「服を脱いでください!」 服好きの月聖女はスキル【お着換え】を使い、魔王に汚染された世界でジョブチェンジしながら世界を浄化する

えくせる。

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1章

第20話 ブレザームーン爆誕(後編)

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 ピピー!

 ホイッスルが鳴り響いた。

「まずはあの成績トップを狙いなさい!」
「はい!」

 ジェンヌさんが指示を飛ばすとすぐさま左右の女の子が魔法を放った。
 炎と氷の魔法だ。

「わわっ!?」

 間一髪避けられたけど転んでしまった。
 ジェンヌさんは笑い、続けて観客席からも笑いが起こった。

「笑っていられるのも今のうちですわ」

 ベルちゃんが杖を構えた。

「さあ、わたくしがちょちょいと料理して差し上げますわ!」
「……フ。悪いけど、アナタたちふたりとは勝負以前の問題なの」
「……なにを仰っておりますの?」
「足元を見てみなさい」
「?」

 ベルちゃんとミーちゃんは足元を見る。
 すると……

「こ、これは! ネズミ捕りですわ!?」

 なんと、ふたりはネバネバのネズミ捕りシートを踏んづけてしまっていた。
 これでは身動きが取れない。

「トラップよ。あらかじめ仕込んでおいたの」
「こ、こんなのルール違反ですわ!」
「ルール? そんなもの、いくらでも捻じ曲げられるのよ」
「先生! あの方はルール違反をしておりますわ! わたくしたちの勝利を宣言してくださいまし!」
「…………」
「せ、先生?」

 先生は目をつむり、眉間にシワを寄せている。

「うちのおじいちゃんはこの学園の理事なの。つまり、アタシのやりたい放題ってわけ」
「なっ!?」
「大丈夫だよ、ベル」

 ミーちゃんがネズミ捕りに捕まったままベルちゃんの肩に手を置いた。

「クーちゃんが負けると思う? ひとりでだって余裕でしょ」
「……それはそうですけれど」

「……なに言ってるの?」

 ジェンヌはカチンときたようだった。

「この子がそんなに強いの? ……ふぅん、信頼してるってわけ。いいわ、それならアナタたちにこの子の情けない姿を見させてあげる」

 ジェンヌさんはわたしに向き直った。
 薄く笑っている。

「フフ……情けないというか、あられもない姿かもね……」
「え?」
「――バインド!」

 ガチーン!

「いっ!?」

 ジェンヌさんが手を突き出すと光の輪がわたしの両足を締め上げた。
 これでは動けない!

「今よ!」
「はい!」

 またしても左右のふたりが魔法を放った。
 炎と氷の魔法が襲いかかる!

「あっついしさっむい!」

 ――バシャーン!

 魔法をまともに受けて池にふっとばされてしまった。

「どう!? これがアタシたちの連携プレーよ!」

「いたた……あ、ここって……」

 水をすくう。
 それは水ではなく聖水だった。
 先生がケガをしたら飛び込むように言っていた聖水の池だ。

「……あれ? でも、聖水なのにネバネバしてる……」

 すくうとネチョーと手にくっついて落ちた。

「フフ、それは聖水じゃないわ。アタシが作った特製ネチョネチョ水よ!」
「と、特製ネチョネチョ水!」
「アンタもあの子たちと同じように囚われの身ってわけ! そこから逃げられないでしょ!?」
「……えっ!?」

 そう言われて立ち上がってみる。

「ああっ!?」

 ツルッ、とすべって尻もちを付いてしまった。
 たしかにこれでは逃げることができない!

「うぅ……もう体中ネチョネチョ……」
「フフ、体中がネチョネチョで気持ち悪いでしょう?」

 ジェンヌさんはよっぽどうれしいのか池のフチまでやってきていた。

「む~!」
「アハハ! 何回チャレンジしたってムダよ! 立てっこないわ!」
「むむむむ~!」
「だからバランスを保つなんてできっこないって……ちょっ!?」

 ガシ! とジェンヌさんの足首をつかんだ。

「はわ……はわわわわわ……!」
「な、なにするのよ! 離しなさいよ! 離しなさい!」
「で、でも! 離したらすべっちゃうよ!?」
「だからおとなしくすべって転びなさいって言ってるの! すべ……すべ……あ……あああああああっ!?」

 バッチャーン!

 ふたりして特製ネチョネチョ水の池に落っこちてしまった。

「アンタ、な、なんてことを……!」
「あ、ジェンヌさんスカートが!」
「っ!?」

 ジェンヌさんのスカートがネチョネチョになってめくれ上がり、白いふとももと真っ赤なパンツが見えてしまっていた。
 すごい、髪だけじゃなくてパンツまで真っ赤なんだ。

「こ、こ、こ、こ、このぉっ!」
「きゃっ!?」

 ジェンヌさんが襲いかかってきた。

「も、も、もっと恥ずかしい目にあわせてやるわ!」
「わっ!? ダ、ダメだよ! うまく押しのけられないんだからそんな風にされると……!」

 ブチブチブチ!

「ああっ!?」とジェンヌさん。
「ほら、ボタンちぎれちゃった……」

 ジェンヌさんのブラウスのボタンが弾け飛んで、前が開いて真っ赤なブラジャーがのぞいた。

「ア、ア、ア、ア、アンタねぇ……!」

 ジェンヌさんの瞳は恥ずかしさと怒りによって震えている。

「脱げ! アンタも脱ぎなさい! 脱げ! 脱げ!」
「わっ!?」

 ジェンヌさんに襲いかかられて、くんずほぐれつしながらお互いの服を脱がし合う。
 ネチョネチョのグチョグチョの中をゴロゴロして、もうなにがなにやらわからないけど、

「あ、あれ?」

 これって、けっこう楽しいかも!

