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エピローグ
「ギルベルトがいないですって?どういうことよ?部屋が破壊された?冗談言わないでくれる?」
ーーーー本当なら探しなさいよ!このグズが!
ヒステリックに叫ぶのは王太子の想いびとで、侯爵家の令嬢だと聞いたが、見る影も無いと侍女はこっそり思う。
東の王太子宮の広間に学友を集めると言っていたが、何をするつもりなのか。
ヒソヒソと囁きを交わす侍女達から聞けば、婚約破棄を宣言するのだとか。
ーーーー王太子殿下って何方の令嬢と婚約していらしたの?
ーーーー知らないわ。婚約者がいたなんて。
何にせよ、下っ端の自分達の仕事をするだけだ。
未だに金切り声を上げ続けているシシリアを、冷めた目で見て、侍女達は仕事に戻った。
#####
ギルベルトが転移すると、なんとも長閑な風景が広がっていた。
東屋でお茶を飲んでいる美丈夫と金髪も眩しい美女。
ギルベルトの記憶が間違いで無ければ、あれは、魔王とその后の光の大精霊だ。
そして、リカルドとーーーエルディアーナだ。
リカルド、何だか小さくなってないか?
何故少年の姿なんだ。
確か見掛けは自分と変わらないはずだったが。
手元のクッキーを食べさせて貰ってご満悦だな、おい。
何よりも、魔王が浄化されている!?
何が起こったのかはエルディアーナに聞くとして、ギルベルトは東屋に足を進める。
スッと一度足を止める。
数えて1、2、3。エルディアーナがギルベルトに気が付く。
ーーーーああ、この笑顔が可愛いんだ。
ホッとして、安心して、花の笑顔が満開になる。
エルディアーナは魔王達に許しを乞うと、ギルベルトに向かって走って来る。
体調は良いようで、安心した。
魔力過多も落ち着いている。光の大精霊の力を感じるので、后が抑えてくれているようだ。
「ーーーーギル!」
少し涙声のエルディアーナを、両手を広げて迎える。
軽い衝撃と共に飛び込んで来た、愛しい存在をそのまま抱きしめた。
「心配掛けたな、もう大丈夫だ。遅くなって済まない」
チラっとリカルドを見て牽制する事も忘れない。
絶対にアイツは惚れただろうから。
渡さないけどな。
涙ぐんでいる瞳に口付けて、頬に、可愛い鼻先に、そして少し顔を離してから、抵抗が無いのをいい事に、唇にもーーーー。
と、動いた所で邪魔が入る。
「ーーーーエル!今度はチェスをしよう?」
それから平坦な声で、やぁギルベルト、久しぶり、なんて言いながら、リカルドがエルディアーナの腰に抱きつく。
「まぁ、お知り合いなの?」
「まぁ、な。人間で言えば親戚、かな?なぁ、リカルド。で、淑女の腰に抱きつくもんじゃ無いだろう?紳士なら、な」
「ーーーーギル、まだ小さな子供じゃないの。そんなに怒らなくても」
「エル、コイツはーーーー」
小さな子供じゃないぞ、と言おうとしてリカルドの大声に遮られる。
「あー!!エル、ギルベルトの精霊界での渾名、知ってるか?あのなーーいッ」
待て、まて!!何をどのあだ名を言うつもりだ?
