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4章 聖サンソンと悪魔ダガン
少年の素顔
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ーーー
「いやぁ叩けば埃が出る出る...あの下衆」
ディビドは1週間もしない内にクレメンスの身辺調査をまとめてギュンターに報告していた。証拠もたっぷり持ってである、しかし肝心の悪魔崇拝には辿りつかないようだ、真っ黒ではあるが悪魔崇拝の件に関しては白だった。
「それにしてもよくここまで調べてこられましたね...ディビド殿...」
ギュンターは資料をまじまじと見つめる。
「しかも媚薬と称した違法薬物なども使っている様子ですね、ああこれはその入手ルートです、悪魔崇拝の件が落ち着いたら一網打尽にしてやってください、それとこの蓄音石にあの下衆が話している下衆な内容満載なものが録音されてますので...ちなみにこの詳しい内容はエルマ様には秘密ですよ...こんな汚物エルマ様に聞かせたりしたら汚れてしまいますからね」
秘密ですよ、と笑顔で言ってるように見せかけてるがいつもの糸目が開いており深い紫色の瞳の奥は全く笑っていない。ギュンターは蛇に睨まれた蛙のように本能的な恐怖感じた。
「内容の一部はバーレに送ってクレメンスを教理に反する行為ゆえ追放されるのは確定ですね...ちなみにロストックの法ではこの場合はどんな罰を受ける形になりますか?」
「...そうですね...献金横領に子供達への虐待と違法薬物関連の使用を考えると鞭打ちの後、身分剥奪の上でロストック領からの追放が妥当な所でしょうね...死者が出てたり違法薬物販売に手を染めていれば死罪もあるでしょうが...ただハインリヒ様の判断で更に罰を追加する事は出来るかと...」
「ふむ...そうですか...」
ディビドは少し考え込む...ディビドはクレメンスを絶対に許す事はできなかった...最も大切なエルマを汚そうと考えた気持ち悪い男にはそれ相応の罰を与える必要があると...
ーーー
ディビドがそうやって証拠集めに奔走している間、マックスは合間を縫ってテオドールや南領騎士団の剣士とずっと鍛錬をしていた。
その中にはマルガレーテも共にだ。
今マックスはマルガレーテと模擬戦をしている。
マルガレーテの一族は剣士の憧れとも言える『剣聖』の称号を代々輩出した由緒正しい血筋の女で剣と呼ばれる武器に関してはどれも扱える。
なので今回はマックスと同じ大剣で戦っている。
男性とそこまで身長差のない、むしろマックスより背の高いマルガレーテは片刃の大きめな大剣を両手に構える。
「さぁマックス君、かかってらっしゃい」
そう言われマックスが攻撃に出る、何度も鍔迫り合いが起こるがマックスの方が劣勢になる。
今マックスは大剣を両手で攻防する為の鍛錬中で、大剣を片手で振り回す無理な戦い方を矯正している最中なのだ。
純粋に力の部分では大剣を片手で軽々と扱うマックスの方が上かもしれないが剣の師に従事していたマルガレーテの方が力の加減やその使い方に関しては上である。
「余計な力がかかりすぎる!!」
マルガレーテはマックスの剣撃を交わした瞬間すぐに反撃に出、簡単にマックスの大剣を弾き飛ばす。
「くぅっ!」
「あーあ、まだまだねぇ、マックス君、自分の力に振り回され過ぎよ!」
「もう一度お願いします!」
「さぁまたいくわよ!」
再度剣撃がぶつかり合う。
ーーー数時間後
マックスは息切れしながら地面にべたりと座る。
「随分いい感じになってきたわね、マックス君!」
「いいえ...まだまだです...貴女にまだ一本も取れてはいないし...」
「まぁ今までの自由気ままな剣撃を根本的に変えてやっているもの、ほら井戸に行って水でも飲んで来なさい、ほら立って!」
マルガレーテは手を伸ばす、その手を取ってマックスは立ち上がる。
「それにしても神殿騎士もずっと兜も外さずその鎧のままなんて難儀よねぇ」
