌朝、俺が目覚めると美咲が俺の顔を微笑んで見ていた。
「タカちゃんがいる」
「そりゃそうだ。俺たちは結婚したんだからな」
「うん! やっと見れたよ! 今日もタカちゃんは綺麗な紫色の瞳だね!」
また美咲が俺の瞳のことを紫色だと言った。
子供の頃にはよく言われていたが、俺や周囲の人間に否定されて段々言わなくなっていたのだが。
そうか、美咲にはずっと俺の瞳が紫色に見えていたのか。
もう否定するのはやめようと思った。
美咲の好きにさせてやりたい。
「今日も綺麗だね!」
「美咲こそな」
「エヘヘヘヘヘヘ」
美咲が笑い、俺も微笑んで抱き締めた。
美咲が俺の身体を精一杯に抱き締める。
夕べ俺が塗った保湿クリームのいい匂いがした。
「そろそろ起きようか」
「うん」
「いつから美咲は起きてたんだ?」
「わかんない。タカちゃんのねがおを見てた」
「そうか」
俺を起こそうとはせずに、じっとしていたのか。
美咲の優しさはそのままだ。
俺はベッドを出て美咲を洗面所に連れて行った。
顔を洗わせる。
でも上手く出来ずに胸元を濡らしてしまう。
俺が笑って美咲を屈ませ、優しく顔を洗ってやった。
美咲が喜んだ。
美咲のお母さんのメモを読んで、美咲の顔に化粧水とクリームを塗った。
髪の毛もブラシを掛ける。
髪を結う練習もしないと。
パジャマが濡れたので、部屋着に着替えさせた。
スウェットの上下だ。
それも手伝った。
椅子に座らせて靴下を履かせてやると、足を振って喜ぶ。
「タカちゃん、ありがとー」
「おう!」
美咲をリヴィングへ連れて行き、ソファに座らせてテレビを見せた。
一緒に座って、リモコンでチャンネルを変えて行った。
美咲が犬の映像で興味を示したので、そのチャンネルを見せる。
また画面を見ながら俺の顔を見てニコニコする。
その美咲の頭を優しく撫でながら立ち上がった。
「すぐに朝食を作るからな」
「うん!」
ご飯は炊いてある。
ほうれん草の味噌汁を作り、目玉焼きを焼く。
レタスを千切って軽く粉チーズを振り、イタリアン・ドレッシングを。
美咲はもうテレビは見ずに、ずっと俺の作業を見詰めていた。
「出来たぞ」
俺が呼ぶとニコニコしながら来る。
俺も微笑みながらも注意深く歩行を観察した。
運動機能に影響があれば、美咲を歩かせることも俺が付きそう必要があるからだ。
今のところは異常は無い。
美咲がテーブルに座る。
「「いただきます」」
二人で手を合わせて言った。
美咲が微笑む。
「一緒だね!」
「そうだな」
俺も笑った。
俺と一緒のものを食べるだけで美咲は喜んでくれている。
たったそれだけのことに。
美咲はいきなり記憶を喪って、職場で戸惑って怖がっていた。
でも俺の顔を見るだけで安心して笑顔になった。
俺と一緒の家に住み、傍にいるだけで嬉しがる美咲。
本当に愛おしい。
美咲はまだ食欲はある。
でも、医者からじきに食べられなくなると言われていた。
ガンの進行はそういうものだと。
何も受け付けなくなったら、入院を勧められていた。
今はまだ大丈夫だ。
でもその日は必ず来る……
俺は不安を消したい思いで美咲に聞いた。
次に美咲を喜ばせることがしたい。
「お昼は何が食べたい?」
言ってから、今食事をしていることを思い出して苦笑した。
俺は本当にダメだ。
でも美咲が嬉しそうに答えた。
「うーん、オムライス!」
「よし!」
「あ、グリーンピースはナシで」
「嫌いなのか?」
「う、うん」
「じゃあ、入れない」
「やったぁー!」
栄養バランスも何も関係ない。
美咲が好きなものを作ろう。
午前中は美咲と一緒に映画を観た。
スタジオ・ジブリの『天空の城ラピュタ』の続きだ。
一緒のソファに座り、美咲はまた俺にくっついて夢中で画面を観ていた。
時々俺の顔を見て、緊張するシーンで俺に抱き着いていた。
またラストまで観れずに、美咲が眠ってしまった。
ソファに横たえ、毛布を掛けた。
少し仕事をする。
家ではセキュリティの関係で本格的な実験データなどは扱えない。
論文を読んだり、アイデアを書き留めたりということが多い。
作業はスタンドアローンのPCだ。
データはその都度外部記憶装置で運ばなければならない。
でもこの方法で機密データもある程度は扱える。
それに研究部署にいるチームの人間への指示も必要だった。
それらは高度な暗号化のシステムのPCで遣り取りする。
ただ、研究データは一切回線では送らない。
そうやっていると、会社から連絡が来た。
橋田取締役常務からだった。
「兜坂君、そっちの様子はどうかな?」
「はい、御迷惑をお掛けしております」
橋田常務には美咲のことで大変にお世話になった。
美咲の面倒を看る俺に在宅勤務の許可と体制を整えてくれた方なのだ。
本来はアストラール社で高度な機密部門の俺が社外で仕事など出来るはずはなかったのだが、橋田常務の手配でそれが実現出来た。
「そちらの事情は承知しているが、少し話がしたい。時間を取れないかな?」
「はい、少しでしたら」
断るわけには行かない人だ。
俺は常務の指定する時間と場所を承諾した。
午後2時に会社の近くの喫茶店でだ。
それは、仕事ではない要件であることを意味していた。
