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二章 ムーダン王国編
15 脳内の割合
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ムスリ宰相とは、ムーダンに入国する前から連絡を取っておいた方が良いだろうと、話を詰め始めた。
主にロウと、ディオンストムだ。
ラインハルトやシャーク殿下も発言に加わっているが、私は聞いているだけの状態だ。
一体どんな思考能力をしているのか、それらが早すぎて、噛み砕いて吟味する暇も無く、片耳を塞いで言葉が出ていかない様にするのがやっとです。
頭脳派への道程は遥か彼方ーーーー遠く険しいと、身に染みる。ああ、目にも優しくなかった。
話に参加しているラインハルトは、合間に私の口に焼き菓子を運んだり、お茶を飲ませてくれたりするんだけど、脳内回路が如何なっているのか、対の存在である筈の私には出来ないのは何故なのか。
他所事を考えていたのが悪かったのか、クリームがはみ出てしまった。
すかさず口の端に付いたクリームを形よい親指が拭う。
斜め上を見たら、そのままラインハルトが指に付いたクリームをペロッと舐めとった場面に出くわして、心臓が非ぬ方向に跳ねるかと思ったわ。
「心配しなくても、俺はフィアの事しか考えて無いぞ?」
耳元でこっそり囁かれて腰が砕けそうだ。
座っていて良かった!
今私、絶対に立てないと思う。
顔に熱が集まったのをごまかして、視線を上げれば、なんとも生温かい眼差しにぶつかる。
パチッとシャーク殿下と目が合えば、首を思いっきり横に振られ「私達は壺ですから、はい」などと、まだその設定を引き摺っているらしい。
「ところで、俺達が大きく二手に別れるって言うのはいいけど、どう分けるのさ?」
フロースはきちんと聞いていたらしく、麗しいかんばがいつになく真剣だ。
あれ、フロースは仲間だと思っていたのに。
「我は何方でも。武力の必要な方へ行った方が良かろう」
うん、伎芸は何となくそんな気がしてた。
「今回もカリンとチュウ吉先生は、私達の方へ来てもらいます。カリンは女体化してムーダン風の王宮侍女になって下さい」
それでカリンに、ムスリ宰相と連絡取ってもらうんだね!
久々の女の子バージョンちょっと楽しみだ。
ーーーーってアレ?
「ね、今回もって言う事はロウとディオンストムは同じチーム?」
「ええ。ですが、ラインハルトがフィア様の方に行きますし、ムスリ宰相と会うまでは皆と一緒ですから、心配はいりませんよ」
別れての行動は、ムスリ宰相と会ってからだったのか。
ロウ、ディオンストム、カリン、チュウ吉先生チームは、ムスリ宰相と無実の証明にムーダン王宮へ。
私とラインハルト、フロース、ポポちゃんにシャーク殿下。
伎芸は私のチームに入るそうだ。
王宮よりも、こちらの方が戦力が必要だろうと。
メルガルドは精霊王として動かねばならない案件の為、今回は単独行動に出るらしい。
モリヤは留守番で、連絡の取り次ぎを担当する。
心話でも話は出来るが、所謂伝言板の役目だ。
いつでも話せる状態とは限らないからね。
シャーク殿下はサジルと相対して、一刻も早く天秤を取り戻さなくてはならない。
本来ならば、無実の証明も自分がやるべきなのだと言っているが、ラインハルト達みたく、同時に存在出来る訳じゃないので仕方が無いだろう。
「無実の証明が出来たとしても、実際に王宮で戦うのは他でもない、シャーク殿下ですよ」
「どうか、貴方様にしか出来ない事を、なさいませ。ムーダンの王族として、遣り遂げるのでしょう?ーーーー各国にもその姿勢を見せつけなければ」
「ーーーーッ。はい、肝に命じて」
上手くまとまったなぁと関心するが、ペコリと頭を下げたシャーク殿下の懐から姫林檎がコロリと落ちた。
やっぱりちょっと締まらない人だ。
そう思っていたら、姫林檎が突然飛び上がって煙を出した。
あっという間に、浮かぶ影は大きくなり、長い髪の美女に変化する。
それをみたシャーク殿下が驚いた拍子に腰を抜かしていて、更には今にも瞳が零れそうだ。もしかしてアストレアの事、知らないとか!?
