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第13話
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『できたので取りに来て~』
「お、やっとか!」
宿のベッドの上でゴロゴロと惰眠をむさぼっていたところ、くろねからメッセージがとどいた。こうして、私のしばしの休息は終わりを迎えたわけだ。
このゲームにはゲーム内でインターネットを使える機能があるので、その機能を使ってだらだらとアニメを見ていた私は、気がつけば私がまだ外の世界にいた頃にリアタイしていたアニメをいくつか見終えてしまっていた。
よいしょっとおっさんらしい声を出してベッドから起き上がると、ささっと外行きの装備に着替えて早速くろね武具店へと向かった。
「久しぶり~」
「あ、ハルちゃんおひさ~! ごめんね、思ったより時間かかっちゃって」
「ああ、全然気にしないで。出来が良ければオールオッケーだから!」
私がそう言うと、ふっふっふとにやにやしながらくろねは完成品を取り出した。
「じゃじゃーん」
カウンターの上に並べられた私専用の装備の数々、基本的に黒を基調とした色使いだが、全体的に高級感があり、かっこいい品だ。
ただ、その中でもどことなくおしゃれでかわいさもあって、さすがはくろね、センスがあるといった感じだ。特に気に入ったのは防具。
他のジョブとは違い、金属を主軸とはしていないメインが布で出来た装備だ。
これは隠密行動をするときにカチャカチャと音が鳴らないようにするためだ。
今まではオレンジと黒で若干目立っていた私の服装が、これにて目立たない地味なものへと早変わり。そう、今日から私の服は黒と抹茶色。シックでかっこいい女忍者と変貌するのである。
「どうどう?」
「うんうんうん、期待以上かも……」
「そぉ? じゃあさ、ちょっときてみてよ!」
と言われたので、促されるように装備してみる。
……そして、着てみて驚いた。
「……サイズぴったり」
「でしょ?」
「いやキモ~~」
「えーーー?! なんで?!」
測ってもないのにサイズがぴったりなことに若干のキモさを覚え、思わずそれを口に出してしまった。
きれいなビブラートと共に発せられたその一言に、くろねは驚愕している。「何がきもいの?! ねぇ?! ねぇ?!」とカウンターから身を乗り出しては問いかけてきている。
「いやいや、なんで測ってないのにサイズぴったりなの? なに? 視姦されてた? 私!」
「はぁ?! してないから! いやいやいや、普通に鑑定だから!」
必死こいて自身の無実を主張してくるくろねが、面白くて面白くて仕方がない。
「ふははっ、冗談冗談」
「もう、やめてよね。まるで私が変態みたいじゃない」
「冗談だって、ごめんよ~。――――それにしても、やっぱり着心地が良いね。昔から着慣れていたみたいなフィット感がある」
「そりゃそうでしょう。なんて言ったってこのゲームで1番の実力者であるこの私が、この私が手作業で丁寧に作り上げた渾身の逸品なんだから」
そう、腰に手を当ててはまな板を前へ突き出してくる幼き少女、顔を見ればまるで競馬の単勝を当てたときのような絶妙などや顔を披露してくる。
「こんなキャラだったっけ?」
「いやいや、別に良いでしょ渾身のデキなんだから!」
そうぷりぷりと頬を膨らませるが、実際品質が果てしなく良いので素直に褒めることにした。ちなみに、少し調子に乗ったことを軽く恥ずかしいと思っているようで、若干耳が赤くなっている。
指摘したらかわいそうなので黙ってあげる。
「はぁ……。まあそだね。正直めちゃくちゃ良いよ。この武器も手に馴染む」
そう言って、カウンターの上に置かれていた忍者刀をにぎにぎとすると、やはり昔から使っていたかのように手に馴染む。それに、明らかに重さが今までの半分くらいで、華奢な私にとっては非常にありがたい。
軽く素振りをしてみると、ヒュンという音を立てながら空を切り、室内の照明の光を僅かに反射し黒光りするその刀身のテカリ具合は、さながらアレの様――――
「ちょっと、私の渾身の一振りを黒光り虫太郎に例えるのは止めてもらえる?!」
「なにその黒光り虫太郎って」
「ゴキブリだけど。ていうか刀身とゴキブリは全然似てないから!