今度はギルベルトが、リカルドの足を踏んで遮る。
暫しお互いに睨み合うが、そろそろエルディアーナを連れて帰らないと、テオバルドが心配するだろう。これ以上待たせると地上に魔王を爆誕させてしまう。
「エル、そろそろ帰らないと、テオバルドが心配している。母君も気が気じゃないだろうから、早く帰って安心させてやれ」
ギルベルトはエルディアーナを、腕に腰を掛けさせる様に抱き上げると、自らの精霊魂を取り出す。
色々思う事もあったのか、エルディアーナが心配そうに見てくるが、敢えて知らない振りをして、胸に押し込む。
プラチナブロンドの髪にアメジストの瞳が美しく現れる。
「良いんだ。もう離れないから」
芝を踏む音がして、振り向けば、魔王と光の大精霊が歩いて来る。
「もう帰ってしまうの?エルちゃんならばいつでも歓迎するからまたいらっしゃいな」
「そうだな、私も、リカルドも其方には世話になった。改めて礼をしたい」
一応ではあるが、解決を見せたのだ。
ギルベルトはそれなら、と、エルディアーナに掛けられている冤罪を晴らすのに、2人の魔界人の引き渡しを依頼する。
「チビ達は全員いるな?」
「忘れていたら、後で私が送るから心配しないで。エルちゃんのお屋敷で良いのよね?」
他にも二、三の取り決めをすると、ギルベルトは人間界に向けて転移を掛けた。
公爵邸に戻れば大騒ぎだったが、テオバルドには精霊伝言を送ったし、エルディアーナも疲れている。
全ては明日、と言うことにして休む事になったのだがーーーーー。
エルディアーナの入浴中。
勿論ひと悶着あって、青年ギルベルトは部屋で待機中だ。
髪を乾かす役目は譲らなかったが。
ギルベルトを苛立たせているのは別の存在だ。
「どうしてお前がここに居る、リカルド。それからお前、いつから僕キャラになったんだ?」
金髪ネズミが、エルディアーナのスカートにしがみついていた。
「さぁ?ただ、僕の精霊魂でも良いよなって思っただけだぞ」
「今すぐ魔界に帰れ!」
そこにタイミングが良いのか悪いのか、エルディアーナが浴室から出てきた。
「あ、エルディアーナ!僕もここにいてもいいか?母上には許可取ったぞ!」
おい、腰に抱きつくな!離れろ。
エルも簡単に許可を出すな!
一緒に寝るって許す訳無いだろうが。
騙されるな、そいつは少年でもネズミでもないぞ!
結局ネズミの姿で、寝台ーーーーそこは人形だったギルベルトが寝ていた場所にリカルドが納まって寝ている。
「ーーーーギル、起きてる?」
少し拗ねて姿を消していたギルベルトは、心細い声に姿を表した。
「どうした、眠れないのか?」
手を差し出せば、素直にその手を取る。
そのまま引き寄せても、警戒されないのは信頼されているのだと喜ぶべきか、エルディアーナの中では、まだ男では無い、のを悲しむべきか。
緩く首を振ると、はにかんで小さく「ありがとう」と言った。
少しだけ不安だったとも。
ギルがシシリアの所から帰って来なかったらどうしよう、と。
「信じていたけど、でも、怖かったの。迎えに来てくれないかもって。でもギルは来てくれた。それが嬉しくて」
ふふふって可愛いな、エルディアーナは。
と思ったら、身体が勝手に動いた。
細い腰を抱いて、引き寄せて、キスをした。
目を見開いて驚くエルも可愛い。
そう、柔らかい唇を堪能した瞬間、ポフンっと聞いた覚えのある音がして、エルディアーナが巨大化した。
ーーーー違う、ギルベルトが小さくなったのだ。
「え、ちょっと待て、どういうことだ!?あのクソ母上!!」
#####
東の王太子宮に集められた学園の生徒達は皆一様に戸惑いの色を隠さない。
一体何をしようとしているのか。
慌ただしく行き来する官僚と、大臣達。
それに、エルディアーナ嬢の姿が無い。
父上の公爵閣下の事は、先程国王と共に執務室へ入ったのを見た生徒がいて、何か関係があるのだろうかと憶測が飛び交う。
各々の不安が最高潮に達した時、広間の大扉が開いて国王、公爵閣下、騎士団長、近衛師団、それと老婆が二人と、あれは、魔人?だろうか。
そして暫くの後、後方の扉から、シシリア嬢の怒鳴る声に、宥める数人の声。
勢いよく開いたその扉から、派手なドレスのシシリア嬢と王太子達。
この場に国王がいる事を知らされていなかったのか、驚いて口が開きっぱなしだ。
次いで公爵閣下の良く通る声がホールに響く。
「お待ちしておりました、王子殿下、シシリア嬢?そして、愉快な仲間たち、とでも申しましょうかね」
ーーーーさぁ、貴方達が待ち望んだ断罪のお時間ですよ。
#####
お読み頂きましてありがとうございます。
エルディアーナサイドをほぼすっ飛ばしたり、ギルベルトサイドも色々すっ飛ばしたダイジェスト版ですが、こんな感じのお話です。
ーーーー本当なら探しなさいよ!このグズが!
