図書と保健の秘密きち

梅のお酒

文字の大きさ
上 下
12 / 25

11 保健委員 (草餅)

しおりを挟む
副委員長となった私は委員長の先輩とともに保健室へと向かっていた。
委員長を務めるのは、金髪でカバンにたくさんのアクセサリーがついてて、香水の匂いがして。まとめるとギャルって感じの少女だった。これはおそらくクラスで騒がしい軍団に属していることだろう。
「私は立花くらら。委員会出られないときあるかもだけどよろしくねー」
え、さらっと耳を疑うようなことを言っていたような気がするが、空耳であることを願う。
「私は草餅蕾です。よろしくお願いします」
「もっちーはなんで保健委員やろうと思ったの?」
「じゃんけんに負けちゃって、、、」
「あーそれはお気の毒。そういえば副委員長選ぶ時もじゃんけんで負けてたよね。じゃんけん弱すぎだね」
最初はぐー、じゃんけんぽん
突然立花先輩はじゃんけんを始めた。
私はとっさにパーを出す。
立花先輩はチョキだった。
「ほんとに弱いね。そんな運がない君にこれを上げよう」
立花先輩は私にお守りのようなものを差し出す。
「これは?」
「これはなんか、ガチャガチャやったときに出てきたやつ」
そのお守りには交通安全と書いてある。
「どうも」
カバンにしまおうとしたが立花先輩はその手をつかんで止める。
「バッグに着けたほうがご利益あるかも」
「はー確かにそうですね」
先輩からそういわれてしまってはもうつけざる負えない。私はいそいそとカバンにお守りを取り付ける。
なぜカバンに交通安全?しかもピンクってめっちゃ目立つし。
「もっちー髪染めてるんだ、いいじゃんその色」
「どうも。立花先輩はわかりやすく真っ金金ですね」
「実はこれ6年前からずっとこの色なんだ」
「え、中学もですか。それ校則大丈夫ですか?」
「もちろんアウト。でも私ってメンタル最強だから」
「はへー」
そんなことをしてる間にいつの間にか保健室に到着していた。

保健室に入るとすでに白衣の男性が座って待っていた。
「やーやー立花さんと草餅さん、俺は葉加瀬巧。一年間よろしくね」
「やほ、はかせ。よろしくっす」
白衣の男性とギャル先輩はまるで友達のように軽い挨拶を交わす。そのまま先輩はベッドに寝転がり布団にもぐりこみ、仕事から離脱した。
マジか。この雰囲気ついていけるかな。
「よろしくお願いします葉加瀬先生。さっきはどうもありがとうございました」
「はかせでいいよ。戻ってきたらいなくなってたから驚いたよ。で、体調はもう大丈夫?」
「それじゃあはかせ、もうすっかりです」
「それはよかった。じゃあ早速本題から。委員長と副委員長にはほかに別の仕事もしてもらいます」
分かってはいたが改めて仕事といわれると気分が下がる。
「仕事って言ってもそんなに大変なものじゃないから安心して。保健室の前に相談箱があったでしょ。その相談の返答をこの三人で考えるだけ」
そういえば保健室の前に箱があったような気もする。
「どんな質問が入ってるんですか?」
「んー、ジャンル問わずいろいろ入ってる。生徒会の目安箱に入ってるような堅苦しいものよりも、やんわりした質問が多いかな?集団というより個人の頼み事みたいな感じ?」
「ほうほう」
なぜ保健委員がそんな活動をしているのかは謎だがわかったふりをしておく。
「いつもどれくらい入ってるんですか?」
「月に1件くらいかな。相談が入ってたら招集するからよろしく」
「了解しました」
「それじゃ、今日は解散。おつかれ」
「お疲れさまでした」
奥のベッドで先輩の手だけがお疲れと手を振っている。
先輩は帰らないのかな?ま、いっか。
保健室を出ると生徒がほとんど残ってようで、寂しげな廊下がが長々と続いている。どうやらそれなりに時間が経過していたようで、ほとんどの教室は空になっている。
外は薄くまだ明るい。15分後くらいには一気に暗くなっていると思う。これくらいの時間の学校は怖さは感じない。少し歩いても職員室くらいしか明かりがついていなかった。そしてちょうどいい暗がりが私の心を落ち着かせる。
この薄明かりの中ほとんど人のいない学校にいるのはなんだ特別感があって好きだ。
誰もいない廊下を歩き、昇降口まで行くと外のベンチで缶ジュースを飲んでいる生徒が楽しげにしゃべっている。どれも髪はぐしゃぐしゃで部活の後だろうか。

自転車にっまたがり校門を出るとどっと疲れを感じた。
保健室で心地よい風を感じながら寝ていたのが懐かしく感じる。あのまま寝ていれば保健委員にならなくて済んだかも?なんて無駄なことを考える。
今日はいろんな人と会った。近くの席の秋山さんと成瀬さん。保健室で会った倉田さん。委員長の立花先輩。養護教諭の葉加瀬先生。これからも関わっていく人はどれだけいるだろう。少なくとも一年立花先輩と葉加瀬先生とは嫌でも付き合いがあるだろうが、ほかの三人はどうだろう?
そんなことをボーっと考えて自転車をこいでいたらいつの間にか家についていた。
「ただいま」
「おかえり、学校どうだった」
「まあまあかな」
カバンを投げ出してすぐに横になるとだんだん意識が遠のいていった。
しおりを挟む

処理中です...