幸せの日記

Yuki

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6章 「ハッピーバースデー」

1月6日

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【1/6
 最悪な目覚めだった。本当なら大切なはずの1日だったのに。】

 不思議な夢を見ていた。一体あの3人組がなんなのか。夢で見るにはリアルだったが、3人のうちの1人も知らない。目覚ましはまだ鳴っていない。あまり気が乗らない課外授業のために起床するまでにはまだ時間がある。しかし、ドアを激しく叩くその音でぼやけた頭が起こされる。
「遥希!起きて!萌だよ!」
 異常事態なのは雰囲気で伝わるが、早朝ということもあって頭も重い。仕方なく寝起きの顔で寝巻きでドアを開ける。
「は、遥希!きて!葵が…」
 その一言で目が覚める。まだ起きていない脳に対して意識が研ぎ澄まされていく。そのギャップにふらつきながら萌と一緒に葵の部屋へ向かう。そこには千穂もいた。
「あ…遥希。その…葵と萌と、遊びに行く約束してたの。その,遠出だから早朝に集合にして。それで,あの葵が来ないから部屋に来てみると…誰もいなくて。」
 葵は時間に厳しいタイプだ。ドタキャンをするようなこともない。まして,ドタキャンして早朝から家にいない用事も考えにくい。何かあったと考える方が自然だ。胸騒ぎがする。
「葵の部屋から無くなっているものとかないのか。」
「荒らされた形跡とかもないわ。それに,財布も通学カバンもなんでも残ってるの。あ…」
「どうした?」
「通学カバンはあるけど……。制服を見てない気がする。」
 千穂と萌が葵の部屋に制服を探しに行く。しかし妙だ。財布も通学カバンも持たずに制服を着てこの早朝からどこへ行ったのだろうか。葵たちの学校は課外授業がない学校だ。学校に行く用事もそうは無い。
「やっぱり制服がない!制服だけ着て出たのかな。」
 電話も試してみるが出ない。
「となれば…。学校に行ってみるしかないな。!!?」
 折り返しの電話がかかってくる。葵のスマホからだ。
「もしもし…」
『髙野 遥希くんだね。』
 電話の相手は男だった。まだ覚醒しきってない脳みそをフル回転させる。異常事態に早朝から見舞われ、思考が追いつかない。
「誰だお前…。なんで葵のスマホ持ってんだ。葵はどこに…」
『質問が多いな。1人で彩綾高校まで来い。』
 相手が遮るように言う。葵が通う高校だ。
「わかった。1人で行く。葵に指一本でも触れてみろ。俺がお前を…」
『強気でいいのか。森下葵の命を握っているのはこっちだ。大人しくこい。通報するのも無しだ。』
 そう言うと電話の相手は一方的に切った。
「クソ!!」
 スマホを投げつけそうになるのを堪え、千穂と萌に概要を説明する。
「とにかく1人で行ってくる。SCCが絡んでいるかも何もわからない。とにかく、30分後に何かしら連絡を入れる。その連絡がなかったら警察に通報してくれ。」
「わ、わかった…。」

 千穂と萌を残して自転車で彩綾高校へ向かう。必死で思考を落ち着かせるが頭にのぼった血がそれを邪魔する。急勾配の坂を登るうち、酸素も不足して思考がまとまらなくなっていく。
 正門に着くと、正面玄関の辺りに葵の姿があった。両手が後ろにあり、体に隠れて見えない。拘束されているのだろうか。警戒はしながらも、葵に向かってまっすぐ駆けていく。まだ暗い早朝の学校の玄関から男が現れる。
「さあ、そこで止まるんだ。」
 右手側が葵で隠れる位置に男は立つ。右手に刃物か銃か持って葵の背中に突きつけているのだろうか。葵まで十数メートル手前で立ち止まる。そこで男の顔をはっきり見る。何か思い出しそうになり、頭に痛みを感じる。
「うっ…なんだ今の。この男…どこかで会った…?」
「へぇ。俺の顔を知っているのか?やはり、もっと早く行動に移しておくべきだったか。」
「何を言ってやがる!早く葵を離せ!」
「ダメだ。君には今日一日、俺の側にいてもらう。今日が終わるまで、森下葵は解放できない。」
「な…なんでそんなこと…」
「今日が何の日かわかってないのか?さあ、両手を上げて近づけ。」
「なんなんだ…言う通りにすれば葵は解放するんだな。」
「ああ。今日が終わればな。」
 後ろ手に隠したスマホで千穂にメッセージを送る。すぐにスマホを隠し、両手を上げ、男の元に近づく。男の後ろから別の黒スーツの男が出てきて拘束される。
「じゃあ、行こうか。」
 
 車に乗せられ、どこかのビルに葵と一緒に拘束されたまま入れられる。
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