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冥土
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馬鹿みたいに暑くて、頭が狂いそうになったある夏に、東京行きの急行列車に友人が轢かれて死んだ。しばらく経ってから彼から手紙が来て、「冥土は居心地が良い。酒もあるし、飯も色々ある。貴君も是非来ると良い。」そう言った感じだった。その友人からの手紙は色んな人にも届いたらしく、次の週からどんどん東京行きの急行列車に轢かれて、死んでいった。どんどん友人が死んで行った翌々週くらいに饂鱈さんが家を訪ねて来た。「最近ね、良くね、人が死ぬんですね。そしたらね、みんな手紙が来てから死んでるって言うんですね」饂鱈さんはそう粘り気のある声でそう言った。「僕のところにも来た。見せようか」そう言うと饂鱈さんは顔を真っ青にして「怖いからね、僕は止すよ」と言って、黙ってしまった。次の日、饂鱈さんは鹿児島行きの急行列車に轢かれて死んだと遺族から連絡が来た。饂鱈さんからも手紙が来た。「君、夏は暑いだろう。冥土は涼しい。酒は無いが何でも食べ放題だし飲み放題だ。是非来ると良い。」そう言った感じだった。翌日駅に行ってみたら色んな知り合いが居て、勿論その中には死んだ人も居た。「居る分には仕方がないから」と思って電車を待っていた。先行している長崎行きの急行列車が、汽笛を鳴らして駅に近づいて来る。不意に後ろから押されたような感じがした。無論私は死んだ。六文銭から少々値上げした、魚雷艇のような船で三途の川を渡り、冥土に着いた。馬鹿に涼しくて、桜が咲いている。奥で饂鱈さんがりんごジュースを啜って、此方に手を振っているのが見えた。
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