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はじめの一歩
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【プロローグ】
高校は仲のいい友人と同じところにした、部活をやるつもりはなかったが先輩の強引な勧誘で陸上部に入った。担任の先生に勧められるまま大学に入って、無難な企業に就職した。
“僕の人生にいったいどれだけ僕の意思があっただろうか”
そんなこと考えていたら少し笑えてきた。なぜなら僕は今そんな人生に終止符を打とうとしているからだ。
他の誰でもない、僕の意思で一歩を踏み出した。
【今日という日】
今朝はいつも通り06:40には起きていた、天気は快晴。
テレビをつけるといつものように暗いニュース、でも今日はなぜか少し笑えた、ご飯はヨーグルトで済ませた、歯を磨いて顔を洗って髭をそって、髪型を整えてスーツに着替えた。
ここまではいつも通り、否、一つだけいつもと違うところがあった。占いの順位が1位だったことだ。占いの類いは信じないタイプだが1位と言われて悪い気がするはずはない。
戸締まりをしっかりして、いつもより余裕をもって家を出た。お昼までに小腹がすくのでいつもならコンビニでサンドイッチを買うのだが、今日は財布を家に置いてきた。因みに優柔不断な僕は迷う時間がもったいないのでいつも同じものを選ぶようにしている。ラーメン屋なら味噌ラーメン、カフェならアイスコーヒー、そしてサンドイッチならタマゴサンドだ。
苦手なはずの人混みも今日はなんともなかった、自分が変われば世界が変わるとはよく言ったものだ、昨日までと同じ世界とは思えない。彼女にこの世界はどう見えていたのだろうか。
会社に到着。予定より10分も早い、うまれて初めて受付嬢に挨拶をした。このときの僕はいったいどんな顔をしていたのだろうか。
この大きな会社では誰が誰だかわからないのが当たり前で、もし外部の人が入ってきても気づかないのではないかと思う。
今日はエレベーターなんて使わない、僕は階段を一段ずつ踏みしめた。
【彼女という人】
2つ歳上の先輩。優しくて綺麗な人だった。仕事もできて皆から好かれていた。彼女は僕にないものをたくさん持っていた、女性でありながら会社の先頭に立ち指揮をとる姿はさながらジャンヌダルクの様だった。
別に彼女と一緒になれるだなんて思ってはいなかった。彼女には彼女の愛する人がいたからだ。それでも彼女のそばにいたかった。彼女は僕の道しるべだったから。
3階を過ぎる頃、自然と涙がこぼれた
初めて彼女の異変に気づいたのは一年ほど前のことだった、僕にとって彼女が生きる意味だったように、彼女にとってはあの男が生きる意味だったのだろう。
“なんであんな男を好きになったんだ、僕ならあんな思い絶対にさせないのに”そう言えない自分が情けなくて悔しかった。そして彼女の優しさに漬け込んで好き勝手やっている男が憎くてしかたなかった。
5階を過ぎる頃、僕は怒りでおかしくなりそうだった
あの男を殺してやろうか、そう何度も思ったけど、彼女が愛した人を傷つけたら向こうで彼女に会わせる顔がないからやめておくことにした。
本当の幸せとはなんだろう、人はなんのために生きているのだろう、生きることと死ぬことの違いとはなんだろう。
そんなこともうどうでもいいか。
8階を過ぎる頃、僕の心は空っぽだった
【終わりの一歩】
目的地につく頃、僕は不思議な充実感でいっぱいだった
ドアを開け真っ直ぐ進む
空は相変わらずの快晴
ここからだと僕の会社がよく見える
フェンスをこえると下にはたくさんのヒト
自分が変われば世界が変わるって、どんなに世界が変わっても彼女が帰ってこないのなら意味はない
こっちを指差し叫ぶ男、あわてて逃げていく女
ここから飛び降りたら夜空に光る星にでもなりたいが、現実はそう甘くはない、せいぜい今朝みたような暗いニュースになって終わりだ
でも、もし本当に天国とか言うものがあるのならすぐにあなたにあってこの想いを伝えよう
結局、僕は最後まで誰かを道しるべにして生きてきた
でも、あなたを選んだのは紛れもなく僕の意思だ
“僕の人生にいったいどれだけ僕の意思があっただろうか”
そんなこと考えていたら少し笑えてきた。なぜなら僕は今そんな人生に終止符を打とうとしているからだ。
