絵にも描けない婚約破棄

こうやさい

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「あなたが王族でないわたしに価値がないと言いだすのではないかといわれて恐かった」
 その言葉で、止めるのは完全に諦めました。
 わたくしをこれほど理解しているのにそんな事を心配なさるなんて、よほど周りから追い詰められていたのでしょう。
 たとえ王位に就かなくとも殿下が中枢近くにいた方がいいと思う考えはそれでも変わっていません。
 けれどそこまでお疲れならば無理にとどまらせる必要はないと。
 これで国がボロボロになるのでしたら、さすがにもっと悩んだでしょうが、大丈夫というならそうなのでしょう。

 それはそれとして王族から抜ける方法を聞いたときにはやっぱり止めましたけれども。

 気が狂ったふりをする!? それ将来的にも響きますけど!?
 …………いえ、それが一番いい方法ならわたくしは構いません。
 架空の婚約者に婚約破棄!? だからってどうしてやらかすのがそれになりますの!?
 ……対応の方向性を誘導するためですか。
 恐らく隠蔽しようとしますが、完璧には無理なので方向性が似ているもので誤魔化そうとすると?
 それで現在の勢力図から考えて?
 ……そろそろ訳が分からなくなって来ましたわ。
 とにかく計画はきっちりと練られていて、そう上手く行くものかと心配になります。少しでも狂えば終わるのではないでしょうか?
 特に気が触れた方に対する対応は、法があっても前例がありません。読み通りに行くのでしょうか?
 細部は変える可能性があるし、他にも案はあるそうですが心配です。

 せめて何か手伝えることはないかと尋ねましたけれど、下手に関わるものがいればそちらに責任を押しつけ、狂いが生じるかもしれないからと断られまして。
 中途半端な弱みになるだけのものなら困ると。

 だからしばらく会えないと。

 ……正直に言えば、それが一番衝撃的でした。
 それはもし失敗すれば会えるのは今が最後だということですから。
 関係が終わる覚悟も、毎回今回が会える最後の可能性てあることの覚悟もしていたつもりでしたけど、本当につもりでしかないことを思い知りました。
 殿下を心配しているのか、自分が動揺しているだけなのかわからなくなりました。

 それからしばらくは気がつけば校内をうろうろしていたような気がいたします。以前殿下に会った、あるいは偶然会えた場所をふらふらと。
 自覚してからはさすがに不審なので取りやめましたが、代わりに今度は必要最低限しか動かず、家族に心配をかけていた気がします。
 当日はとにかく不自然にならないよう取り繕い、余計な事を考えないよう頭の中で筋書き通りにいっているかの確認だけしようとして来た気がいたします。
 それでも恐らく何か考えたのでしょうが、今となってはよく覚えておりません。
 どうやら最中に想定していた以上に混乱していたようで。

 それでもわたくしに問題はなかったのか、それともわたくしごときに構う余裕がなかったのか、気にもとめられなかったのか。
 口止めと密室わたくしではうかがえないばしょでの審議を経て、殿下は計画通り、将来の臣籍降下前提でのわたくしの婚約者となり領地にやってきました。すぐ結婚とならなかったのは表向きの理由で考えると不自然だからです。
 一応他にも婚約者候補はいらしたそうですが、向こうが渋ったためと、こちらはお母様が乳母だった事が考慮されました。
 乳母ならば殿下への情と、多少なりと育成に関わった責任があるので、その分御しやすいと。
 こちらも利用しておいていうのもどうかと思いますが、その考えはあまり好きではありませんわ。
 わたくしは本当に貴族に向いていないようです。
 殿下もこうなりましたし、お母様が責められないよう一層外側を取り繕わなければいけませんわね。

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