あらすじから逆算する『結局悪役令嬢?』

こうやさい

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ポルターガイスト[『我が罪への供物』と同程度のホラー]

わたくし達親友ですもの

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「まぁ、やっぱりいらしてたのね」
 床にステンドグラスが割れて散らばっている。本来の柄よりもよほど美しい。
 蝋燭が倒れ、火がなめるように絨毯の上を不自然なまでにに広がる。すぐにでもドレスの裾を飲み込みそうに見えた。
「早く逃げようっ」
 もうすぐ永遠の愛を誓うはずだった婚約者が手を伸ばしてくる。
 莫迦な人。他の人は神父様まで逃げてしまったのに。
 少しはわたくしを愛してくれていたということかしら?
 けれど彼女に惹かれていたのでしょう? あんなにいい子なんですもの。
「あなたは逃げた方がよろしいわ」
 手を取らずに言葉を返す。
「あなたを連れて行きたいのかもしれませんから」
 どこかの窓が割れたのか風向きが変わる。
 わたくしたちの間を煙がさえぎる。
 たまらずあなたは数歩下がったようだけど、その姿は白く濁って見えない。
 代わりに親友の姿が見えた気がした。

 わたくしの親友は一年ほど前に死を選びました。
 真っ赤な浴槽で青白い顔はさぞ映えたでしょうね。
 理由は失恋。失恋相手はわたくしの婚約者。

 一応婚約者の名誉のために言っておきますが、もてあそばれて捨てられたので自殺したというわけではありませんわ。
 ただの淡い、上手く時間さえ経てばいい想い出に収まったであろう初恋。
 出会いはとばした帽子を拾ってもらったなんていう偶然。
 その方は通学路ですれ違っている方だと気付いたこと。
 その方が自分の存在を知っていたこと。
 それからは会えば挨拶するようになったこと。
 なんでも話してくれましたわ、わたくし達親友ですもの。

 わたくしは彼女のその方が誰か薄々感づいていたけれど、それを言うことはありませんでした。
 通学路で会うなんてわたくしを送ってくれた帰りに決まってますもの。
 わたくし少々すねていましたの。
 だって彼女ったら、目の前にいるのはわたくしなのにずっとろくに話もしたこともないような男の話を続けるのですもの。
 どうせいずれは紹介するでしょうし、ほんのちょっとした意地悪ですわ。

 そうして正式に結婚する事が決まったからと紹介したその日の夜。
 彼女は死を選びましたわ。
 ただそれが。
 あの方と結ばれないと言うことに絶望しただけなのか。
 わたくしに対して気を使ったのか。
 あるいは当てつけたのか。
 それが分かりませんの。
 むしろ未練を持ったのはわたくしの方かもしれませんわね。

 共通の知り合いが亡くなったとしても、わたくしだちだけの問題でない結婚話は進んでいきます。

 けれど、永遠を誓う直前。
 前触れもなく割れて降り注ぐスタンドグラス。
 光に照らされてとても綺麗。
 誰も触れていないのに倒れる燭台。
 蝋燭の炎が辺りに燃え移り白いドレスが赤に映える
 ですのでわたくし確信しましたの。
 彼女が来てくれたのだと。
 親友とお好きな方との結婚式ですものね。来ないはずはありませんわ。

 ねぇ、今度こそ教えてくださいな。
 何でも話してくれたじゃないですか。
 わたくし達親友ですもの。
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