 ――ピピー!

 ホイッスルが聞こえて顔を上げると、先生が困った顔でそばに立っていた。

「これは魔法学の模擬戦です! キャットファイトの授業ではありません!」

「……はい」

 わたしとジェンヌさんの制服ははだけて、二人とも半裸状態だ。
 先生に手伝ってもらってなんとか外へ出た。

「……アンタたち、あんなのを信頼してるってホントなの?」

 ジェンヌさんがミーちゃんたちに尋ねた。
 ジェンヌさんは観念して制服を脱いでしまい真っ赤な下着姿になっている。

「あ、あはは……」とミーちゃん。
「わたくしもお姉さまとぐっちょぐっちょのどろっどろになりたかったですわ!」
「あんたたちもアレと同類なのね……」

「む」

 よくわからないけど、ふたりがバカにされてることはわかった。

「…………メ、なんだからね」

「……え?」

「ふたりをバカにするのは、メッ、なんだからね!」

 立ち上がり、ムーンライトスティックを構える。

「――ムーンライト・プリズムパワー!」

 キラキラキラキラッ!

「……は?」とジェンヌさん。

 わたしの制服は消失し、代わりに金色の光が体を包み込んだ。
 光に包まれたわたしは新たなる姿へと変貌を遂げていく。
 スカートは短くなり、胸元には大きなリボンがあしらわれ、髪は金色に輝く。

 そして変身が終わると――
 
「――月の戦士、ブレザームーン! 月に代わっておしおきよ!」

 ビシッ! と決めポーズを決めた。

「……あ、あれ?」

「クーちゃん!? それどうしたの!?」

 ミーちゃんから声が飛んだ。

「わ、わからない! 勝手に『お着換え』して、しかもポーズまで……」
「今、ブレザームーンって言ってたよ!」
「……ブレザームーン?」 

 よくわからないけど、力がみなぎってくる……。

「……うん!」

 せっかくパワーアップしたのなら使わせてもらおう!

「な、なんなの……?」

 ジェンヌさんは戸惑っている。
 それはそうだ。
 わたしだって意味不明なんだ。

「フン! 服が変わったところでアナタの強さが変わったわけじゃない!」
「ムーンライトビーム!」

 ビッ!

「……は?」

 ジュウウウウウウウ……

 地面に底が確認できないほどの穴が空いた。 
 スティックの先からビームを発射したのだ。

「…………」
「ジェンヌさん!」
「は、はい!?」
「まだやる?」
「……う、うう」

 ジェンヌさんの瞳に涙がにじんで、

「ご、ごめんなさあああああああい!!!!!」

 わーん! と泣き出してしまった。
 まるで親にしかられた子どものようだ。 

「あ~あ、泣いちゃった」とミーちゃん。
「お姉さまのすごさがわかればそれでよろしいんですの」とベルちゃん。

「これで勝利、かな?」

 新しいお洋服も手に入ったし、もしかしたらいい模擬戦だったのかも♪

 ドドドドドドドド!

「……ん?」

 地鳴りのような音が響いて振り返ると、見学していたクラスの皆さんがいっせいに駆けてきていた。

「えっ!? えっ!?」

「ジェンヌを泣かしちゃうなんてすごーい!」
「ね、ね、握手して握手! よかったらわたしと交換日記しない!?」
「や~ん! こんなにかわいいのに強いなんてかっこい~!」

「あ、ちょ、わっ!?」

 ムギュウウウウウッ、と人波に押しつぶされる
 みんなベタベタ触ってきて、やわらかくていい匂いがする。

「ちょっとあなた方! 軽々しくお姉さまに触れるのはおよしなさい! ……ひょあっ!?」
「あなたもかわいい~! 大好きなお姉さんのためにジェンヌに立ち向かうなんて感激しちゃったな~!」
「や、やめ、触るのはおよしなさい! あっ!? い、今パンツを脱がそうとしたのは誰ですの!?」

「――クーちゃん」
「ミーちゃん!」

 ミーちゃんもやってきた。
 渾身の力で人をかき分け対面する。

「いやー、さっきの力、すごかったね」
「うん! よくわからないけどムーンライトスティックと相性がいいんだこのブレザームーン? のお洋服! 月に代わってなにかしている気分になれるの! ……って、あ、あれ?」

 シュウウウウウウウッ……

 髪と服は一瞬にして元に戻ってしまった。

「あれぇ?」
「まあ、あんなパワーアップはそうそうできないって」
「う~ん、やっぱりそうかなぁ……って、わっ!?」

 手を引っ張られてまた人並みの中へ。

「ギュッギュッ! ギュッギュッ! おしくらまんじゅうギュッギュッ!」
「う! ぐ、ぐるし!」
「だからお姉さまに軽々しく――ぐふっ!」
「ほら、あなたも!」
「え、あ、あたしはいいって!」とミーちゃん。
「ほら、早く早く!」
「ん~……わかった!」

 なぜかおしくらまんじゅうという競技が始まって、みんなで白熱のバトルを繰り広げた。
 途中からはしおらしくなったジェンヌさんも参加して、とっても楽しい時間を過ごすことができた。

 学校って楽しい!
 これってもうお友だちだよね。
 うん、たくさんのお友だちが出来ちゃった。

(つづく)
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