プーちんと呼ばれしウィンニーWinnie the Pooh(絶望的意訳ver)

雅紫 菜華乃

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第一話 人造熊のプーちん、社会の働き蜂を冷めた目で見つめる。その1

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 熊のプーちんが今まさにいる場所、それは裕福な英国人の邸宅だった。そこには多くの奴隷から成り立った、『富』と『労働』が集約されている。大英帝国の欺瞞と搾取の塊の一つである。
 大理石で作られ共産主義国家のような彫刻の階段を、熊のプーちんは降りた。

 後頭部を一段、一段、何度も、何度も、執拗に、そして、確実にしこたま打ち付け、ともすれば拷問よりも殺意を帯びた、しかし、無邪気な仕打ちで、クリストファー・ロビン卿と呼ばれる、無邪気に昆虫の四肢を引きちぎる、『冷血cold blood』の二つ名に恥じない行為を行う少年に引きずられ、熊のプーちんは階段を降りた。いや降ろされたと言うべきか?

 しかしながら、彼がこの白人政策の、または、大英帝国の栄華を濃縮したような、ヒエラルキーの館から抜け出すためにはこうして階段を降りる他はなかった。

 彼にもう少しの知恵があったならば、若しくはクリストファー卿に僅かばかりの慈悲があったのならば、或いはもう少しましな手段で階段を降りる事が叶ったであろう。
 しかし、そうするには彼には知恵が足りなかったし、クリストファー卿に慈悲を期待することは、エベレストの山頂で捕鯨に成功するような物であった。
 結局、プーちんに残された選択肢は諦めと妥協であり、クリストファー卿にしてみればこの拷問の愉悦と享楽を失うことはなかった。なにより、プーちんもまた、この行為に快楽を見いだしていたのだ。

 そうこうしている間に彼らは漸くその長い階段を降り立った。
 今、新たにここに彼の名を刻もう!

ウィンニー・ザ・プーちん!!

 と、言われてただ流すだけではあなた方の知的好奇心は満たされないだろうし、私にも不本意だ。
 この名には謎が秘められている。もちろん、当時の、当地での、知識を求められている。

 ウィンニーは当時の著名な雌熊、日本的にすればゾウの花子とかその類である。
 若い雄熊には不適当な名付けだ。

「だからこそ、プーちんなのさ」
 クリストファー卿は呟いた。いや、ナチュラルに語り手神の声に反応するな、お前は神か?
「彼はウィンニーであり、同時に、プーちんということさ」
 よく分からんが、とにかく良し!つまり彼は雄熊である前にウィンニーであり、そしてウラジーミルでなくともプーちんであるのだ!

 兎にも角にも、プーちんの被虐性マゾヒズムは階段を快楽に変換するには飽きたらず、暖炉での火炙りであったり、ほぼ眉間を射抜く、ある意味では百発百中のクリストファー卿によるウィリアムテルでも遺憾なく発揮された。
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