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結局そこが問題か?
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婚約者殿の経歴を更に調べると重大な事が分かった。
ただそれがこちらにとって良い知らせかどうかは別問題だ。
実父と実母は身分差から結婚しなかったと聞いていた。
ここで単純に身分が低い相手だったんだなと思い込みそれ以上調査しなかったのがまず間違いだった。
けれど思い込んでもしょうがないと言い訳したい。
戸籍上の祖父の家柄だけで解消前提でも婚約の話が来るのだ。もちろん相手の同意は必要だが、その祖父が願うなら俺を生んでなきゃ母上が下賜されてもおかしくないくらいの家柄だ、ぎりぎりだけどな。
そんな状況なら王妃殿下相手でもなければ相手の身分が上だから結ばれないは適応されない。
けれどこれは国内を見た限りの話だった。
隣の王国に、そこまで昔の人ではないのにおとぎ話の主人公のような語られ方をする第三王女がいた。
幼い頃は本当におとぎ話だと思っていた。
ある日魔物にそそのかされ禁を犯した王女が呪いにかけられ、子供を授からなくなった。
王女には既に想い合う婚約者がいたけれど、それを理由に引き離されてしまう。
けれどどうしても婚約者を忘れられない王女はある日置き手紙を残して城からこっそり抜け出してしまう。
けれど王女は婚約者のところにはたどり着けなかった。
きっとそそのかした魔物に攫われたのであろうと。
なので婚約者は今も探していると言う。
そんな感じで子供に聞かせるためのものとしては微妙な話だ。
それでも聞く機会があって、城から抜け出したのところで家出とかかっけーと思った事が母上にばれたらしく扇の後ろから睨まれたのでよく覚えている。
実際のところは第三王女は身体が弱く、子供を生めば亡くなってしまうと診断されたが、それでも想う人との間に証を残したいと書き置きし家出したらしい。ちなみに婚約者はいたらしいがほったらかしである。
そんな醜聞ともいえなくない話がおとぎ話の皮を被っているとはいえ流布しているのは、第三王女が生きていれば、あるいはその縁者、平たくいえば子供を産んでいるのなら会ってみたいからだそうだ。
世間ではおとぎ話だが、上層部にはもう少し詳しい話も流れてくる。
一度絵姿で見た第三王女はそれは美しい方だった。
婚約者殿の顔は第三王女の、ひいては隣国の王族の顔立ちに似て来はじめていると言われてみれば確かに思う。
婚約者殿がもし第三王女の血を引いているというなら、今次の婚約者の座を狙っている人達はまず勝てない。血を引いているだけなら多少薄まってるのでまだしも、前提付きとはいえ今婚約者の座にある以上無理矢理引き釣り下ろせるだけの権限はない。
ただしこれは国内に限る。
隣国が彼女を王家の血筋として認め引き取りたがった場合、婚約を理由に引き留める事は恐らく出来ない。
ただ向こうはこちらと利害の一致も含めた良好な関係を今後も続けたいらしく、年回りが合う王族がいなかったのを残念がっていた。
なので彼女が引き取られた上でもう一度婚約者になる可能性も少しはある。それでも何年離れることになるか分からないが。
そしておとぎ話には魔物が出てくる。
おとぎ話の皮を被せるために教訓めいた部分を担当する存在として出しただけならいい。何かの誘惑に負けて不幸になるなんて躾用の話ならよくあることだ。
けれど彼女の実父を第三王女が愛した人ではなく彼女をそそのかし攫った魔物の方だと考えたらどうだろう?
第三王女を愛した人ではなく、我が子ほどの女性を孕ませたあげくに殺した人だと考えたらどうだろう?