そんなシャーク殿下の事などお構いなしに、アストレアは叫んだ。
「ちょ、ちょっと待って!!姫様のチームに頭脳派がいないじゃないの!その案は却下よ!」
「ラインハルトがいるでしょうに。それにフロースも伎芸も、フィア様のフォローは慣れていますし、中々の策士ですよ」
あの、ロウ。私はーー?!
これでも結構頭を使っていると思うよ、うん。
「そうだけど、そうだけどね?!伎芸もフロースも姫様のフォローって言うよりも、油注いじゃうわよね?この男なんて、頭脳派?ナニソレ美味しいの?って位に7割が姫様の事しか頭に無いじゃないの!」
「アストレア、訂正しろ。7割じゃない」
冷気漂う圧は背後のラインハルトから出ている。
真夏には便利かも知れない。
ふと真冬には暖かい空気圧が出るのかしら。
「ウッーーーーじゃぁ八割?」
ラインハルトが静かに首を振った。
そうだよねぇ。流石に無いわー。でもアストレア、何で割合を上げたのかしらね。
「九割九分だ。何故7割、八割なんて数字が出てくる。理解に苦しむな」
ーーーーは!?ええ!?その数字、おかしくないでしょうかね?
理解出来ないのは貴方のその数字ですが。
「悪かったわよ••••でも、そんなので頭脳派って言えないじゃないの」
えと、どうして納得してしまうのですか、アストレアさん。
「ーーーーアストレア、どうでも良いが、シャークが目を開けて立ったまま気絶しているが。恐らくは、お前の所為で」
「エエエ!?ちょっと、どうでも良くないわよ!シャーク、シャークーーーー!しっかりしてーーーー」
この後、シャーク殿下を落ち着かせて事情を説明するのに、数時間を要して。
私は、明日中にムーダンに入れるだろうかちょっと不安になった。
#####
読んでいただきありがとうございました(*´꒳`*)
主にロウと、ディオンストムだ。
ラインハルトやシャーク殿下も発言に加わっているが、私は聞いているだけの状態だ。
一体どんな思考能力をしているのか、それらが早すぎて、噛み砕いて吟味する暇も無く、片耳を塞いで言葉が出ていかない様にするのがやっとです。
頭脳派への道程は遥か彼方ーーーー遠く険しいと、身に染みる。ああ、目にも優しくなかった。
話に参加しているラインハルトは、合間に私の口に焼き菓子を運んだり、お茶を飲ませてくれたりするんだけど、脳内回路が如何なっているのか、対の存在である筈の私には出来ないのは何故なのか。
他所事を考えていたのが悪かったのか、クリームがはみ出てしまった。
すかさず口の端に付いたクリームを形よい親指が拭う。
斜め上を見たら、そのままラインハルトが指に付いたクリームをペロッと舐めとった場面に出くわして、心臓が非ぬ方向に跳ねるかと思ったわ。
「心配しなくても、俺はフィアの事しか考えて無いぞ?」
耳元でこっそり囁かれて腰が砕けそうだ。
座っていて良かった!
今私、絶対に立てないと思う。
顔に熱が集まったのをごまかして、視線を上げれば、なんとも生温かい眼差しにぶつかる。
パチッとシャーク殿下と目が合えば、首を思いっきり横に振られ「私達は壺ですから、はい」などと、まだその設定を引き摺っているらしい。
「ところで、俺達が大きく二手に別れるって言うのはいいけど、どう分けるのさ?」
フロースはきちんと聞いていたらしく、麗しいかんばがいつになく真剣だ。
あれ、フロースは仲間だと思っていたのに。
「我は何方でも。武力の必要な方へ行った方が良かろう」
うん、伎芸は何となくそんな気がしてた。
「今回もカリンとチュウ吉先生は、私達の方へ来てもらいます。カリンは女体化してムーダン風の王宮侍女になって下さい」
それでカリンに、ムスリ宰相と連絡取ってもらうんだね!