「コレが当たり前なのでそうは思いません」
「ふうん」
マックスが井戸へ向かう背を見て、マルガレーテはマックスを後ろから兜を掴んでひょいと脱がす。
「ああっ!」
急に兜が外れてしまった事にマックスは驚き惑い、直ぐに顔を両手で隠す。
「ふうん...まだ子供なのねぇ」
「返して下さい!早く!」
マルガレーテはマックスの顔を一瞬見てまだ幼い顔立ちだなぁと感じた、まぁまだ14歳だ...それなのにほぼ独学でここまでの強さになった事は素直にすごいと思う。
「マルガレーテっ!早く返してやれ!神殿騎士にとって素顔を見せる事は何よりも屈辱なんだぞ!」
近くで見ていたテオドールはそう言って兜を取り戻しマックスに返す。
マックスは直ぐに兜を被り直す。
「済まない...マックス...」
その一瞬見えた顔立ち...髪の色は兎も角まさかよく知っている顔にあまりにも似ていた事に内心テオドールは動揺した。
「マルガレーテさん!冗談でもやめて下さい!もしエルマ様に見られたら僕は護衛騎士から外れなければならない...神殿騎士を辞めなきゃならない掟の元にいるんです!軽々しくその様な事をしないで下さい!」
マックスは涙声で怒りを露わにする。
「ご...ごめん」
マルガレーテは目を逸らしマックスに謝る。
「...マックス済まない、俺がマルガレーテに神殿騎士の掟を伝えていないばかりに...」
テオドールはマックスに謝る。
「...いえ...僕も気を緩め過ぎました...もう二度とこのような事をしないで頂ければそれで良いです」
マックスはそう言ってその場を立ち去ろうとする。
「...ところでマックス...つかぬ事を聞くが君のご両親のご出身は」
「はい?小さい頃に亡くなったのですが父はバーレ出身の元神殿騎士で母は王都付近のリーネ村生まれだと聞いていますが?」
「ああ...いや...そうか....」
テオドールはある可能性を考え、後で兄のロストック卿ハインリヒにその事を伝えなくてはと思った。
ーーーーー
※ゲーム豆知識
剣聖
ナイト以上かつ装備可能武器マスターになると剣聖の称号が手に入る。
剣聖になると各パラメータが上がるのでアタッカー系は装備可能武器マスターを狙うプレイヤーは多い。
「いやぁ叩けば埃が出る出る...あの下衆」
ディビドは1週間もしない内にクレメンスの身辺調査をまとめてギュンターに報告していた。証拠もたっぷり持ってである、しかし肝心の悪魔崇拝には辿りつかないようだ、真っ黒ではあるが悪魔崇拝の件に関しては白だった。
「それにしてもよくここまで調べてこられましたね...ディビド殿...」
ギュンターは資料をまじまじと見つめる。
「しかも媚薬と称した違法薬物なども使っている様子ですね、ああこれはその入手ルートです、悪魔崇拝の件が落ち着いたら一網打尽にしてやってください、それとこの蓄音石にあの下衆が話している下衆な内容満載なものが録音されてますので...ちなみにこの詳しい内容はエルマ様には秘密ですよ...こんな汚物エルマ様に聞かせたりしたら汚れてしまいますからね」
秘密ですよ、と笑顔で言ってるように見せかけてるがいつもの糸目が開いており深い紫色の瞳の奥は全く笑っていない。ギュンターは蛇に睨まれた蛙のように本能的な恐怖感じた。
「内容の一部はバーレに送ってクレメンスを教理に反する行為ゆえ追放されるのは確定ですね...ちなみにロストックの法ではこの場合はどんな罰を受ける形になりますか?」
「...そうですね...献金横領に子供達への虐待と違法薬物関連の使用を考えると鞭打ちの後、身分剥奪の上でロストック領からの追放が妥当な所でしょうね...死者が出てたり違法薬物販売に手を染めていれば死罪もあるでしょうが...ただハインリヒ様の判断で更に罰を追加する事は出来るかと...」
「ふむ...そうですか...」
ディビドは少し考え込む...ディビドはクレメンスを絶対に許す事はできなかった...最も大切なエルマを汚そうと考えた気持ち悪い男にはそれ相応の罰を与える必要があると...