おまけに第三王女の娘の現在の孤立しているといえる状態。
さすがに戦争まではふっかけられないと思うが、彼女をこちらに帰してくれることはないかもしれない。
実父の方もどれだけ知っていたのか現状では分からない。
第三王女と知っていたのか、行き倒れた娘を拾ったとでも思っていたのか。
最後まで何も知らなかった事はないだろう、本当に知らなければ俺が今第三王女に辿り着くことはなかっただろうし。
子供だって自分の子として育てれなくとも家を継いだ息子にではなく家格の低い家の当主と恋愛結婚して家を出た娘の方にわざわざ預けているんだし。
年齢の近い子供がいる方がいいというのは建前だろう。そのせいで今ややこしいことになっているのをさっ引いても、乳母でも何でも雇える家なのだから。
出来る限り知られないためではないのか? それでも完全に手放す事が出来なかっただけで。
……第三王女と娘の性格が似てたからとかじゃないよな?
子供を産めば死んでしまうということは知っていたのか? 相手の願いに応えただけか?
そもそも何時知り合ったんだ?
本当におとぎ話の魔物のようにさらえるのでなければ第三王女は自発的に出て行ったのだろうから少なくとも顔を見たくらいはしているはずだろうが、知りうる限りそれまでの接点がない。
無理矢理攫われたと主張されたときの否定材料が弱い。
このことが表に出れば婚約者殿はどうなってしまうのだろう?
どちらに転んでも気まずい兄弟達とは距離は取れる。
そもそも義父の浮気自体がないと今度こそ納得するだろうから、実父の行動をどう判断するかにもよるだろうが、少しは結婚するかもしれない相手を信頼するつもりになれるかもしれない。
そうして俺を選んでくれないかとずっと思っていた訳だが。
なんのかんのと理由をつけて彼女を婚約者の位置に止めておいたのだから本当はこんなことは言えないと分かっている。
けれどこの件で彼女の望みは完全に絶たれてしまうだろう。
狭い世界の中で見つけ出した少ない選択肢から選んだものなので、それを必ずしも正しいと思う人は少ないかもしれない。
それでもこんな風に奪っていいものでもないはずだ。
確実な証拠が見つかったわけでもない。
他人のそら似かもしれない。
とりあえずそう思っても落ち着かない。
そうなってしまったら、今度は彼女は何を望むのだろう?
ただそれがこちらにとって良い知らせかどうかは別問題だ。
実父と実母は身分差から結婚しなかったと聞いていた。
ここで単純に身分が低い相手だったんだなと思い込みそれ以上調査しなかったのがまず間違いだった。
けれど思い込んでもしょうがないと言い訳したい。
戸籍上の祖父の家柄だけで解消前提でも婚約の話が来るのだ。もちろん相手の同意は必要だが、その祖父が願うなら俺を生んでなきゃ母上が下賜されてもおかしくないくらいの家柄だ、ぎりぎりだけどな。
そんな状況なら王妃殿下相手でもなければ相手の身分が上だから結ばれないは適応されない。
けれどこれは国内を見た限りの話だった。
隣の王国に、そこまで昔の人ではないのにおとぎ話の主人公のような語られ方をする第三王女がいた。
幼い頃は本当におとぎ話だと思っていた。
ある日魔物にそそのかされ禁を犯した王女が呪いにかけられ、子供を授からなくなった。
王女には既に想い合う婚約者がいたけれど、それを理由に引き離されてしまう。
けれどどうしても婚約者を忘れられない王女はある日置き手紙を残して城からこっそり抜け出してしまう。
けれど王女は婚約者のところにはたどり着けなかった。
きっとそそのかした魔物に攫われたのであろうと。
なので婚約者は今も探していると言う。
そんな感じで子供に聞かせるためのものとしては微妙な話だ。
それでも聞く機会があって、城から抜け出したのところで家出とかかっけーと思った事が母上にばれたらしく扇の後ろから睨まれたのでよく覚えている。
実際のところは第三王女は身体が弱く、子供を生めば亡くなってしまうと診断されたが、それでも想う人との間に証を残したいと書き置きし家出したらしい。ちなみに婚約者はいたらしいがほったらかしである。
