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終章 晴れて自由の身になれたのだ!

あはははは!自由だぁ

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「きっとこの街道を進むと分かれ道があるから北へ行けばウルム方向へ向かうんだろうなぁ」

地図を見ながらぽてぽてと歩く。

「ああウルム方向へ行くならすぐの街で乗合馬車に乗るといいですよ」

「あ!ありがと...ぎゃっ!」

地図から顔を上げるとニコニコした見覚えのある糸目の優男が宣教師の格好で立っていた。

「デ...ディビド...」

後退りするとドン、と人にぶつかる。

「うう、ごめんなさい..ぎゃっ!」

そこにはマックス氏が神殿騎士の鎧を着て立っていた、ちなみに兜は外している。

「マックス氏...なんで???」

「まぁきっと事が落ち着いたらきっとどこか逃げるかなぁと思ってたんですよねぇ...最近やたらと地図とか買っている姿を見てましたし」

とディビドがニコニコしながらもその紫色の瞳は笑ってない...えええ...見てたのぉ。

「毎日ピッピちゃんの散歩がてらにバーレ付近まで飛んでたんですが窓から抜け出す姿が見えたので」

そうマックス氏もニコニコ言ってるけどこっちも目が笑ってない...って毎日王都からバーレまで通ってたとぉ!

「私はヘルムート様に婿になるならと領地経営の勉強がてらに仕事等の手伝いさせられていた中エルマ様ときたら、まさかウルムへ行きたいなら直ぐにでも連れて行って差し上げたのに...」

はぁ、とディビドはため息を吐く。

「僕毎回手紙を書いてたのに旅に出る話なんて一回もしなかったなんて...寂しいですよ...」

とマックス氏もため息を吐く。

「いやぁだって2人とも忙しそうだし...自分探しの旅ってほら一人旅がセオリーだし...」

「ふうん...忙しそうに見えたから逃げるチャンスと思ってたんじゃないですか?」

「そうですよね、確かエルマ様『アスモデウスを倒したら考えて答えを出す』って言ってましたもんね...まさか逃げるが答えとか...」

「ううう...」

ジリジリと2人が怪訝そうな顔で近づいてくる...まずい...

「逃げるんでしたらねぇ...もういっそマテウスが用意してくれるって言ってましたウルムの屋敷に閉じ込めてしまいましょうかねぇ」

「はぁ?エルマ様はトラウゴット教から離れたテルニで僕と2人で慎ましい生活を送るんだ!まぁエルマ様目立つから家に閉じこもって貰うけど!」

おおお...何だか2人とも閉じ込めるとか滅茶苦茶不穏な話になってるよぉ...

「ほぉ...このヘタレ馬鹿王子ご自分の立場ってモノを理解してらっしゃらない様ですねぇ」

「はぁ?いつの間にかヘルムート様に取り入りやがってこのなまぐさ変態異端審問官め!」

2人が向かいあって睨み合ってる...

「ピィ?」

後ろでピッピちゃんがつんつんと背中を突いてきた。

「ん?何何?」

「ピィ?ピッ?」

ピッピちゃんはこんなヤンデレ共危険だから逃げた方がいいよ、なんなら背中に乗る?と言ってる。

「え!いいの?マックス氏に怒られない???」

「ピ!ピィピィ!」

ピッピちゃんが執念深い男達なんてちゃんと反省しなきゃダメだから!一旦頭冷やさせなきゃ!と言ってる、だからそーっと2人が言い合いしている内に背中にのせてもらう。

「はっ?ピッピちゃん!」

「エルマ様!」

マックス氏とディビドが気がつく!

「じゃあね!満足したらちゃんとバーレに戻って来るから!」

ピッピちゃんが大きく翼を羽ばたかせて高く飛び立つ!

「こらっ!ピッピちゃん降りてこい!」

「この駄獣が!さっさと降りてエルマ様を返せ!」

「ピィッ!」

そんな事聞いたこっちゃないってふぃっと横を向いて飛び立つ。

「待てぇ!」

2人が走って追いかけるがピッピちゃんの速度に敵うわけない!

「ピッピちゃんありがとう!」

「ピ!」

どういたしまして!とピッピちゃん。

「あのねあのね!私カニが食べたいの!だからウルム近くの街に連れて行って!」

「ピィ?」

カニって何?美味しいの?って聞いてくる。

「え?ピッピちゃんもカニ食べてみたいの?いいよぉ!美味しいから一緒に食べよ!お金はたんまり持ってるからたくさん食べても大丈夫だよぉww」

「ピィッ!」

一緒に食べよう食べよう!とピッピちゃん。

ピッピちゃんは加速してびゅっと飛んでいく!

