あらすじから逆算する『結局悪役令嬢?』

こうやさい

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占い[ライト文芸じゃないなら何だろう?]

大事なものを無くす暗示 前

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 署名捺印をした後顔を上げると、婚約者が顔を輝かせた。
「これを窓口に提出すれば結婚だね」
 はにかむ笑顔はかなり幼く見える。結婚を喜ぶところも含め相当可愛い。
 どう見ても役所に婚姻届けを出しに来たカップルで、恐らく僕は端から見れば幸せな男に見えるだろう。
 僕自身、何も知らなければそうなっていただろうと思う。

 こう見えて彼女は令嬢と呼ばれてもおかしくない人で、そんな人と一般庶民である僕が婚約している理由は、街中ですれ違ったときにお互いに一目惚れした……などという劇的な理由ではなく、幼い頃からの許嫁なのだが、冷静に考えるとそちらの方がよほどあり得ない事ではなかろうか。
 何故そんなことになったかというと…………酒は飲んでも飲まれるなとだけ言っておこう。もちろん僕じゃなくてやったのじーちゃんだけどな。
 そんなわけで酒の勢いなのにお嬢さまの婚約者候補になるという正式な書類が出来上がっていたわけだ。
 そう、候補。
 まぁそれなら選ばれるわけないよねー、話のネタになるよねー……で当人は意味が分かっていないのに一応顔合わせに連れて行かれた当時五歳。
 当のお嬢さまにお相手に選ばれました。
 理由? なんか今日のラッキーカラーの入った服を着てたからだそうで。
 ああそうだね、周り中ぼっちゃんだらけでブレザー姿だから色は限られるよね。庶民のお出かけ着とは違うよねー……うん、保育園入園式の時に買った一応ブレザー今後も着れるようにってでかいの買いすぎて、結局幼稚園入園時にも着れてないんだよ、限度考えろ。
 そんな理由なのでお嬢さまの周りは大反対、お嬢さまはやんわりと説得され……となるはずがならなかった。
 なんでも旧家というのは占いを大切にする傾向があるらしい。……それ、絶対その辺の雑誌の占いだと思うけどいいのか?
 とか突っ込むのはもちろん成長してからで、当時の僕は出されたお菓子の美味さに感動して、婚約の意味も分からず承諾した。莫迦かよ。
 ちなみにうちの方はじーちゃんが一度した約束を反故に出来るかと意地を張った。

 その後、僕が婚約の意味を理解したり、僕が思春期に入ったり、僕が就職に失敗したり……まぁ大概僕が原因でいろいろな問題も起こったか、本日婚姻届けを出しに行くこととなった。
 いろいろと恩恵も受けたし、彼女自身もちょっと占い好きすぎるかなってとこ以外は可愛いし、そこに不満はない。
 で、今日のラッキースポットであるところの公園の噴水前で待ち合わせた。お付き兼ボディーガードの人お疲れ様です。たぶん僕は守る対象に入ってない。
 お嬢さまなので式も披露宴も当然別の日にやるのだが、婚姻届けを出すなら今日がいいと主張され、承諾した。たぶん星の巡りでもよかったんだろう。
「婚姻届け書いて来てくれた?」
「ああ」
 僕のところの署名捺印以外済んだものを渡されたのでただそこを書くだけだった。
 見せようと鞄から取り出す。
 途端に風が吹いた。
 ちょうど二人ともが手を離したタイミングだったのか、見事に飛んでいき噴水に落ちた。
 受験票じゃないにしろ落ちた婚姻届けなど縁起が悪い。おまけに濡れている。まさに水を差されたようなものだろう。
 僕としては書き直す手間と書き直してもらう手間ぐらいの問題だが、彼女にはショックだったに違いない。
 そう思って彼女を見たが、別段特に変わった様子もなかった。自分の鞄から何かを取り出している。
「はい」
 笑顔で渡されたのは、俺の署名捺印以外は済んでいる婚姻届けだった。
「予備」
「あ、りがとう」
 実際助かったわけだが、婚姻届けって予備を用意するものだろうか?
 ……深くは考えまい。幸い印鑑もボールペンも持っている。
「じゃあ書くな」
 ベンチの肘当てに鞄を置いて台代わりにして名前を書く。……当然ながら文字が歪んだ。おまけに滑って枠からはみ出た。これはもう使えないのではなかろうか。
「はい」
 もう一枚、目の前に俺が署名捺印さえすればいい婚姻届けが差し出された。
「……ちゃんと机があるところで書くことにするよ」
 何枚予備があるのかとは怖くて聞けなかった。
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