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彼女にとっての婚約破棄物
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「なぁ、なんであんなに婚約破棄物って流行ってるんだ」
彼女一押しのオンノベ作家の最新完結作は、女性主人公が婚約破棄されるシロモノだった。ちなみに婚約破棄は三本目。
女性向けということで過去二作はまだ読んでいないのだが、今回もそうだが読者数が他のものより多い。
気になって調べてみたらタイトルやあらすじで判断する限り女性向けの婚約破棄物はかなり流行っているように思えた。
「その前に、婚約破棄物の定義は?」
彼女が斜め向かいの席から小首をかしげ尋ねてくる。くっそかわいい。
「えーっと、ヒロインが婚約破棄を突きつけられるけど、悪いのは相手の方で、ヒロインは周りとか新たな恋人? とかに助けられながら、最後は相手が報いを受けることになる?」
……というのが今回の話のあらましだった。報いを受けるまでにそこそこエピソートあったんだけど、破棄してきた婚約者じゃない方の相手役、両想いなのにけりがつくまでまともにいちゃつけないから不憫で不憫で……そっちに視点置いちゃいけないんだろうけど。
「そうね、今は概ねそれで収まるわね」
「今は? 概ね?」
歯切れの悪い言い方に思わず聞き返す。
……まぁ、一作しか読んでないんだからそれで本質がつかめるなら苦労しないし、どうせならその能力はレポートの時に欲しい。
「今はってのは、昔はヒロインが婚約者のいる男性を好きになって、その男性が婚約者との婚約を破棄してヒロインとくっつくのがハッピーエンドみたいな時期もあったから」
「それまずくないか?」
好きになるまではしょうがないが、婚約者から奪いに行ったのがヒロインなら悪いのはヒロインだし、特に何もアプローチしてないのに男が乗り換えたのなら浮気だし。
「まずいから、大概婚約者はなんか悪いことをやってる事になってたわ。先に浮気してるとか、家が悪事に手を染めていたとか、分かりやすいのはヒロインをいじめるかしら?」
自業自得なのはさておき家の悪事でもか……世間様厳しいからなぁ。
「で、今はそれが逆転して罪は冤罪だった、更にいえば元婚約者かその浮気相手が陥れてたみたいなことになってるの」
「……それは確かに逆転してるな」
てか、浮気相手が悪女だった場合元婚約者が気の毒になるんだが。
「その辺りは単に説明しようとするとややこしいわね」
彼女が苦笑する。
「とにかくそんなパターンが多くなったんだけど、従来のも残ってるし、他のパターンもある。だから概ね」
……奥が深い、のか?
「それはそれとして、最初想定してた話で、一番の見所はどこだった?」
「婚約破棄してきた相手が報いを受けたとこ」
ヒロイン視点な事もあって同性といえど欠片も共感できず、やることがエグかったからざまぁみろと思ったね。
「え、人気の理由そこ?」
いや分からなくもないけど。
「欠片もないとは言わないけど、悪事を報いを受ける話なんてそれこそ勧善懲悪物がいくらでもあるんだから、婚約破棄だけが突出はしないわよ」
「そりゃそうだな」
保育園バスをジャックした怪人をバッタが倒したとしてもすっきりするな。
「あたしはね、重要なところはあっても見所はないと思ってるの。あるいは全部見所?」
「いや訳わかんないから」
大好きな彼女の事を少しでも理解したいとは思うのだが、ちょっと分からない。
「ほら、今の世の中って忙しいから。時間自体はあっても気は急いたりするでしょう?」
それは分かる。暇があっても何かしてなきゃと思って特に面白くもないソシャゲとかやって、後で何やってたんだろと思うんだよな。
今はそんなときはオンノベを読んでる。面白いし、彼女との話題に困らなくなるのだから非常に有意義な使い方だと思う。
「だから恋愛物を読んででも、それだけじゃ落ち着かないんじゃないかと思うの」
なんかすごいことを言われた。
「精神的に余裕があるときなら身近なゆっくり一歩一歩進んでいくような恋愛物もいいと思うんだけど」
うん、これは 小説の話だ。けど覚えとこう。
「そうじゃないなら、それだけやってちゃいけないと思うのよ」
「せわしないな」
「ホントよね」
そういいながらドリンクバーでお代わりしてきたソーダを飲んでるわけだが。
「だからね、恋愛要素に何か派手な出来事を組み合わせたのが読みたくなるのよ」
じゃあファミレスで駄弁る場面なんてないな。
「お仕事物とかパニック物とかでもいいんだけど、それでも恋愛を読みたいことには変わりないわけで」
「それで、婚約破棄?」
「そう。恋愛要素のある派手な出来事でしょう?」
確かに現実ではあまり起こらない派手なイベントの気がするな、少なくともまだ結婚適齢期じゃないし。
俺が彼女を好きなのは事実だが、それでも結婚したいかと言われるとピンとこないし、その約束を破棄なんてもっと遠い。
将来的には知らないが、今はそんなものだろう。
「それだとメインじゃないわけだから、確かに見所じゃないな」
細かいところに見いだす人もいなくはないが。
