列車隧道

田平 百石

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大村の隧道

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大村線に乗った。長崎に行く為である。今回は天草君も同行されている。しばらく待っていると、新型のYC1というのが来た。我々はボックス席に腰掛けた。発車のベルが鳴って、重々しい音と共に佐世保駅を立った。高架を駆け降りて、右に左にカーブするとすぐに隧道に突入した。佐世保隧道と言うらしい。隧道を突破して、左にカーブすると、すぐに日宇の駅に着いた。日宇の駅で特別急行「みどり」と行き違いをする。みどりが来て、我が列車は重々しい音を立てて出発した。右にぐぐっとカーブして、加速してきたところで大塔の駅についた。大塔、早岐と来て漸く大村線に入る。右に日本一狭い海峡、早岐瀬戸を眺めているとハウステンボスに着く。海峡を挟んだ反対側には絢爛豪華なホテルニューオータニがあって、正に欧羅巴といった感じである。
「南の風をハエと読む」南風崎を出て、小串郷は通過、川棚で列車を降りてタクシーで片島と言う小島に降り立った。「この辺は、やけに臭いですね」と運転手に言うと「リサイクル工場があるんですよ」と答えた。納得していると知らない間に片島に着いていた。片島には魚雷試験場を見に来た。近所の中年の男が出てきて、案内をしてくれた。1時間ほど回って、小串郷駅近くの特攻殉国の婢を見て、長崎行きの普通で長崎まで言った。大村湾の向こう側に西海の土地が見える。彼杵を出発して海に沿って走り出すと千綿に停車、昔の隧道を幾つか過ぎて大村の駅に着いた。ウトウトしているともう長与を過ぎて西浦上に到着する手前だった。天草君と話していると長崎の知り合いである後藤君が居たので、長崎で晩餐にしてから最終の「かもめ」で博多に帰った。帰りの列車からは、金色に輝く有明海で、ムツゴロウが飛び跳ねているのが見えた。
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