「あはははは!自由だぁ!」

────

「くっそう...まさか身近に敵がいたとは...」

ぜぇぜぇと息を切らせながらマックスは言う。

「全く!駄獣をしっかり躾けないから!」

ディビドは息を切らせながらマックスの頭をバシっと叩く。

「僕確かにビーストライダーになったしピッピちゃんと言葉は通じなくても意思疎通できると思ってたけど...エルマ様どうやらピッピちゃんと完全に会話できるんだもの...女の子同士だからピッピちゃんはしゃいじゃって...くぅぅ」

「そう言う問題じゃ無いんです...はぁ...まぁ行き先はきっとウルム国境の街でしょうしね...なんかカニカニ言ってましたからね...今から乗り合い馬車で向かえば...」

「でもまた逃げられるんじゃ...」

「追わずして待てと?あの天然箱入り娘でご自身の事とんでもないむっちり系な男好みの体型の美少女だと自覚してないエルマ様の事を男共が放っておくと思いますか?」

「はっ!」

そうなのだ...エルマはただでさえ美少女なのにお色気お姉さん宜しく胸も大きいし女性らしいくびれに安産型のお尻のむっちりバディ...まぁ普通男が放っておくはずが無い。

「まぁ半分は私達がライバルを全員半殺しにしたせいでもありますが...男ばかりだったけど修道士とか神殿騎士とか弁えた連中とばかりしか付き合いが無かった純粋培養ですよ?しかもウルムの海周辺の連中は軟派な奴らが多いんです!」

「まずい!まずいじゃないか!ディビド!!!」

マックスが顔を青くして慌てふためく。

「だから言ってるんです!一人旅なんてさせられないって!」

そう言って2人は街道を走る、近くの街へ入って速攻乗り合い馬車に乗ってウルム国境付近の街へ向かうために。

────

ウルム国境付近の港町へあっと言う間に着いた、ピッピちゃんすごい!

降り立って1人と1匹街を歩く、流石にグリフォンなんて珍しいのかみんな目をまん丸くしてこっちを見る。

まぁ騎獣自体はそんなに珍しい訳じゃ無いから堂々と街中を歩く。

「ピ?ピィピィ??」

ピッピちゃんがエルマさんにマックス氏とディビドのどっちが好きなの?結婚するんだったらどっちなの?と聞いてくる。

「どっちと結婚するのって...うーんそうだねぇ...」

とゴニョゴニョとピッピちゃんにだけ教える。

「ピィ?」

ええ!本当に?とピッピちゃんが言う。

「ふふっ、秘密だよ?」

「ピ!」

絶対秘密にするってピッピちゃんが約束してくれる。

「きっと誰よりも好きではあるんだけどね...でもまだ結婚とか子供とか考えられないし、短い間だけかもだけど私まだまだ自由を謳歌したい年頃なのよww」

「ピィ!」

そうだよね!とピッピちゃんが同意する。

「さてさて!まずはカニ!カニをたくさん食べるよww」

そう言って港方向へ足を運ぶ!そっちにカニが食べられる食堂があるってガイドブックに書いてたからね!

「カニを食べたら今度はどこに行こうかなぁw」

「ピピ!」

「果物の美味しい所???じゃあ次はライゼンハイマーに行く?実家がそこにあるんだけどね、りんごの名産地なんだよぉ!ぶどうもあるしアップルパイも美味しいし!」

「ピ!」

りんご大好き!とピッピちゃん。

「じゃあカニや魚介を十分に楽しんだらそっちに行こうね!」

ピッピちゃんの頭を撫でる。

「ピィ!」

ピッピちゃんが頬ずりしてくる、大型騎獣の頂点とも言えるグリフォンだけどすごいかわいいww

そんな感じで街中を歩き続けると何人かの男の人に声をかけられる、ん?ナンパ???何だか軽いなぁ...でも...

「えへへ、もう心の中で決まってる人がいるから無理!じゃあね」

そう言って断る、再度声をかけようとするもピッピちゃんが睨みを効かせるからそれ以上は声をかけてこない。

バーレに帰ったら彼にお土産話をいっぱいしよう、そしてちゃんと答えようと思ってる...貴方の事が大好きだし愛してるって!まぁそこまで待ってくれてればだけどね。

空は青いしどこまでも広い...今はとにかく自由を謳歌させて貰おう、だって『ミスタク』からの『運命』をぶち壊して得られた自由と平和なんだもの!


─おわり─
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