まったく、止めてよねほんと」
よくわからない方向へと話が逸れたので、ひとまず軌道修正。
「で、これからどうするの?」
「そうだね、思ったより一般リリース開始まで期間がないから、さっさと10層に到達して後はレベル上げかな」
「そっかぁ。じゃあ10層付いたら教えてね」
「あれ? もうくろねは10層行ってるんだよね?」
「そうだね。私はパーティー組んでの攻略だったけど、今の時点でレベルが29もあるなら十分1人でも攻略出来るはずだよ」
「分かった。じゃあサクッと攻略してくるね」
私は24時間フルタイムでログアウトし続けるネトゲ廃人なので、初日からの参加ではないとは言えども既にトップクラスのレベルらしい。以前もあったように戦闘系の職業と生産系の職業ではレベルの上げ方や難易度が異なっているので純粋に比較は出来ないのだが、このゲームの中で最もレベルが高いのがくろねらしい。
戦闘系だと現状はリーフコメットというギルドに所属しているミラというプレイヤーが一番高いらしく、レベルが34だそうだ。とは言っても、彼女の職業は魔女で、生産職としての側面もある職業だから、女忍者と比較出来るかと言われればこれまたそうではないらしい。
あとはフリーのプレイヤーのフィレインという人がゴリゴリの戦闘系職である片手剣士でレベル31だそう。彼はなかなかの作業中で変態だから……、とくろねがぼそり。どうやら面識があるらしい。
とまあ、そういうことからも考えて、私は現状でも相当上位のプレイヤーであるそうだ。
「ていうかくろね凄いね」
「まーねー、なんて言ったって、初日勢だからね」
そういうと、軽やかにターンしてはウィンクして自慢げにそう言った。
「まあ見てなって、すぐ抜かしてあげるから」
「まあ、抜かせるものならやってみな」
「ほぉ、ネトゲ廃人舐めんなよ」
「自分で名乗るなよ」
「お、やっとか!」
宿のベッドの上でゴロゴロと惰眠をむさぼっていたところ、くろねからメッセージがとどいた。こうして、私のしばしの休息は終わりを迎えたわけだ。
このゲームにはゲーム内でインターネットを使える機能があるので、その機能を使ってだらだらとアニメを見ていた私は、気がつけば私がまだ外の世界にいた頃にリアタイしていたアニメをいくつか見終えてしまっていた。
よいしょっとおっさんらしい声を出してベッドから起き上がると、ささっと外行きの装備に着替えて早速くろね武具店へと向かった。
「久しぶり~」
「あ、ハルちゃんおひさ~! ごめんね、思ったより時間かかっちゃって」
「ああ、全然気にしないで。出来が良ければオールオッケーだから!」
私がそう言うと、ふっふっふとにやにやしながらくろねは完成品を取り出した。
「じゃじゃーん」
カウンターの上に並べられた私専用の装備の数々、基本的に黒を基調とした色使いだが、全体的に高級感があり、かっこいい品だ。
ただ、その中でもどことなくおしゃれでかわいさもあって、さすがはくろね、センスがあるといった感じだ。特に気に入ったのは防具。
他のジョブとは違い、金属を主軸とはしていないメインが布で出来た装備だ。
これは隠密行動をするときにカチャカチャと音が鳴らないようにするためだ。
今まではオレンジと黒で若干目立っていた私の服装が、これにて目立たない地味なものへと早変わり。そう、今日から私の服は黒と抹茶色。シックでかっこいい女忍者と変貌するのである。
「どうどう?」
「うんうんうん、期待以上かも……」
「そぉ? じゃあさ、ちょっときてみてよ!」
と言われたので、促されるように装備してみる。
……そして、着てみて驚いた。
「……サイズぴったり」
「でしょ?」
「いやキモ~~」
「えーーー?! なんで?!」
測ってもないのにサイズがぴったりなことに若干のキモさを覚え、思わずそれを口に出してしまった。
きれいなビブラートと共に発せられたその一言に、くろねは驚愕している。「何がきもいの?! ねぇ?! ねぇ?!」とカウンターから身を乗り出しては問いかけてきている。