久々の女の子バージョンちょっと楽しみだ。
ーーーーってアレ?
「ね、今回もって言う事はロウとディオンストムは同じチーム?」
「ええ。ですが、ラインハルトがフィア様の方に行きますし、ムスリ宰相と会うまでは皆と一緒ですから、心配はいりませんよ」
別れての行動は、ムスリ宰相と会ってからだったのか。
ロウ、ディオンストム、カリン、チュウ吉先生チームは、ムスリ宰相と無実の証明にムーダン王宮へ。
私とラインハルト、フロース、ポポちゃんにシャーク殿下。
伎芸は私のチームに入るそうだ。
王宮よりも、こちらの方が戦力が必要だろうと。
メルガルドは精霊王として動かねばならない案件の為、今回は単独行動に出るらしい。
モリヤは留守番で、連絡の取り次ぎを担当する。
心話でも話は出来るが、所謂伝言板の役目だ。
いつでも話せる状態とは限らないからね。
シャーク殿下はサジルと相対して、一刻も早く天秤を取り戻さなくてはならない。
本来ならば、無実の証明も自分がやるべきなのだと言っているが、ラインハルト達みたく、同時に存在出来る訳じゃないので仕方が無いだろう。
「無実の証明が出来たとしても、実際に王宮で戦うのは他でもない、シャーク殿下ですよ」
「どうか、貴方様にしか出来ない事を、なさいませ。ムーダンの王族として、遣り遂げるのでしょう?ーーーー各国にもその姿勢を見せつけなければ」
「ーーーーッ。はい、肝に命じて」
上手くまとまったなぁと関心するが、ペコリと頭を下げたシャーク殿下の懐から姫林檎がコロリと落ちた。
やっぱりちょっと締まらない人だ。
そう思っていたら、姫林檎が突然飛び上がって煙を出した。
あっという間に、浮かぶ影は大きくなり、長い髪の美女に変化する。
それをみたシャーク殿下が驚いた拍子に腰を抜かしていて、更には今にも瞳が零れそうだ。もしかしてアストレアの事、知らないとか!?
そんなシャーク殿下の事などお構いなしに、アストレアは叫んだ。
「ちょ、ちょっと待って!!姫様のチームに頭脳派がいないじゃないの!その案は却下よ!」
「ラインハルトがいるでしょうに。それにフロースも伎芸も、フィア様のフォローは慣れていますし、中々の策士ですよ」
あの、ロウ。私はーー?!
これでも結構頭を使っていると思うよ、うん。
「そうだけど、そうだけどね?!伎芸もフロースも姫様のフォローって言うよりも、油注いじゃうわよね?この男なんて、頭脳派?ナニソレ美味しいの?って位に7割が姫様の事しか頭に無いじゃないの!」
「アストレア、訂正しろ。7割じゃない」
冷気漂う圧は背後のラインハルトから出ている。
真夏には便利かも知れない。
ふと真冬には暖かい空気圧が出るのかしら。
「ウッーーーーじゃぁ八割?」
ラインハルトが静かに首を振った。
そうだよねぇ。流石に無いわー。でもアストレア、何で割合を上げたのかしらね。
「九割九分だ。何故7割、八割なんて数字が出てくる。理解に苦しむな」
ーーーーは!?ええ!?その数字、おかしくないでしょうかね?
理解出来ないのは貴方のその数字ですが。
「悪かったわよ••••でも、そんなので頭脳派って言えないじゃないの」
えと、どうして納得してしまうのですか、アストレアさん。
「ーーーーアストレア、どうでも良いが、シャークが目を開けて立ったまま気絶しているが。恐らくは、お前の所為で」
「エエエ!?ちょっと、どうでも良くないわよ!シャーク、シャークーーーー!しっかりしてーーーー」
この後、シャーク殿下を落ち着かせて事情を説明するのに、数時間を要して。
私は、明日中にムーダンに入れるだろうかちょっと不安になった。
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読んでいただきありがとうございました(*´꒳`*)
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