ヒステリックに叫ぶのは王太子の想いびとで、侯爵家の令嬢だと聞いたが、見る影も無いと侍女はこっそり思う。
東の王太子宮の広間に学友を集めると言っていたが、何をするつもりなのか。
ヒソヒソと囁きを交わす侍女達から聞けば、婚約破棄を宣言するのだとか。
ーーーー王太子殿下って何方の令嬢と婚約していらしたの?
ーーーー知らないわ。婚約者がいたなんて。
何にせよ、下っ端の自分達の仕事をするだけだ。
未だに金切り声を上げ続けているシシリアを、冷めた目で見て、侍女達は仕事に戻った。
#####
ギルベルトが転移すると、なんとも長閑な風景が広がっていた。
東屋でお茶を飲んでいる美丈夫と金髪も眩しい美女。
ギルベルトの記憶が間違いで無ければ、あれは、魔王とその后の光の大精霊だ。
そして、リカルドとーーーエルディアーナだ。
リカルド、何だか小さくなってないか?
何故少年の姿なんだ。
確か見掛けは自分と変わらないはずだったが。
手元のクッキーを食べさせて貰ってご満悦だな、おい。
何よりも、魔王が浄化されている!?
何が起こったのかはエルディアーナに聞くとして、ギルベルトは東屋に足を進める。
スッと一度足を止める。
数えて1、2、3。エルディアーナがギルベルトに気が付く。
ーーーーああ、この笑顔が可愛いんだ。
ホッとして、安心して、花の笑顔が満開になる。
エルディアーナは魔王達に許しを乞うと、ギルベルトに向かって走って来る。
体調は良いようで、安心した。
魔力過多も落ち着いている。光の大精霊の力を感じるので、后が抑えてくれているようだ。
「ーーーーギル!」
少し涙声のエルディアーナを、両手を広げて迎える。
軽い衝撃と共に飛び込んで来た、愛しい存在をそのまま抱きしめた。
「心配掛けたな、もう大丈夫だ。遅くなって済まない」
チラっとリカルドを見て牽制する事も忘れない。
絶対にアイツは惚れただろうから。
渡さないけどな。
涙ぐんでいる瞳に口付けて、頬に、可愛い鼻先に、そして少し顔を離してから、抵抗が無いのをいい事に、唇にもーーーー。
と、動いた所で邪魔が入る。
「ーーーーエル!今度はチェスをしよう?」
それから平坦な声で、やぁギルベルト、久しぶり、なんて言いながら、リカルドがエルディアーナの腰に抱きつく。
「まぁ、お知り合いなの?」
「まぁ、な。人間で言えば親戚、かな?なぁ、リカルド。で、淑女の腰に抱きつくもんじゃ無いだろう?紳士なら、な」
「ーーーーギル、まだ小さな子供じゃないの。そんなに怒らなくても」
「エル、コイツはーーーー」
小さな子供じゃないぞ、と言おうとしてリカルドの大声に遮られる。
「あー!!エル、ギルベルトの精霊界での渾名、知ってるか?あのなーーいッ」
待て、まて!!何をどのあだ名を言うつもりだ?