「いやいや、なんで測ってないのにサイズぴったりなの? なに? 視姦されてた? 私!」
「はぁ?! してないから! いやいやいや、普通に鑑定だから!」
必死こいて自身の無実を主張してくるくろねが、面白くて面白くて仕方がない。
「ふははっ、冗談冗談」
「もう、やめてよね。まるで私が変態みたいじゃない」
「冗談だって、ごめんよ~。――――それにしても、やっぱり着心地が良いね。昔から着慣れていたみたいなフィット感がある」
「そりゃそうでしょう。なんて言ったってこのゲームで1番の実力者であるこの私が、この私が手作業で丁寧に作り上げた渾身の逸品なんだから」
そう、腰に手を当ててはまな板を前へ突き出してくる幼き少女、顔を見ればまるで競馬の単勝を当てたときのような絶妙などや顔を披露してくる。
「こんなキャラだったっけ?」
「いやいや、別に良いでしょ渾身のデキなんだから!」
そうぷりぷりと頬を膨らませるが、実際品質が果てしなく良いので素直に褒めることにした。ちなみに、少し調子に乗ったことを軽く恥ずかしいと思っているようで、若干耳が赤くなっている。
指摘したらかわいそうなので黙ってあげる。
「はぁ……。まあそだね。正直めちゃくちゃ良いよ。この武器も手に馴染む」
そう言って、カウンターの上に置かれていた忍者刀をにぎにぎとすると、やはり昔から使っていたかのように手に馴染む。それに、明らかに重さが今までの半分くらいで、華奢な私にとっては非常にありがたい。
軽く素振りをしてみると、ヒュンという音を立てながら空を切り、室内の照明の光を僅かに反射し黒光りするその刀身のテカリ具合は、さながらアレの様――――
「ちょっと、私の渾身の一振りを黒光り虫太郎に例えるのは止めてもらえる?!」
「なにその黒光り虫太郎って」
「ゴキブリだけど。ていうか刀身とゴキブリは全然似てないから!
まったく、止めてよねほんと」
よくわからない方向へと話が逸れたので、ひとまず軌道修正。
「で、これからどうするの?」
「そうだね、思ったより一般リリース開始まで期間がないから、さっさと10層に到達して後はレベル上げかな」
「そっかぁ。じゃあ10層付いたら教えてね」
「あれ? もうくろねは10層行ってるんだよね?」
「そうだね。私はパーティー組んでの攻略だったけど、今の時点でレベルが29もあるなら十分1人でも攻略出来るはずだよ」
「分かった。じゃあサクッと攻略してくるね」
私は24時間フルタイムでログアウトし続けるネトゲ廃人なので、初日からの参加ではないとは言えども既にトップクラスのレベルらしい。以前もあったように戦闘系の職業と生産系の職業ではレベルの上げ方や難易度が異なっているので純粋に比較は出来ないのだが、このゲームの中で最もレベルが高いのがくろねらしい。
戦闘系だと現状はリーフコメットというギルドに所属しているミラというプレイヤーが一番高いらしく、レベルが34だそうだ。とは言っても、彼女の職業は魔女で、生産職としての側面もある職業だから、女忍者と比較出来るかと言われればこれまたそうではないらしい。
あとはフリーのプレイヤーのフィレインという人がゴリゴリの戦闘系職である片手剣士でレベル31だそう。彼はなかなかの作業中で変態だから……、とくろねがぼそり。どうやら面識があるらしい。
とまあ、そういうことからも考えて、私は現状でも相当上位のプレイヤーであるそうだ。
「ていうかくろね凄いね」
「まーねー、なんて言ったって、初日勢だからね」
そういうと、軽やかにターンしてはウィンクして自慢げにそう言った。
「まあ見てなって、すぐ抜かしてあげるから」
「まあ、抜かせるものならやってみな」
「ほぉ、ネトゲ廃人舐めんなよ」
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