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もしかしたらの結末

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 そんな楽しかった日々にも終わりはやってくる。

 孫と子はベッドを囲み、夫は手を握ってくれている。
 こんなにも穏やかに終われる日が来るなんて不思議だった。
 ゲームに入り込む前の死因は覚えていないし、ゲームになってからは殺されるか処刑されるか心労で倒れるかの三択みたいなもので、自殺ですら穏やかな方だっただろう。
 そんなあたしを……本来の悪役令嬢から外れた存在を、あの時の言葉通り夫は愛してくれた。
 先立つのは少し悲しいけれど思い残すことはないと言ってもいい人生だったと思う。

 ……それでもまた生まれ変わるのだろうか?
 案外と最初から死んでいなくて、ここで死んだと思ったら病院のベッドの上で目を覚ましたりして。
 そして、ゲームのやり過ぎで過労と栄養失調で倒れていたと怒られるのだ。
 うわ、なんかありそうで笑える。
 それくらい王太子様が好きだった。
 そう過去形で言えることが今の人生がどれだけ幸せだったか物語っているだろう。

 結局殿下に執着していたのは、最初の数回はまだしも半分くらいは逃避だったのだと思う。
 そうでなければヒロインと悪役令嬢を繰り返し体験する異常事態に耐えられるはずもない。
 いや、耐えられてなかったような時もあったけど。
 きっとまだゲームをやっているのだと心のどこかで思い込むことで少しでも精神の均衡を保とうとしていたのだろう。あの頃のあたしなら百周でも出来たろうからね。
 だから殿下の気持ちをおざなりにした。

 もし今度ヒロインに生まれ変わったとしても、もう殿下に不必要に近づくことはないだろう。ヒロインと出会わなければ順調に穏やかな幸せを手に入れられるだろうから。
 それでも殿下が婚約者以外を好きになってたりしたら今更ながら強制力に戦くかもしれない。
 あるいは悪役令嬢に転生したとしたら、必要ならば政略結婚もするだろう。だって夫は今は陛下である殿下に仕えているのだから、きっとそれを望むだろう。
 けれど必要としないならば、彼の元に向かう。また上手く行くとは限らないけれど、それでもあたしは好きだから、一度は気持ちを告げに行こう。
 それとも病院のベッドの上だったなら、攻略対象でないイチキャラのために一度だけ涙を流すだろう。
 そうしてそのゲームを封印するだろう。もう繰り返す必要はないのだから。

 本当に幸せでした。

 その言葉は彼に届いただろうか?
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