とある日

だるまさんは転ばない

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深夜の扉

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あれは、もう忘れられない出来事だ。普段はこんなこと、誰にも話さないけど、もし同じ体験をした人がいたら、何か参考になるかもしれないと思って書いてみることにする。

あの日、俺はただ酒を買いに行っただけだった。深夜1時過ぎ、家で一人、どうしてもビールが飲みたくなって、近所のコンビニに向かったんだ。普段から何度も行ってる店だから、特別なことなんて何もないはずだった。けど、その夜だけは違ってた。

店に近づくと、何かがおかしいと感じたんだ。いつもと同じはずのコンビニが、まるで違う場所みたいに見えたんだ。看板の灯りも、どこかぼんやりしていて、まるで夢の中にいるような感覚だった。でも、酔ってたわけでもないし、ただ疲れてるのかなって、そのまま自動ドアをくぐった。

店内は冷えた空気が漂っていて、他に客は一人もいなかった。深夜だから珍しくはないけど、その静けさがやけに気味悪かった。店員がレジにいたんだけど、顔を伏せてじっと動かないんだよ。「いらっしゃいませ」っていう言葉は聞こえたんだけど、その声がまるで録音されたみたいに冷たくて、無機質だったのを覚えてる。

俺は気にせずビールを探して歩いたんだけど、妙なことに気づいたんだ。店の奥、普段は雑誌やお菓子が並んでいる棚のあたりに、見慣れない小さな扉があった。そんな扉、今まで一度も見たことがなかったのに、その時はそこに確かにあったんだ。何かが俺を呼んでるような気がして、俺はビールをカゴに入れると、ついその扉に近づいてしまった。

正直、開けるのは怖かった。でも、どうしても開けずにはいられなくて、そっと手をかけたんだ。扉の向こうはただの倉庫じゃなかった。そこには、妙に長い廊下が伸びてたんだよ。あり得ないだろ?コンビニの奥に、そんな空間があるなんて。でも、その時はただ進むしかなかった。廊下は青白い光に包まれていて、どこか冷たくて、息が詰まるような静けさだった。

足を踏み出すたび、後ろから何かが囁くような気がしたけど、その声の内容は聞き取れなかった。恐怖よりも好奇心が勝ってしまったんだ。どれくらい歩いたか覚えてないけど、やがて古びた部屋にたどり着いた。部屋の中央にはテーブルがあって、その上には一冊の古い本が置かれてたんだ。

俺はなんとなく、その本を手に取ってしまった。これが間違いだったんだ。開くと、表紙には何も書かれていなかったが、中をめくると、俺の名前が書いてあった。しかも、生年月日まで正確に記されていて、ページをめくるごとに、俺のこれまでの人生が詳細に書かれていたんだよ。誰がこんなことを書いたのか、俺にはまったく分からなかった。

そして次のページに進んだとき、心臓が凍りついた。そこには、まだ訪れていないはずの未来が書かれていたんだ。信じられないかもしれないけど、俺の「死ぬ日」がはっきりと記されていた。「2026年6月6日、午前3時42分、橘直人、死す」ってな。

その瞬間、全身が冷たくなって、頭が真っ白になった。これが現実なのか、夢なのかもわからなくて、とにかく逃げ出したくて振り返ったんだけど、廊下が消えていて、俺は闇の中に閉じ込められていたんだ。

「嘘だろ…」って何度も自分に言い聞かせたけど、無駄だった。背後から何かが近づいてくる気配がして、呼吸がどんどん荒くなる。背中に冷たい視線を感じて、振り向きたくなかったけど、どうしても気になってしまった。振り向こうとしたその瞬間、誰かが耳元で囁いたんだ。

「逃げられないよ、橘直人…」

その声は、俺自身の声だった。

目が覚めたら、コンビニの床に倒れてた。周りを見渡すと、いつも通りの店だった。夢でも見てたんだろうか。店員が心配そうに俺を見て、「大丈夫ですか?」って声をかけてきた。俺はビールを手に取ってレジに向かいながら、心の中で「今のは何だったんだ?」って自問してたんだ。

でも、一つだけおかしなことがあった。ポケットの中に、一枚の紙切れが入っていたんだ。それには、あの本に書かれていた「2026年6月6日、午前3時42分」という文字が、しっかりと書かれていた。

あの日以来、俺はあの時間が来るのが怖くてたまらないんだ。時間が迫ってる気がして、何かに追われてる感覚が離れない。だから、これを読んだ人には伝えたい。もし同じような体験をしたなら、決してその扉を開けるなって。俺は、あの未来が本当に来るかどうか、その日まで震えて過ごすしかないのだから。
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