おしゃぶりを咥えたイケメン

ハル

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空の巻

1. 誕生の時

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 西野かえでと旦那の守には、子供がいなかった。
結婚して9年、楓も40歳になろうとしていて、今年こそと思っていると、2月に念願の妊娠の兆候があったのだ。

やっと授かったこの命、大事に育てようと夫婦二人で泣いて喜んだ。

暑かった8月も終わり、9月の初旬に無事出産し、待ち望んだ子が産まれたが普通の子と少し違ったように楓達は感じた。
それは、泣き声が凄く小さいのだ。

他の保育器の子と比べての事だったが、やはり声が小さい、それでも、やっぱり自分の子が一番可愛いと思った。

自宅に帰ってからの生活は、思っていたより大変だけど、ソラは、本当にいい子で楽だった。

そうそう子供の名前は、産まれてから三日三晩主人が寝ずに考えたらしい。

名前の候補は、産まれてくる子は、男でも女でもどっちでも使える名前で考えてて、私達夫婦も一文字なので一字とするなどなど…

我が家にとっては、子供は希望の光だったので"光"と書いて"ひかる"。

子供が私達夫婦の"希望きぼう"から一字とって"のぞみ"とか、何故か私達夫婦寄りの名前になっていると、主人に入院中の病院からダメ出しの電話を掛けたのも懐かしい思い出となった。

あとは、初めての子だから"一"と書いて"はじめ"とかあったが、私の頭からは抜け落ちていた。

最終的に"光"は、西野光という呼び名が芸能人みたいで却下し、"のぞみ"は名字と合わせると""で、のが2つ続くので却下した。

その事を主人に伝えると、
「そらないでぇ…」と言われた時、

「そう!…ソラじゃだめ?」と逆に聞き返した。

「そら良かった」と駄洒落だじゃれで返してきた。

そして、9月9日生まれの西野ソラで出生届を提出した。

~~~
一年後
~~~

 産まれてから1年が過ぎ9月9日のソラの誕生日に主人の母がプレゼントを持ってやって来たので、楓は形式的な挨拶で出迎えた。

「お母さん、遠いところすいません」

「いいのよ、楓さん、可愛い孫の誕生日ですからね…」

主人の母を居間へ案内した。

居間では主人がソラをあやしていた。

「ソラ、おばあちゃん きたよ~」

「…」

ソラがぐずり出した。

楓が台所で料理を盛り付けてると、"ピンポン"とインターフォンが鳴った。

宅配便業者が荷物を届けてくれた。

ソラ宛ての荷物だった。

何処からだろう?伝票を見ても宛先が水で濡れたようににじんで最後の協会だけが読み取れた。

荷物を持って、ソラ達のいるリビングに行き、守にソラ宛ての荷物が届いた事を伝えて渡した。

中身は赤ちゃんのおしゃぶりだった。

姑が

「あら~、良かったわねぇ~、ソラぁ」

治ってたソラがまたぐずり出した。

「ソラは人見知りなのかねぇ、おばあちゃんちょくちょく来るようにするからねぇ」と

更に大きくソラがぐずった。

「うっ、もう!」と少し気分を害した様だ。

楓も少し離れて姑から見えない所で"クスッ"と笑った。

料理とケーキをお盆に乗せてリビングに持って行った。

この時、ソラはおしゃぶりを口に咥えていた。

「お待たせしました。」

誕生日ケーキを口に運びながら姑が

「楓さん、今まで暑かったから外に出るのも大変だったでしょうが、これからは過ごしやすくなるでしょうから、もっとソラを外に出して色んな人と接触しないと…人見知りが…」

ソラが、姑の方を見た。

するとポロッとケーキが洋服に落ちた。

「まぁ、私ったら、落としちゃって…楓さん、タオル持ってきて」

タオルを手渡すと今度は

手が勝手に動くのか?洋服に着いたクリームを塗り広げている。

「あら、嫌だ、どうなっちゃったの?」

ソラが"ケラケラ"笑っている。

姑は自身の変な行動に首を傾げながら、途中退席して帰ってしまった。

この時、守は、ソラの特殊能力には気付いていなかった。
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