ひょん

こうやさい

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ひょん

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 「行って」と、貴女は残酷な事を言う。これから事が進めば、追い詰められれば、きっとすがって迷惑をかける、だからその前に「手の届かないところに行って」と。すがってくれるというなら、求めてくれるというなら、それがどんな形であれ喜びだといつまでたっても理解してくれない。何度愛を告げても断られ、この後に及んでそれなのだから、結局嫌なだけなのかとへこみそうになる。いっそ、この状態に落としたのは僕だと教えてみようか? 憎まれる方が忘れられるより幸せかもしれない、そんな感情でも向けられるならその方がうれしい。もういろいろな意味で元に戻すことは出来ないのだから。「枷になりたくない」なのにそう言われて開きかけた口を閉じる。それでは僕に好意があるように聞こえる。――いや、確かにそれを感じることはあった。はっきり示されたことがなく、希望ゆえのうぬぼれかと確信を持てなかっただけで。なんということだろう。必要なのは彼女に重しをつけて一人で立てなくすることじゃなく、彼女を支えても大丈夫だと、むしろ支えられていると納得させることだったのか。彼女は潰れる瞬間まで一人で立とうとするだろう。そしてもう僕は手を伸ばすことが出来ない。
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