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あったかもしれないしなかったかもしれない話
エマ
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特待生の成り立ちは、能力が足りない下位貴族さまの跡取りの、有能な妻候補を養成するためだったらしい。
上位貴族さまならば下位貴族さまの優秀な妻を娶る事も出来るし、血筋も広いのでその繋がりで妻や養子を探すという手もある。
けれどもわざわざ下位貴族さまに上位貴族さまの令嬢が政略で嫁いでくることはめったにないらしいし、完全に貴族じゃない妻を娶れば貴族さまとしての補佐能力に不安が残るから教育した者をと。
下位貴族さまの令嬢は優秀ならば上位貴族さまに嫁ぎ、そこまてでないならふさわしいところに嫁ぎ、どうにもならないなら修道院に行ったそうだ。
今は特待生に男性もいるし、そんな役目は求められていないが、名残としてきちんと修学して卒業すれば貴族さまとの結婚が出来やすくなる。
因みに貴族さまの御落胤などは判明した時点で元の家なりどこかの家の養子になったりするそうだ。
けれどもこの結婚はそのせいではないだろう。
セイリアス様は殿下の側近だった中では一番身分が低いと言っていたけれど、それでも下位寄りの上位にはなっても上位寄りの下位ではない。
長男ではなかったけれど、この度継ぐ家が出来たそうだ。
それがアンリエッタ様のご実家の分家という時点で推測することは簡単だと思う。
要するにこの度の事態の収拾とアンリエッタ様の優しさの結果なのだろう。
殿下は大勢の前でアンリエッタ様に冤罪を被せた。
その冤罪の原因になったあたしは、それでも責任はないと認められた。
けれど野放しにするのは不安だったのだろう。
かといって殺してしまうのも勘ぐられる材料になる。
……学校で、なに習ったんだろうね、あたし。
それで監視役となれるセイリアス様と結婚することになったのだと思う。
何の前触れもなく貴族さまとの結婚話が来れば絶対に裏しかないので相手は警戒対象のはずだけど、なにせ学生時代から、そして決定的なことが起こる前から知っていた人。
優しくしてくれたし。
殿下ほどは価値観は違わないし。
迎えに来てくれたし。
どうせ無理だからと目をそらしてたけどいつの間にかそらしきれなくなってたし。
片想いでも一緒にいられるようになったことがそれでも嬉しかった。
……なんか、片想いじゃなかったぽいし。
けれどもそれは、それでもアンリエッタ様と引き換えるほどのことだっただろうか?
どのみち卒業すれば会えなくなる人だったのだとは思う。
アンリエッタ様がそのまま結婚して、仮にあたしが殿下の側妃になったとしてもそんなに変わらなかっただろう。むしろ嫌われる可能性はあるけど。
でもそれでも。
これだけ根回しが済んでいるのだから、想定していた事態のうちだったのだろうとは思う。
殿下が療養するために王位継承権を放棄することまで予想していたかはわからないけれど。
責任を誤魔化すためではなく、本当に調子を崩しているとこっそり教えてくれた。
あたしのことは記憶的な意味じゃなく忘れているらしい。
アンリエッタ様が望んだ未来はどんなものだったのだろう。
友達とは畏れ多くて言えないけれど。
大好きだった。
上位貴族さまならば下位貴族さまの優秀な妻を娶る事も出来るし、血筋も広いのでその繋がりで妻や養子を探すという手もある。
けれどもわざわざ下位貴族さまに上位貴族さまの令嬢が政略で嫁いでくることはめったにないらしいし、完全に貴族じゃない妻を娶れば貴族さまとしての補佐能力に不安が残るから教育した者をと。
下位貴族さまの令嬢は優秀ならば上位貴族さまに嫁ぎ、そこまてでないならふさわしいところに嫁ぎ、どうにもならないなら修道院に行ったそうだ。
今は特待生に男性もいるし、そんな役目は求められていないが、名残としてきちんと修学して卒業すれば貴族さまとの結婚が出来やすくなる。
因みに貴族さまの御落胤などは判明した時点で元の家なりどこかの家の養子になったりするそうだ。
けれどもこの結婚はそのせいではないだろう。
セイリアス様は殿下の側近だった中では一番身分が低いと言っていたけれど、それでも下位寄りの上位にはなっても上位寄りの下位ではない。
長男ではなかったけれど、この度継ぐ家が出来たそうだ。
それがアンリエッタ様のご実家の分家という時点で推測することは簡単だと思う。
要するにこの度の事態の収拾とアンリエッタ様の優しさの結果なのだろう。
殿下は大勢の前でアンリエッタ様に冤罪を被せた。
その冤罪の原因になったあたしは、それでも責任はないと認められた。
けれど野放しにするのは不安だったのだろう。
かといって殺してしまうのも勘ぐられる材料になる。
……学校で、なに習ったんだろうね、あたし。
それで監視役となれるセイリアス様と結婚することになったのだと思う。
何の前触れもなく貴族さまとの結婚話が来れば絶対に裏しかないので相手は警戒対象のはずだけど、なにせ学生時代から、そして決定的なことが起こる前から知っていた人。
優しくしてくれたし。
殿下ほどは価値観は違わないし。
迎えに来てくれたし。
どうせ無理だからと目をそらしてたけどいつの間にかそらしきれなくなってたし。
片想いでも一緒にいられるようになったことがそれでも嬉しかった。
……なんか、片想いじゃなかったぽいし。
けれどもそれは、それでもアンリエッタ様と引き換えるほどのことだっただろうか?
どのみち卒業すれば会えなくなる人だったのだとは思う。
アンリエッタ様がそのまま結婚して、仮にあたしが殿下の側妃になったとしてもそんなに変わらなかっただろう。むしろ嫌われる可能性はあるけど。
でもそれでも。
これだけ根回しが済んでいるのだから、想定していた事態のうちだったのだろうとは思う。
殿下が療養するために王位継承権を放棄することまで予想していたかはわからないけれど。
責任を誤魔化すためではなく、本当に調子を崩しているとこっそり教えてくれた。
あたしのことは記憶的な意味じゃなく忘れているらしい。
アンリエッタ様が望んだ未来はどんなものだったのだろう。
友達とは畏れ多くて言えないけれど。
大好きだった。
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