死ねない少女は異世界を彷徨う

べちてん

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第3章

第48話

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「やっぱり結構ほこりっぽいな」

 先ほどの場所よりバックヤードはほこりっぽい感じがした。ただそれでも長年放置されてきたとは思えないほどきれいだ。何かしらの保存魔法が掛かっているのかもしれない。

 暗く閉鎖的なバックヤード。裏にはおそらく修理をしていたのであろう本や、入荷したであろう本が並べられていた。一部の本は修理が出来ていなく、ボロボロになった状態で机の上に放置されている。
 この文明がどうやって滅んだのかは分からない。ただ修理が途中と言うことは何かがあってそれどころではなくなったのか、それとも突如として人がいなくなってしまったのか。
 それに関しては分かりかねる。



 私が魔法を使っているため、バックヤードと言っても辺りは明るくなっているが、それが余計に気味悪く映る。こんなに閉鎖的でホコリが溜まっているのに、まるで外にいるかのように明るいのだから。
 歩く度に溜まっていたホコリが舞って、キラキラと照らされている。汚いものなはずなのになぜかきれいに映るのだから不思議だ。

 表の床はカーペットだったのだが、バックヤードに来ると木製。コツコツと音を立てながら奥へ奥へと進んでいる。本当に図書館として使われていたのだろうなという生活感あふれる感じ。
 廊下の端の方に目をやると机があって、その上に乱雑にメモが散らかっていたりする。

 そうしてキョロキョロとしながら歩いていると、突如として右側に大きめの扉が現れた。
 その扉の前には何やら白いものが布に包まれるようにして横たわっていた。まるでこの扉を守っているかのように。

 案の定その白いものは骨で、おそらくこれが重要文献を保存していたところ。
 その骨はもう完全に乾ききっていて、服であろう布もいまや虫食いが激しくてボロボロになってしまっている。本当にここはいつ滅んだ文明なのだろうか。



 大きな扉には厳重に鍵が掛かっているらしい。おそらく木で出来ているのだろうが、ガチガチに金属で補強されている。鍵穴もいくつか付いていて、簡単に開けられるようにはなっていない。
 まあこんな鍵、私にとってはないと同等である。

 鍵穴を塞ぐように人差し指をあて、その指から土魔術でちょちょっと鍵穴を回す。
 それをもう何カ所かやるだけだ。

「はいあいた」

 カチャリと鍵が開き、重い扉をゆっくりと開けていく。

「あ、生きてる」

 扉が開いた瞬間、室内に明かりが灯った。おそらくまだ文明が滅んでいなかったときに作られていた設備が機能していたのだろう。
 パッと明るくなった室内。先ほどまで私が使っていたギラギラの魔法とはまた違う、ほのかに温かみのあるその明かりは、なんとなく高級感を生み出している。
 別にこんな書庫に高級感を求めて何になるんっていう感じだが、ゴージャスな方がうれしいものである。



 重要文献ってどの辺りからそうするのか。私はそういう基準はよく分からない。脳内でばっと浮かんでいるのは国家機密に関すること。
 そんな国家機密に関することを図書館に保管するか? とも思っているのだが、どうも町をぐるっと回ってみた感じ、特別大きな洋館であったり白であったりというものがなかった。
 となると、王政というような形はとっていなかったのではないかと推測できる。ならば文献を図書館に保管するというのもあり得る。

 軽く歩きながら目を通しているが、書籍以外にも資料のようなものもあった。中は結構広くて、立方体の部屋の中にびっしりと本が敷き詰められている感じ。上にあるものは入り口付近に置かれているはしごを使ってとるのだろう。

「ちょっと軽く漁ってみるかぁ」

 そんな軽い気持ちで、私は重要文献に手をつけだした。
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