「しかしそんな事考えながら読んでるのか?」
「そんな余裕あるわけないじゃない」
おい。
彼女一押しのオンノベ作家の最新完結作は、女性主人公が婚約破棄されるシロモノだった。ちなみに婚約破棄は三本目。
女性向けということで過去二作はまだ読んでいないのだが、今回もそうだが読者数が他のものより多い。
気になって調べてみたらタイトルやあらすじで判断する限り女性向けの婚約破棄物はかなり流行っているように思えた。
「その前に、婚約破棄物の定義は?」
彼女が斜め向かいの席から小首をかしげ尋ねてくる。くっそかわいい。
「えーっと、ヒロインが婚約破棄を突きつけられるけど、悪いのは相手の方で、ヒロインは周りとか新たな恋人? とかに助けられながら、最後は相手が報いを受けることになる?」
……というのが今回の話のあらましだった。報いを受けるまでにそこそこエピソートあったんだけど、破棄してきた婚約者じゃない方の相手役、両想いなのにけりがつくまでまともにいちゃつけないから不憫で不憫で……そっちに視点置いちゃいけないんだろうけど。
「そうね、今は概ねそれで収まるわね」
「今は? 概ね?」
歯切れの悪い言い方に思わず聞き返す。
……まぁ、一作しか読んでないんだからそれで本質がつかめるなら苦労しないし、どうせならその能力はレポートの時に欲しい。
「今はってのは、昔はヒロインが婚約者のいる男性を好きになって、その男性が婚約者との婚約を破棄してヒロインとくっつくのがハッピーエンドみたいな時期もあったから」
「それまずくないか?」
好きになるまではしょうがないが、婚約者から奪いに行ったのがヒロインなら悪いのはヒロインだし、特に何もアプローチしてないのに男が乗り換えたのなら浮気だし。
「まずいから、大概婚約者はなんか悪いことをやってる事になってたわ。先に浮気してるとか、家が悪事に手を染めていたとか、分かりやすいのはヒロインをいじめるかしら?」
自業自得なのはさておき家の悪事でもか……世間様厳しいからなぁ。
「で、今はそれが逆転して罪は冤罪だった、更にいえば元婚約者かその浮気相手が陥れてたみたいなことになってるの」
「……それは確かに逆転してるな」
てか、浮気相手が悪女だった場合元婚約者が気の毒になるんだが。
「その辺りは単に説明しようとするとややこしいわね」
彼女が苦笑する。
「とにかくそんなパターンが多くなったんだけど、従来のも残ってるし、他のパターンもある。だから概ね」
……奥が深い、のか?
「それはそれとして、最初想定してた話で、一番の見所はどこだった?」
「婚約破棄してきた相手が報いを受けたとこ」
ヒロイン視点な事もあって同性といえど欠片も共感できず、やることがエグかったからざまぁみろと思ったね。
「え、人気の理由そこ?」
いや分からなくもないけど。
「欠片もないとは言わないけど、悪事を報いを受ける話なんてそれこそ勧善懲悪物がいくらでもあるんだから、婚約破棄だけが突出はしないわよ」
「そりゃそうだな」
保育園バスをジャックした怪人をバッタが倒したとしてもすっきりするな。
「あたしはね、重要なところはあっても見所はないと思ってるの。あるいは全部見所?」
「いや訳わかんないから」
大好きな彼女の事を少しでも理解したいとは思うのだが、ちょっと分からない。
「ほら、今の世の中って忙しいから。時間自体はあっても気は急いたりするでしょう?」
それは分かる。暇があっても何かしてなきゃと思って特に面白くもないソシャゲとかやって、後で何やってたんだろと思うんだよな。
今はそんなときはオンノベを読んでる。面白いし、彼女との話題に困らなくなるのだから非常に有意義な使い方だと思う。
「だから恋愛物を読んででも、それだけじゃ落ち着かないんじゃないかと思うの」
なんかすごいことを言われた。
「精神的に余裕があるときなら身近なゆっくり一歩一歩進んでいくような恋愛物もいいと思うんだけど」
うん、これは 小説の話だ。けど覚えとこう。
「そうじゃないなら、それだけやってちゃいけないと思うのよ」
「せわしないな」
「ホントよね」
そういいながらドリンクバーでお代わりしてきたソーダを飲んでるわけだが。
「だからね、恋愛要素に何か派手な出来事を組み合わせたのが読みたくなるのよ」
じゃあファミレスで駄弁る場面なんてないな。
「お仕事物とかパニック物とかでもいいんだけど、それでも恋愛を読みたいことには変わりないわけで」
「それで、婚約破棄?」
「そう。恋愛要素のある派手な出来事でしょう?」
確かに現実ではあまり起こらない派手なイベントの気がするな、少なくともまだ結婚適齢期じゃないし。
俺が彼女を好きなのは事実だが、それでも結婚したいかと言われるとピンとこないし、その約束を破棄なんてもっと遠い。
将来的には知らないが、今はそんなものだろう。
「それだとメインじゃないわけだから、確かに見所じゃないな」
細かいところに見いだす人もいなくはないが。
「しかしそんな事考えながら読んでるのか?」
「そんな余裕あるわけないじゃない」
おい。
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