「タカちゃんがいる」
「そりゃそうだ。俺たちは結婚したんだからな」
「うん! やっと見れたよ! 今日もタカちゃんは綺麗な紫色の瞳だね!」
また美咲が俺の瞳のことを紫色だと言った。
子供の頃にはよく言われていたが、俺や周囲の人間に否定されて段々言わなくなっていたのだが。
そうか、美咲にはずっと俺の瞳が紫色に見えていたのか。
もう否定するのはやめようと思った。
美咲の好きにさせてやりたい。
「今日も綺麗だね!」
「美咲こそな」
「エヘヘヘヘヘヘ」
美咲が笑い、俺も微笑んで抱き締めた。
美咲が俺の身体を精一杯に抱き締める。
夕べ俺が塗った保湿クリームのいい匂いがした。
「そろそろ起きようか」
「うん」
「いつから美咲は起きてたんだ?」
「わかんない。タカちゃんのねがおを見てた」
「そうか」
俺を起こそうとはせずに、じっとしていたのか。
美咲の優しさはそのままだ。
俺はベッドを出て美咲を洗面所に連れて行った。
顔を洗わせる。
でも上手く出来ずに胸元を濡らしてしまう。
俺が笑って美咲を屈ませ、優しく顔を洗ってやった。
美咲が喜んだ。
美咲のお母さんのメモを読んで、美咲の顔に化粧水とクリームを塗った。
髪の毛もブラシを掛ける。
髪を結う練習もしないと。
パジャマが濡れたので、部屋着に着替えさせた。
スウェットの上下だ。
それも手伝った。
椅子に座らせて靴下を履かせてやると、足を振って喜ぶ。
「タカちゃん、ありがとー」
「おう!」
美咲をリヴィングへ連れて行き、ソファに座らせてテレビを見せた。
一緒に座って、リモコンでチャンネルを変えて行った。
美咲が犬の映像で興味を示したので、そのチャンネルを見せる。
また画面を見ながら俺の顔を見てニコニコする。
その美咲の頭を優しく撫でながら立ち上がった。
「すぐに朝食を作るからな」
「うん!」
ご飯は炊いてある。
ほうれん草の味噌汁を作り、目玉焼きを焼く。
レタスを千切って軽く粉チーズを振り、イタリアン・ドレッシングを。
美咲はもうテレビは見ずに、ずっと俺の作業を見詰めていた。
「出来たぞ」
俺が呼ぶとニコニコしながら来る。
俺も微笑みながらも注意深く歩行を観察した。
運動機能に影響があれば、美咲を歩かせることも俺が付きそう必要があるからだ。
今のところは異常は無い。
美咲がテーブルに座る。
「「いただきます」」
二人で手を合わせて言った。
美咲が微笑む。
「一緒だね!」
「そうだな」
俺も笑った。
俺と一緒のものを食べるだけで美咲は喜んでくれている。
たったそれだけのことに。
美咲はいきなり記憶を喪って、職場で戸惑って怖がっていた。
でも俺の顔を見るだけで安心して笑顔になった。
俺と一緒の家に住み、傍にいるだけで嬉しがる美咲。
本当に愛おしい。
美咲はまだ食欲はある。
でも、医者からじきに食べられなくなると言われていた。
ガンの進行はそういうものだと。
何も受け付けなくなったら、入院を勧められていた。
今はまだ大丈夫だ。
でもその日は必ず来る……
俺は不安を消したい思いで美咲に聞いた。
次に美咲を喜ばせることがしたい。
「お昼は何が食べたい?」
言ってから、今食事をしていることを思い出して苦笑した。
俺は本当にダメだ。
でも美咲が嬉しそうに答えた。
「うーん、オムライス!」
「よし!」
「あ、グリーンピースはナシで」
「嫌いなのか?」
「う、うん」
「じゃあ、入れない」
「やったぁー!」
栄養バランスも何も関係ない。
美咲が好きなものを作ろう。
午前中は美咲と一緒に映画を観た。
スタジオ・ジブリの『天空の城ラピュタ』の続きだ。
一緒のソファに座り、美咲はまた俺にくっついて夢中で画面を観ていた。
時々俺の顔を見て、緊張するシーンで俺に抱き着いていた。
またラストまで観れずに、美咲が眠ってしまった。
ソファに横たえ、毛布を掛けた。
少し仕事をする。
家ではセキュリティの関係で本格的な実験データなどは扱えない。
論文を読んだり、アイデアを書き留めたりということが多い。
作業はスタンドアローンのPCだ。
データはその都度外部記憶装置で運ばなければならない。
でもこの方法で機密データもある程度は扱える。
それに研究部署にいるチームの人間への指示も必要だった。
それらは高度な暗号化のシステムのPCで遣り取りする。
ただ、研究データは一切回線では送らない。
そうやっていると、会社から連絡が来た。
橋田取締役常務からだった。
「兜坂君、そっちの様子はどうかな?」
「はい、御迷惑をお掛けしております」
橋田常務には美咲のことで大変にお世話になった。
美咲の面倒を看る俺に在宅勤務の許可と体制を整えてくれた方なのだ。
本来はアストラール社で高度な機密部門の俺が社外で仕事など出来るはずはなかったのだが、橋田常務の手配でそれが実現出来た。
「そちらの事情は承知しているが、少し話がしたい。時間を取れないかな?」
「はい、少しでしたら」
断るわけには行かない人だ。
俺は常務の指定する時間と場所を承諾した。
午後2時に会社の近くの喫茶店でだ。
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