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Yuki

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三つ葉のクローバー

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「そっちいったぞ!」
「まかせろ!いくぜキーパー!」
 彼の名は新 堂 裕 樹しんどう ゆうき。高校のグラウンドで昼休み、サッカーをしているところだ。
「あいつ楽しそうだな。」
「だな、放課後の話忘れてんのかな。」
 校舎から裕樹を見ているのは彼の親友、風 見 春かざみ はると、前 川 有まえかわ あるだ。

 放課後、3人は旧校舎に姿を現す。
「よお、やっときたな。」
 柄の悪い男たちがニタニタしながら3人を待ち受ける。
「お礼参りって、いつの不良だよ。」
「ウルセェな、俺ぁお前ら3人が嫌いなんだよ。」

 数日前のこと、休日に3人で街を歩いているとひったくりが逃走する場面に出くわした。有が足をかけて転ばし、確保したひったくりはこのリーダー格の兄。常々、学校生活で目をつけていた3人にいよいよ堪忍袋の尾が切れたらしい。

「この人数でタコ殴りってわけかい?ひぃ、ふぅ、みぃ、12対3くらいか?」
「比で言うと4対1だな。」
「割合で言うと1人あたり25%だな。」
「理系トークいらないんだよ。」
「いつまでやってんだァ!!」
 不良集団が殴りかかってくる。
「俺は人殴るの嫌いなんだけど…」
「知るかコラァァ!!」
 そう言いつつ、春は男の顔面を蹴り上げ、その足を今度は回転軸にして不良の鳩尾に回し蹴りを入れる。
「うっ…」
 その数メートル後ろで裕樹は男をヘッドロックして落とす。
「あ、俺は平和主義なんで。」
 有は両手を挙げ、降参のポーズをする。
「テメェが主犯だろうがぁ!!」
 正面から殴りかかってくる男に対し、有はため息をつき、拳が飛んでくる瞬間に一歩下がり、右手で相手の手首を掴む。そして半身でかわし、鳩尾に肘打ちを入れ、下がった男の頭上にもう一度肘打ちを与える。

 数分のうちに全員を伸びさせた3人は旧校舎を後にする。
「あー疲れた。」
「有はそんだけ動けてなんで頭もいいんだよ。」
「裕樹も頭いいだろ。それ言っていいのは俺だけだ。」
「いやいや、2人と成績そう変わらねぇよ。」
「お、メールだ。」
「春、女か?」
「違うよ。」
 と言いつつ、携帯を見る春の顔は曇っていた。
「どうした?」
「なんでもない。」
 そうして3人はそれぞれの家に帰った。

 次の日、春の様子は明らかにおかしかった。
「どうした?」
「俺にかまうな。もう俺は2人と関わっていられないんだ。」
「何言ってんだよ。なんかあるなら言ってくれよ。」
「いいんだよ!」
 春は2人を押し退けて学校を出ていった。
「今日の学食、カツカレーなの忘れてんのかな。」
「俺の胃袋は、今日は親子丼だけどな。」
「有の胃袋事情なんて知るかよ…」

 学校を出た春は、空き倉庫に向かっていた。そこで待ち構えている男に会いに。
「やっと来たか。」
「俺の妹はどこにいる。」
「ここじゃない何処かだよ。それより、1人で来たんだろうな。」
「当たり前だ。有たちも置いてきたよ。」
「ククク。それはいい。今頃、瀕死になっているかな。」
「!?な、お前!!」
 春が殴りかかる。
「待てよ。いいのか?それで。」
「ぐっ…。卑怯だぞ…!」
「卑怯上等。さぁ、じゃあボコボコにさせてもらおうかな。」

「しぶといな、まだそんな目ができるなんて。」
「お前は…後で後悔させるからな。」
「面白いな。」
 踏みつけようと足を上げた時、空き倉庫のドアが開く。
「おーおー、好きにやってくれたな。」
「有、裕樹、なんでここに…」
「あ?カツカレーのお届けにあがりましたぁ。」
「お、お前ら…どうやってここに。」
「あぁ、あのなんかつるっぱげ集団のことか?おかげでカツカレーぶちまけちまったじゃねぇか。」
「嘘つけ。お前が食ってたやん。でも、おかげでこんなに傷作ってしまった。」
「流石に2人であの人数はキツかったな。まぁ、そいつらのおかげでここが分かったわけだけど。GPSっていい時代だな。」
「ちっ…」
 男はスマホを取り出す。
「やめろ…っ!妹に手ェ出すな!!」
「あぁ、もう携帯は使えないで。」
「圏外…?!なぜだ!」
「妨害電波を発生させる装置があるんだ。これも便利な世の中だよな。ここら辺、全部圏外だよ。」
「んじゃ、遠慮なくやらせてもらうぜ。明日の昼はカツなしのカレーしか食えないようにしてやるぜ。」
「ちょ、待て、明日の昼はかつど…」
 
「これでよし。あとは、妹を解放するメールをこいつの携帯から送ればいいか。」
「待て、場所だけ聞き出せ。」
「春…。ボコボコにしてやるか。」
「あぁ。」
 そして3人が向かった廃屋で春は大暴れをした。1人で5人を相手どり、怪我を感じさせない暴れ様だった。

「なんでそんな怪我してまで助けにきたんだ?」
「あ?春が困ってたからだろ。」
「あぁ、カツカレーも食わずに出ていくし。」
「裕樹はいい加減食うのをやめろ。」
「俺たちの関係は、そんな強いものじゃない。どうせ卒業したら会うかどうかもわからない。この学校で他につるむ相手がいないから話してるようなもんだしな。なんで行ったんやろな。」
「なんだそれ。」
「俺たちはカツカレーみたいなもんなんだよ。」
「裕樹、どんだけカツカレー擦るんだよ。」
「それぞれが単体で生きていけるけどセットで存在するとさらに強くなる、みたいな。でもこの組み合わせは世界に一つだけだ。その辺に咲いてるクローバーみたいなもんかな。いつか散り散りになるとしても、三つ一組で咲き誇るのさ。って良い言い方するか、単純に困った友達をほっとけなかったか、俺にはわからん。」
「裕樹、良いこと言うな。クローバーか。三つ葉のクローバーも風流を感じるな。この葉っぱは欠けさせたくない。それぞれが違う方向を向いてるけど、根っこが同じとこにあるっていいな。」
「なるほどな。違う方向いてても、離れそうなのを感じ取ってきてくれたんか。ありがとうな。」
「礼はいらないよ。次に俺らが困ったときに助けてくれ。」
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