今度はギルベルトが、リカルドの足を踏んで遮る。
暫しお互いに睨み合うが、そろそろエルディアーナを連れて帰らないと、テオバルドが心配するだろう。これ以上待たせると地上に魔王を爆誕させてしまう。
「エル、そろそろ帰らないと、テオバルドが心配している。母君も気が気じゃないだろうから、早く帰って安心させてやれ」
ギルベルトはエルディアーナを、腕に腰を掛けさせる様に抱き上げると、自らの精霊魂を取り出す。
色々思う事もあったのか、エルディアーナが心配そうに見てくるが、敢えて知らない振りをして、胸に押し込む。
プラチナブロンドの髪にアメジストの瞳が美しく現れる。
「良いんだ。もう離れないから」
芝を踏む音がして、振り向けば、魔王と光の大精霊が歩いて来る。
「もう帰ってしまうの?エルちゃんならばいつでも歓迎するからまたいらっしゃいな」
「そうだな、私も、リカルドも其方には世話になった。改めて礼をしたい」
一応ではあるが、解決を見せたのだ。
ギルベルトはそれなら、と、エルディアーナに掛けられている冤罪を晴らすのに、2人の魔界人の引き渡しを依頼する。
「チビ達は全員いるな?」
「忘れていたら、後で私が送るから心配しないで。エルちゃんのお屋敷で良いのよね?」
他にも二、三の取り決めをすると、ギルベルトは人間界に向けて転移を掛けた。
公爵邸に戻れば大騒ぎだったが、テオバルドには精霊伝言を送ったし、エルディアーナも疲れている。
全ては明日、と言うことにして休む事になったのだがーーーーー。
エルディアーナの入浴中。
勿論ひと悶着あって、青年ギルベルトは部屋で待機中だ。
髪を乾かす役目は譲らなかったが。
ギルベルトを苛立たせているのは別の存在だ。
「どうしてお前がここに居る、リカルド。それからお前、いつから僕キャラになったんだ?」
金髪ネズミが、エルディアーナのスカートにしがみついていた。
「さぁ?ただ、僕の精霊魂でも良いよなって思っただけだぞ」
「今すぐ魔界に帰れ!」
そこにタイミングが良いのか悪いのか、エルディアーナが浴室から出てきた。
「あ、エルディアーナ!僕もここにいてもいいか?母上には許可取ったぞ!」
おい、腰に抱きつくな!離れろ。
エルも簡単に許可を出すな!
一緒に寝るって許す訳無いだろうが。
騙されるな、そいつは少年でもネズミでもないぞ!
結局ネズミの姿で、寝台ーーーーそこは人形だったギルベルトが寝ていた場所にリカルドが納まって寝ている。
「ーーーーギル、起きてる?」
少し拗ねて姿を消していたギルベルトは、心細い声に姿を表した。
「どうした、眠れないのか?」
手を差し出せば、素直にその手を取る。
そのまま引き寄せても、警戒されないのは信頼されているのだと喜ぶべきか、エルディアーナの中では、まだ男では無い、のを悲しむべきか。
緩く首を振ると、はにかんで小さく「ありがとう」と言った。
少しだけ不安だったとも。
ギルがシシリアの所から帰って来なかったらどうしよう、と。
「信じていたけど、でも、怖かったの。迎えに来てくれないかもって。でもギルは来てくれた。それが嬉しくて」
ふふふって可愛いな、エルディアーナは。
と思ったら、身体が勝手に動いた。
細い腰を抱いて、引き寄せて、キスをした。
目を見開いて驚くエルも可愛い。
そう、柔らかい唇を堪能した瞬間、ポフンっと聞いた覚えのある音がして、エルディアーナが巨大化した。
ーーーー違う、ギルベルトが小さくなったのだ。
「え、ちょっと待て、どういうことだ!?あのクソ母上!!」
#####
東の王太子宮に集められた学園の生徒達は皆一様に戸惑いの色を隠さない。
一体何をしようとしているのか。
慌ただしく行き来する官僚と、大臣達。
それに、エルディアーナ嬢の姿が無い。
父上の公爵閣下の事は、先程国王と共に執務室へ入ったのを見た生徒がいて、何か関係があるのだろうかと憶測が飛び交う。
各々の不安が最高潮に達した時、広間の大扉が開いて国王、公爵閣下、騎士団長、近衛師団、それと老婆が二人と、あれは、魔人?だろうか。
そして暫くの後、後方の扉から、シシリア嬢の怒鳴る声に、宥める数人の声。
勢いよく開いたその扉から、派手なドレスのシシリア嬢と王太子達。
この場に国王がいる事を知らされていなかったのか、驚いて口が開きっぱなしだ。
次いで公爵閣下の良く通る声がホールに響く。
「お待ちしておりました、王子殿下、シシリア嬢?そして、愉快な仲間たち、とでも申しましょうかね」
ーーーーさぁ、貴方達が待ち望んだ断罪のお時間ですよ。
#####
お読み頂きましてありがとうございます。
エルディアーナサイドをほぼすっ飛ばしたり、ギルベルトサイドも色々すっ飛ばしたダイジェスト版ですが、こんな感じのお話です。
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