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一方のわたくしはお母様が殿下の乳母をしたということはさすがに知っていたものの、同じ学園に通おうとも直接的に知り合いになる事なんて可能性すら思い浮かんでいませんでした。
当然姉代わりとしての心構えがあるはずもなく。
遠いからこそ憧れであった殿下に声をかけられて舞い上がり、あっさりと恋に落ちてしまいました。
けれどそれが叶うと思うほどには子供でもいられませんでした。
比較的身分による差がない学園内ですら他に人がいたならばわたくしでは一歩も近寄ることは出来なかったでしょう。
なので付き合えるのは長くて学園に在学中の間だけ。
ましてや殿下はわたくしに恋情を持っているわけではありません。会うのも偶然が重なったときのみです。
それでも幻想と現実の差にさぞがっかりしたでしょうし、そうでなくとも成長すれば姉離れをするのは当然というもの。
すぐにでも離れて行ってしまうでしょう。
そう思い、それでも遠くから殿下を目で追って、深みにはまる気持ちを自覚して、自分の愚かさを呪いました。
「もう、姉とは思えない」
殿下にそう告げられたのはそれからほどなくしてのことでした。
そのときはすでにその可能性に思い至っていたことに安堵していたような気がします。
みっともなく混乱しては無礼ですし、それを見せてこれ以上失望させたくはありませんでした。
殿下は気にすらなさらないとしても、この気持ちに胸を張りたかったのです。
「それでも一緒にいて構わないだろうか?」
……結局、取り乱してしまいましたが。
すぐに殿下の手をとることはできませんでした。
姉弟愛であろうがなかろうが、長くて学園在学中の間だけと分かっている関係です。
ばれてしまった場合、醜聞はどちらの方が多く、長く被るのでしょう?
わたくしは領地に引きこもればそれでいいでしょうが殿下はどうでしょう?
一時的なこととはいえ、いえ一時的と分かっていることなら余計に、その後のために慎重にならなければいけません。
なのに無理強いはしたくないという言葉に便乗することは出来ませんでした。
それからは逢瀬というには幼くつたないものを続けて参りました。
殿下にはただひとつ他の人には秘密にして下さいとお願いいたしました。……無理に傷つく必要はありませんもの。
以前とは違うのは約束をしている事。そしてそれが成されないということ。
待ち合わせた時刻にいないのならば、それは行けないということだからお互い待たないと。
隠していたせいもあるでしょう。殿下ほどの方となれば約束の時間に都合よく一人になれるとは限りませんし、急な予定が入ることもあるでしょうから。
待たないと約束しながら、その場所で何度立ち尽くしていたことでしょう。
時を重ねるごとにその回数は増えて行きました。殿下は王族としても優秀者としてもさらに忙しくなって行きましたから。
そしてたまに会えてもぼんやりされていることが増えました。
体調を心配すると大丈夫だと答えられます。
……ならばわたくしが嫌になったのでしょう。お優しいからいえないだけで。
会えば会うほど終わりを意識してしまいます。
もう次は来られなくなるのではないか、あるいは来ないのではないか、あるいは別れを告げられるのではないか。
その不安で眠れぬ夜を何度数えたでしょう。
しょせんは殿下の気持ち以外のよすがのないような関係です。
分かっていたはずなのに、どうしてここまで気持ちが動いてしまったのでしょう。
当然姉代わりとしての心構えがあるはずもなく。
遠いからこそ憧れであった殿下に声をかけられて舞い上がり、あっさりと恋に落ちてしまいました。
けれどそれが叶うと思うほどには子供でもいられませんでした。
比較的身分による差がない学園内ですら他に人がいたならばわたくしでは一歩も近寄ることは出来なかったでしょう。
なので付き合えるのは長くて学園に在学中の間だけ。
ましてや殿下はわたくしに恋情を持っているわけではありません。会うのも偶然が重なったときのみです。
それでも幻想と現実の差にさぞがっかりしたでしょうし、そうでなくとも成長すれば姉離れをするのは当然というもの。
すぐにでも離れて行ってしまうでしょう。
そう思い、それでも遠くから殿下を目で追って、深みにはまる気持ちを自覚して、自分の愚かさを呪いました。
「もう、姉とは思えない」
殿下にそう告げられたのはそれからほどなくしてのことでした。
そのときはすでにその可能性に思い至っていたことに安堵していたような気がします。
みっともなく混乱しては無礼ですし、それを見せてこれ以上失望させたくはありませんでした。
殿下は気にすらなさらないとしても、この気持ちに胸を張りたかったのです。
「それでも一緒にいて構わないだろうか?」
……結局、取り乱してしまいましたが。
すぐに殿下の手をとることはできませんでした。
姉弟愛であろうがなかろうが、長くて学園在学中の間だけと分かっている関係です。
ばれてしまった場合、醜聞はどちらの方が多く、長く被るのでしょう?
わたくしは領地に引きこもればそれでいいでしょうが殿下はどうでしょう?
一時的なこととはいえ、いえ一時的と分かっていることなら余計に、その後のために慎重にならなければいけません。
なのに無理強いはしたくないという言葉に便乗することは出来ませんでした。
それからは逢瀬というには幼くつたないものを続けて参りました。
殿下にはただひとつ他の人には秘密にして下さいとお願いいたしました。……無理に傷つく必要はありませんもの。
以前とは違うのは約束をしている事。そしてそれが成されないということ。
待ち合わせた時刻にいないのならば、それは行けないということだからお互い待たないと。
隠していたせいもあるでしょう。殿下ほどの方となれば約束の時間に都合よく一人になれるとは限りませんし、急な予定が入ることもあるでしょうから。
待たないと約束しながら、その場所で何度立ち尽くしていたことでしょう。
時を重ねるごとにその回数は増えて行きました。殿下は王族としても優秀者としてもさらに忙しくなって行きましたから。
そしてたまに会えてもぼんやりされていることが増えました。
体調を心配すると大丈夫だと答えられます。
……ならばわたくしが嫌になったのでしょう。お優しいからいえないだけで。
会えば会うほど終わりを意識してしまいます。
もう次は来られなくなるのではないか、あるいは来ないのではないか、あるいは別れを告げられるのではないか。
その不安で眠れぬ夜を何度数えたでしょう。
しょせんは殿下の気持ち以外のよすがのないような関係です。
分かっていたはずなのに、どうしてここまで気持ちが動いてしまったのでしょう。
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