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0章
森下葵①
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森下葵は7歳までを親に育てられて過ごした。孤児院に通うようになったのは7歳になってすぐのことだった。学校から帰った彼女の目に飛び込んだのは血まみれのリビング。バラバラになった母親の遺体と、日中は仕事で家にいないはずの父親の遺体。母親はバラバラなのに対し、包丁を握り腹部だけに外傷のある父親の遺体から、父親による心中として事件は幕を下ろした。
葵にとってトラウマになるはずの光景だったが、喪失感はなかった。男に狂い、娘にはコンビニで用意した食事を出す母親。得体の知れない仕事をし、家族に暴力的な父親。そんな家庭に生まれたことを不幸と思っていた葵にとっては開放感が強かった。孤児院での生活の方がはるかに幸せだったのだ。年上、年下の家族に囲まれ、大人に宿題を見てもらい、美味しいご飯に温かい布団がある。殺人が是というわけではないが、葵個人の成長を見れば結果的に幸せな道を歩んだ。
きっかけは彼女が12歳の時、交通事故に巻き込まれたことである。彼女が被害を受けた、加害したわけではない。目の前で信号無視をした飲酒運転の車に歩行者が轢かれた。周囲の大人が救急車を呼んだが間に合わず、彼女の前で歩行者は亡くなった。その瞬間に彼女は能力に目覚めた。その能力に自覚するのは少しあとだが、この能力によって彼女の人生は狂い、遥希の人生も狂う。
【この世界には能力に目覚める人種がいる。彼らの能力は歴史に影響を与えない。人に危害を与えない。ただ、神の用意した運命にだけ影響を与える。それは幸せのためでもなく不幸のためでもない。ほんの少しだけ運命を変える。
もしかしたらその、運命を変えるという行為すらも決められた運命なのかもしれないが。】
SSCコーポレーション 社長 齋 藤 蓁
葵にとってトラウマになるはずの光景だったが、喪失感はなかった。男に狂い、娘にはコンビニで用意した食事を出す母親。得体の知れない仕事をし、家族に暴力的な父親。そんな家庭に生まれたことを不幸と思っていた葵にとっては開放感が強かった。孤児院での生活の方がはるかに幸せだったのだ。年上、年下の家族に囲まれ、大人に宿題を見てもらい、美味しいご飯に温かい布団がある。殺人が是というわけではないが、葵個人の成長を見れば結果的に幸せな道を歩んだ。
きっかけは彼女が12歳の時、交通事故に巻き込まれたことである。彼女が被害を受けた、加害したわけではない。目の前で信号無視をした飲酒運転の車に歩行者が轢かれた。周囲の大人が救急車を呼んだが間に合わず、彼女の前で歩行者は亡くなった。その瞬間に彼女は能力に目覚めた。その能力に自覚するのは少しあとだが、この能力によって彼女の人生は狂い、遥希の人生も狂う。
【この世界には能力に目覚める人種がいる。彼らの能力は歴史に影響を与えない。人に危害を与えない。ただ、神の用意した運命にだけ影響を与える。それは幸せのためでもなく不幸のためでもない。ほんの少しだけ運命を変える。
もしかしたらその、運命を変えるという行為すらも決められた運命なのかもしれないが。】
SSCコーポレーション 社長 齋 藤 蓁
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