そんな醜聞ともいえなくない話がおとぎ話の皮を被っているとはいえ流布しているのは、第三王女が生きていれば、あるいはその縁者、平たくいえば子供を産んでいるのなら会ってみたいからだそうだ。
世間ではおとぎ話だが、上層部にはもう少し詳しい話も流れてくる。
一度絵姿で見た第三王女はそれは美しい方だった。
婚約者殿の顔は第三王女の、ひいては隣国の王族の顔立ちに似て来はじめていると言われてみれば確かに思う。
婚約者殿がもし第三王女の血を引いているというなら、今次の婚約者の座を狙っている人達はまず勝てない。血を引いているだけなら多少薄まってるのでまだしも、前提付きとはいえ今婚約者の座にある以上無理矢理引き釣り下ろせるだけの権限はない。
ただしこれは国内に限る。
隣国が彼女を王家の血筋として認め引き取りたがった場合、婚約を理由に引き留める事は恐らく出来ない。
ただ向こうはこちらと利害の一致も含めた良好な関係を今後も続けたいらしく、年回りが合う王族がいなかったのを残念がっていた。
なので彼女が引き取られた上でもう一度婚約者になる可能性も少しはある。それでも何年離れることになるか分からないが。
そしておとぎ話には魔物が出てくる。
おとぎ話の皮を被せるために教訓めいた部分を担当する存在として出しただけならいい。何かの誘惑に負けて不幸になるなんて躾用の話ならよくあることだ。
けれど彼女の実父を第三王女が愛した人ではなく彼女をそそのかし攫った魔物の方だと考えたらどうだろう?
第三王女を愛した人ではなく、我が子ほどの女性を孕ませたあげくに殺した人だと考えたらどうだろう?
おまけに第三王女の娘の現在の孤立しているといえる状態。
さすがに戦争まではふっかけられないと思うが、彼女をこちらに帰してくれることはないかもしれない。
実父の方もどれだけ知っていたのか現状では分からない。
第三王女と知っていたのか、行き倒れた娘を拾ったとでも思っていたのか。
最後まで何も知らなかった事はないだろう、本当に知らなければ俺が今第三王女に辿り着くことはなかっただろうし。
子供だって自分の子として育てれなくとも家を継いだ息子にではなく家格の低い家の当主と恋愛結婚して家を出た娘の方にわざわざ預けているんだし。
年齢の近い子供がいる方がいいというのは建前だろう。そのせいで今ややこしいことになっているのをさっ引いても、乳母でも何でも雇える家なのだから。
出来る限り知られないためではないのか? それでも完全に手放す事が出来なかっただけで。
……第三王女と娘の性格が似てたからとかじゃないよな?
子供を産めば死んでしまうということは知っていたのか? 相手の願いに応えただけか?
そもそも何時知り合ったんだ?
本当におとぎ話の魔物のようにさらえるのでなければ第三王女は自発的に出て行ったのだろうから少なくとも顔を見たくらいはしているはずだろうが、知りうる限りそれまでの接点がない。
無理矢理攫われたと主張されたときの否定材料が弱い。
このことが表に出れば婚約者殿はどうなってしまうのだろう?
どちらに転んでも気まずい兄弟達とは距離は取れる。
そもそも義父の浮気自体がないと今度こそ納得するだろうから、実父の行動をどう判断するかにもよるだろうが、少しは結婚するかもしれない相手を信頼するつもりになれるかもしれない。
そうして俺を選んでくれないかとずっと思っていた訳だが。
なんのかんのと理由をつけて彼女を婚約者の位置に止めておいたのだから本当はこんなことは言えないと分かっている。
けれどこの件で彼女の望みは完全に絶たれてしまうだろう。
狭い世界の中で見つけ出した少ない選択肢から選んだものなので、それを必ずしも正しいと思う人は少ないかもしれない。
それでもこんな風に奪っていいものでもないはずだ。
確実な証拠が見つかったわけでもない。
他人のそら似かもしれない。
とりあえずそう思っても落ち着かない。
そうなってしまったら、今度は彼女は何を望むのだろう?
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