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ディビドがそうやって証拠集めに奔走している間、マックスは合間を縫ってテオドールや南領騎士団の剣士とずっと鍛錬をしていた。
その中にはマルガレーテも共にだ。
今マックスはマルガレーテと模擬戦をしている。
マルガレーテの一族は剣士の憧れとも言える『剣聖』の称号を代々輩出した由緒正しい血筋の女で剣と呼ばれる武器に関してはどれも扱える。
なので今回はマックスと同じ大剣で戦っている。
男性とそこまで身長差のない、むしろマックスより背の高いマルガレーテは片刃の大きめな大剣を両手に構える。
「さぁマックス君、かかってらっしゃい」
そう言われマックスが攻撃に出る、何度も鍔迫り合いが起こるがマックスの方が劣勢になる。
今マックスは大剣を両手で攻防する為の鍛錬中で、大剣を片手で振り回す無理な戦い方を矯正している最中なのだ。
純粋に力の部分では大剣を片手で軽々と扱うマックスの方が上かもしれないが剣の師に従事していたマルガレーテの方が力の加減やその使い方に関しては上である。
「余計な力がかかりすぎる!!」
マルガレーテはマックスの剣撃を交わした瞬間すぐに反撃に出、簡単にマックスの大剣を弾き飛ばす。
「くぅっ!」
「あーあ、まだまだねぇ、マックス君、自分の力に振り回され過ぎよ!」
「もう一度お願いします!」
「さぁまたいくわよ!」
再度剣撃がぶつかり合う。
ーーー数時間後
マックスは息切れしながら地面にべたりと座る。
「随分いい感じになってきたわね、マックス君!」
「いいえ...まだまだです...貴女にまだ一本も取れてはいないし...」
「まぁ今までの自由気ままな剣撃を根本的に変えてやっているもの、ほら井戸に行って水でも飲んで来なさい、ほら立って!」
マルガレーテは手を伸ばす、その手を取ってマックスは立ち上がる。
「それにしても神殿騎士もずっと兜も外さずその鎧のままなんて難儀よねぇ」
「コレが当たり前なのでそうは思いません」
「ふうん」
マックスが井戸へ向かう背を見て、マルガレーテはマックスを後ろから兜を掴んでひょいと脱がす。
「ああっ!」
急に兜が外れてしまった事にマックスは驚き惑い、直ぐに顔を両手で隠す。
「ふうん...まだ子供なのねぇ」
「返して下さい!早く!」
マルガレーテはマックスの顔を一瞬見てまだ幼い顔立ちだなぁと感じた、まぁまだ14歳だ...それなのにほぼ独学でここまでの強さになった事は素直にすごいと思う。
「マルガレーテっ!早く返してやれ!神殿騎士にとって素顔を見せる事は何よりも屈辱なんだぞ!」
近くで見ていたテオドールはそう言って兜を取り戻しマックスに返す。
マックスは直ぐに兜を被り直す。
「済まない...マックス...」
その一瞬見えた顔立ち...髪の色は兎も角まさかよく知っている顔にあまりにも似ていた事に内心テオドールは動揺した。
「マルガレーテさん!冗談でもやめて下さい!もしエルマ様に見られたら僕は護衛騎士から外れなければならない...神殿騎士を辞めなきゃならない掟の元にいるんです!軽々しくその様な事をしないで下さい!」
マックスは涙声で怒りを露わにする。
「ご...ごめん」
マルガレーテは目を逸らしマックスに謝る。
「...マックス済まない、俺がマルガレーテに神殿騎士の掟を伝えていないばかりに...」
テオドールはマックスに謝る。
「...いえ...僕も気を緩め過ぎました...もう二度とこのような事をしないで頂ければそれで良いです」
マックスはそう言ってその場を立ち去ろうとする。
「...ところでマックス...つかぬ事を聞くが君のご両親のご出身は」
「はい?小さい頃に亡くなったのですが父はバーレ出身の元神殿騎士で母は王都付近のリーネ村生まれだと聞いていますが?」
「ああ...いや...そうか....」
テオドールはある可能性を考え、後で兄のロストック卿ハインリヒにその事を伝えなくてはと思った。
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※ゲーム豆知識
剣聖
ナイト以上かつ装備可能武器マスターになると剣聖の称号が手に入る。
剣聖になると各パラメータが上がるのでアタッカー系は装備可能武器マスターを狙うプレイヤーは多い。
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