幸せの日記

Yuki

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2章 「小川 真季」

12月22日

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【12/22
 1日休んで登校した涼香はどこか少し変だった。日曜には解けかけた糸がまた絡まっていた。前と違ったのは、糸の端が見えなかったこと。何か知らないところでよくないことが起きている予感がする。今日の真季が言っていたことも気になる。】

 登校中に涼香と、一緒に登校している小学校からの友達の小 川 真 季おがわ まきを見つけた。
「涼香、真季、おはよう。」
「あ、遥希くん。」
 涼香は何事もなかったように振り返り、挨拶を返した。
「昨日は風邪で休んじゃって。一昨日いろいろ考えたからかな。」
「土日どっちもデートしたらしいじゃん。え?キスは?」
 真季が楽しそうに聞いてくる。
「なんでそんなこと知ってんだよ。まだキスとかはえーだろ。」
「え?じゃあそのうちするんだ。だってよ、よかったね涼香。」
 真季が涼香を肘でつつく。その涼香の嬉しさと戸惑いが混じった反応に少し違和感を感じたが、気づかなかったことにして話を進める。
「勝手な想像くり返すなよ。付き合うとも言ってないだろ。」
「え?!遥希フった女に、しかもその後1日休んだ少女に朝から爽やかな挨拶ぶち込んだの?!」
「いやいや言い方よ。じゃあどんな顔して合うんだよ。」
「大丈夫?涼香?ひどいこと言われなかった?」
「大丈夫だよ。真季。心配してくれてありがとうね。でも私、遥希くんとこれからも仲良くしていたいんだ。いつも通り挨拶できて嬉しかったよ。」
 今度の涼香は心からの笑顔に見えた。杞憂だったと自分に言い聞かせた。しかし、前よりも涼香に絡まっている糸が気になっていた。
「あれ?そういえば真季には土曜にデートしてくるねって言ったけど、土日どっちもって言ったっけ?」
「お、涼香賢くなったね。遥希の影響かな?」
 真季がニヤニヤしながらこっちを見てくる。
「俺のテストの点数知ってて言ってるのか。」
「テストだけが人の頭の良さじゃないでしょ。実は私も一昨日のファミレスにいたんだ。」
「「!?」」
「離れたところだったけどね。人が亡くなったのも見えたし、遥希がかっこよく解決するとこも見てたよ。」
「おま、なんで今頃言うんだよ。声かけろよ。」
「いつ言うのよ。2人が入ってきてすぐ人は亡くなるし、すぐ事情聴取になるし。」
「それもそうか。俺らの方が事情聴取長かったしな。」
「そういうこと。どんなイチャイチャ話するか見ようと思ったのになぁ。」
「…お前な。」
 他愛無い話をして登校し、いつものように授業を過ごす。
 昼休み、真季に呼ばれて2人で話をすることになった。
「ねぇ、気づいてる?涼香、何か遥希に隠してるよ。」
「やっぱりか…?」
「昨日何かあったんじゃないの?」
「でも涼香が俺に隠してることなんだ。俺が傷つけずに聞く方法なんてねえよ。」
「そうなんだよね。どうやって聞こうか。」
「あんまり人のこと暴くの好きじゃ無いんだが。」
「そんなこと言って、朝、涼香から聞いたけど、リスカのことにも気付いて、事件も解決して…。」
「どっちも正しいことしたなんて思ってねえよ。昨日、涼香が休んだことでどれだけ悩んだと思ってんだ。」
「涼香はメロメロなんだから壁ドンでもして聞きなさいよ。悩み聞いてやるって言ったんでしょ?」
「待て待て。それで言うタイプかよ。それに朝のあの感じなら、このことは多分言うつもりないと思うぞ。」
「じゃあ…。言ってくれるの待つしかないか。」
「お前だからいうが、絶対大人しく待ってろよ。何回おせっかいしてきたか。」
「それこそお節介よ。わかってます。」

【涼香が自分から話したいと思えるまで待つことにした。しかし気になるのはそれだけじゃない。ファミレスの事件で犯人だった店員は取調べ中に服毒自殺したニュースを見た。捕まるくらいなら、と自殺したのかもしれないが、自分にはそんな気がしない。20日に、無数の鍵がある気がする。能力のヒントを何か見落としている気がする。】
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