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ざまぁを待たない
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結局俺は、恩人に後ろ足で砂をかけることしか出来ない人間だったって事だな。
オヤジを見ているとつくづく王侯貴族ってのは血統主義だなと思うね。
無能だったのかって?
それが正しいのかもな。オヤジは貴族にしては……あるいはその辺の庶民や聖職者と比べてもあまりにも善良すぎた。
兄弟やちょうどいい親戚でもいれば家を継ぐことなくすげ替えられていただろうな。
ところが運がいいのか悪いのか、そのまま家が継げてしまった。
つけ込まれ傾くかと思いきや、その前に心酔して補助をしてくれる人材に出会った。
領地の当たりも良かったんだろうよ、手をかければかけるだけそれを増やして返すような場所だった。のにオヤジの父親が搾り取ることしかしなかったので、たいした価値はないと見逃され、その間に安定した。
とはいえ、代替わり直後に良くなった訳じゃねぇ。俺がガキの頃はまだまだ捨て子もごろごろしてた。
かくいう俺も捨て子だった訳だ。
……いや、さすがに俺見て貴族の血を引いてるとは思ってなかっただろ?
そういうわけで善良なオヤジは孤児院を増やし、自らも幾人か子供を引き取ったというわけだ。
そんなかに俺を混ぜる辺り人を見る目はなかったな。
引き取られた中で最年長なせいもあったけどなじめなくてなー。
良くはしてくれてると分かっちゃいるか、なんというかこう背筋がぞわぞわして。お上品なのは向いてないんだよ。
数年は耐えたが一向に慣れず、一人でも何とかなると思うほど成長した時点で家の中のもの持ち出して逃げた。
……さすがに恩知らずな自覚はあるよ。
そういう経緯ではあったものの、持ち出した物を売った金もあって俺は俺で自分の食堂を持てるまでになった。
正直味も売り上げも悪くない。
人間、余裕が出てくると要らないことに気が回るようになるもんだな。
今更ながらあんな形で出て行った事が気になってな。
オヤジは許すだろうがこっちは後ろめたいし、素直に謝れる気もしねぇ。
仮にそんな気があっても、今となっては部外者どころか裏切り者に簡単に周りが会わせてくれるとは思えねぇ。
そんなときにオヤジが街に視察に来ることになったんだよ。
会えないのは変わらないし、会いに行くつもりはねぇ。
それでも作った料理を食べてくれないだろうかとふと思っちまったわけだよ。
で、もてなす役人を買収した。
いや、馬鹿なのは分かってる。いくら普通に対応すれば機会がないに等しいにしろその手段は取るべきではなかった。
俺が作った料理は確かにオヤジの前に運ばれて、オヤジはそれを口にした。
おいしいと言う声が物陰にいた俺のところにも聞こえたよ。
嬉しかったかって?
褒められた――どんな形であれ認められたのは確かに嬉しい。
けど、そう思う前に気づいてしまった。
得体のしれない料理がオヤジの口に入る可能性を。
買収したのが俺じゃなく、命を狙っている存在だったら?
オヤジはあの瞬間死んだかもしれない。
それが、自首をした理由だ。買収された役人も捕まえてくれるんだろ?
反省? したところで変わらない事はしねぇ。
情けがあるならオヤジには黙っといてくれ。
無理か。
――結局俺は、恩人に後ろ足で砂をかけることしか出来ない人間だったって事だな。
オヤジを見ているとつくづく王侯貴族ってのは血統主義だなと思うね。
無能だったのかって?
それが正しいのかもな。オヤジは貴族にしては……あるいはその辺の庶民や聖職者と比べてもあまりにも善良すぎた。
兄弟やちょうどいい親戚でもいれば家を継ぐことなくすげ替えられていただろうな。
ところが運がいいのか悪いのか、そのまま家が継げてしまった。
つけ込まれ傾くかと思いきや、その前に心酔して補助をしてくれる人材に出会った。
領地の当たりも良かったんだろうよ、手をかければかけるだけそれを増やして返すような場所だった。のにオヤジの父親が搾り取ることしかしなかったので、たいした価値はないと見逃され、その間に安定した。
とはいえ、代替わり直後に良くなった訳じゃねぇ。俺がガキの頃はまだまだ捨て子もごろごろしてた。
かくいう俺も捨て子だった訳だ。
……いや、さすがに俺見て貴族の血を引いてるとは思ってなかっただろ?
そういうわけで善良なオヤジは孤児院を増やし、自らも幾人か子供を引き取ったというわけだ。
そんなかに俺を混ぜる辺り人を見る目はなかったな。
引き取られた中で最年長なせいもあったけどなじめなくてなー。
良くはしてくれてると分かっちゃいるか、なんというかこう背筋がぞわぞわして。お上品なのは向いてないんだよ。
数年は耐えたが一向に慣れず、一人でも何とかなると思うほど成長した時点で家の中のもの持ち出して逃げた。
……さすがに恩知らずな自覚はあるよ。
そういう経緯ではあったものの、持ち出した物を売った金もあって俺は俺で自分の食堂を持てるまでになった。
正直味も売り上げも悪くない。
人間、余裕が出てくると要らないことに気が回るようになるもんだな。
今更ながらあんな形で出て行った事が気になってな。
オヤジは許すだろうがこっちは後ろめたいし、素直に謝れる気もしねぇ。
仮にそんな気があっても、今となっては部外者どころか裏切り者に簡単に周りが会わせてくれるとは思えねぇ。
そんなときにオヤジが街に視察に来ることになったんだよ。
会えないのは変わらないし、会いに行くつもりはねぇ。
それでも作った料理を食べてくれないだろうかとふと思っちまったわけだよ。
で、もてなす役人を買収した。
いや、馬鹿なのは分かってる。いくら普通に対応すれば機会がないに等しいにしろその手段は取るべきではなかった。
俺が作った料理は確かにオヤジの前に運ばれて、オヤジはそれを口にした。
おいしいと言う声が物陰にいた俺のところにも聞こえたよ。
嬉しかったかって?
褒められた――どんな形であれ認められたのは確かに嬉しい。
けど、そう思う前に気づいてしまった。
得体のしれない料理がオヤジの口に入る可能性を。
買収したのが俺じゃなく、命を狙っている存在だったら?
オヤジはあの瞬間死んだかもしれない。
それが、自首をした理由だ。買収された役人も捕まえてくれるんだろ?
反省? したところで変わらない事はしねぇ。
情けがあるならオヤジには黙っといてくれ。
無理か。
――結局俺は、恩人に後ろ足で砂をかけることしか出来ない人間だったって事だな。
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