他の誰でもない、僕の意思で一歩を踏み出した。
高校は仲のいい友人と同じところにした、部活をやるつもりはなかったが先輩の強引な勧誘で陸上部に入った。担任の先生に勧められるまま大学に入って、無難な企業に就職した。
“僕の人生にいったいどれだけ僕の意思があっただろうか”
そんなこと考えていたら少し笑えてきた。なぜなら僕は今そんな人生に終止符を打とうとしているからだ。
他の誰でもない、僕の意思で一歩を踏み出した。
【今日という日】
今朝はいつも通り06:40には起きていた、天気は快晴。
テレビをつけるといつものように暗いニュース、でも今日はなぜか少し笑えた、ご飯はヨーグルトで済ませた、歯を磨いて顔を洗って髭をそって、髪型を整えてスーツに着替えた。
ここまではいつも通り、否、一つだけいつもと違うところがあった。占いの順位が1位だったことだ。占いの類いは信じないタイプだが1位と言われて悪い気がするはずはない。
戸締まりをしっかりして、いつもより余裕をもって家を出た。お昼までに小腹がすくのでいつもならコンビニでサンドイッチを買うのだが、今日は財布を家に置いてきた。因みに優柔不断な僕は迷う時間がもったいないのでいつも同じものを選ぶようにしている。ラーメン屋なら味噌ラーメン、カフェならアイスコーヒー、そしてサンドイッチならタマゴサンドだ。
苦手なはずの人混みも今日はなんともなかった、自分が変われば世界が変わるとはよく言ったものだ、昨日までと同じ世界とは思えない。彼女にこの世界はどう見えていたのだろうか。
会社に到着。予定より10分も早い、うまれて初めて受付嬢に挨拶をした。このときの僕はいったいどんな顔をしていたのだろうか。
この大きな会社では誰が誰だかわからないのが当たり前で、もし外部の人が入ってきても気づかないのではないかと思う。
今日はエレベーターなんて使わない、僕は階段を一段ずつ踏みしめた。
【彼女という人】
2つ歳上の先輩。優しくて綺麗な人だった。仕事もできて皆から好かれていた。彼女は僕にないものをたくさん持っていた、女性でありながら会社の先頭に立ち指揮をとる姿はさながらジャンヌダルクの様だった。
別に彼女と一緒になれるだなんて思ってはいなかった。彼女には彼女の愛する人がいたからだ。それでも彼女のそばにいたかった。彼女は僕の道しるべだったから。
3階を過ぎる頃、自然と涙がこぼれた
初めて彼女の異変に気づいたのは一年ほど前のことだった、僕にとって彼女が生きる意味だったように、彼女にとってはあの男が生きる意味だったのだろう。
“なんであんな男を好きになったんだ、僕ならあんな思い絶対にさせないのに”そう言えない自分が情けなくて悔しかった。そして彼女の優しさに漬け込んで好き勝手やっている男が憎くてしかたなかった。
5階を過ぎる頃、僕は怒りでおかしくなりそうだった
あの男を殺してやろうか、そう何度も思ったけど、彼女が愛した人を傷つけたら向こうで彼女に会わせる顔がないからやめておくことにした。
本当の幸せとはなんだろう、人はなんのために生きているのだろう、生きることと死ぬことの違いとはなんだろう。
そんなこともうどうでもいいか。
8階を過ぎる頃、僕の心は空っぽだった
【終わりの一歩】
目的地につく頃、僕は不思議な充実感でいっぱいだった
ドアを開け真っ直ぐ進む
空は相変わらずの快晴
ここからだと僕の会社がよく見える
フェンスをこえると下にはたくさんのヒト
自分が変われば世界が変わるって、どんなに世界が変わっても彼女が帰ってこないのなら意味はない
こっちを指差し叫ぶ男、あわてて逃げていく女
ここから飛び降りたら夜空に光る星にでもなりたいが、現実はそう甘くはない、せいぜい今朝みたような暗いニュースになって終わりだ
でも、もし本当に天国とか言うものがあるのならすぐにあなたにあってこの想いを伝えよう
結局、僕は最後まで誰かを道しるべにして生きてきた
でも、あなたを選んだのは紛れもなく僕の意思だ
“僕の人生にいったいどれだけ僕の意思があっただろうか”
そんなこと考えていたら少し笑えてきた。なぜなら僕は今そんな人生に終止符を打とうとしているからだ。
他の誰でもない、僕の意思で一歩を踏み出した。
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